JW301 祈願して創建
【丹波平定編】エピソード8 祈願して創建
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)(以下、ミッチー)は、丹波(たにわ)の平安のため、神社を建てることになった。
妻となった、河上摩須郎女(かわかみのます・のいらつめ)(以下、マス子)と共に、解説がおこなわれる。
マス子「せやけど、旦那様。どうして、丹波の久美浜(くみはま)にも社(やしろ)を建てはったんです?」
ミッチー「つつがなく、丹波平定が成るようにと、祈願して、社を建てたのじゃ。」
マス子「なるほど・・・。」
するとそこに「マス子」の父、尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)がやって来た。
ケモロー「我(われ)も解説に加わるがや。」
ミッチー「かたじけのうござりまする。」
ケモロー「で? 初めに紹介するのは、どの神社だ?」
マス子「まず初めに紹介するのは、矢田八幡神社(やた・はちまんじんじゃ)にございますよ。」
ミッチー「無事に丹波平定が成るよう祈願し、建てた神社にござる。」
ケモロー「ほんで、祭神は?」
ミッチー「祖神(そしん)を祀(まつ)りもうした。」
マス子「八代目こと孝元天皇(こうげんてんのう)と、その大后(おおきさき)である、鬱色謎命(うつしこめ・のみこと)にございますよ。」
ケモロー「ん? なんで、御初代様でもなく、直近の九代目でもなく、八代目なんだ?」
ミッチー「さればでござる。これこそ、ロマンなりっ!」
ケモロー「聞いた、我(われ)が悪かったがや・・・。」
マス子「お父様・・・。それだけやないんですよ。尾張氏(おわり・し)の御先祖様である、饒速日命(にぎはやひ・のみこと)も祀られたんですよ。」
ケモロー「でもよぉ。なんで、八幡神社なんだ? 八幡神といえば、まだ産まれてもいない、十五代目のことでないきゃ?」
ミッチー「さすがは、父上殿。実は、このあと、いろいろ有りまして・・・。」
ケモロー「いろいろ?」
ミッチー「こちらの神社にござりまするが、矢田部(やたべ)の一族に、神々を祀らせていたのでござりまするが・・・。」
ケモロー「矢田部と言うたら、物部氏(もののべ・し)の分家(ぶんけ)でないきゃ?」
マス子「その通りですぅ。せやけど、数百年後の争いで、饒速日命を祀ることが、難しくなったんですよ。お父様。何の争いか、分かります?」
ケモロー「分かるわけないがや! はよ教えてちょうだゃぁ(早く教えてくれ)!」
マス子「物部氏と蘇我氏(そが・し)の争いですよ。この争いに、物部氏が負けてしまいましたんで、堂々と祀るのを憚(はばか)って、八幡神を祀ることにしたそうなんですぅ。」
ケモロー「そんなことが・・・(;゚Д゚)。」
ミッチー「そういうわけで、二千年後は、十五代目の応神天皇(おうじんてんのう)と、その母親である、神功皇后(じんぐうこうごう)が祀られておりまする。」
マス子「そして、もう一柱(ひとはしら)・・・。」
ミッチー「父上殿にござる!」
ケモロー「ええぇぇ!! 我(われ)が祀られとるんきゃ?!」
ミッチー「尾張氏の先祖であれば、問題ないと判断したのでしょうな。」
ケモロー「饒速日命に代わって、我(われ)が・・・(;゚Д゚)。」
マス子「ちなみに、鎮座地(ちんざち)は、京都府京丹後市(きょうたんごし)の久美浜町佐野(くみはまちょう・さの)にございます。」
ケモロー「なるほど・・・。『ミッチー』様の館(やかた)がある、比治(ひじ)の真名井(まない)から、北に下山した辺りに有るのか・・・。やっぱり、比治の館は不便でないきゃ?」
ミッチー「ま・・・まあ、山の中ですからなぁ。」
ケモロー「利便性を求めるんなら、我(われ)の館に住めば、ええんでないきゃ?」
ミッチー「ええっと・・・。つ・・次の神社を紹介致しましょうぞ。」
ケモロー「また、逃げるんきゃ?」
ミッチー「紙面を割(さ)くわけには、参りませぬゆえ・・・。し・・・して、次に紹介するのは、神谷神社(かみたにのじんじゃ)にござる。」
ケモロー「仕方ないのう・・・。ほんで、祭神は?」
ミッチー「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)にござる。久美浜を巡察した折、平定が前途洋洋であることを祈願し、祀ったことが起源とされておりまする。」
ケモロー「ほんで、鎮座地は、どこだ?」
マス子「京都府京丹後市(きょうたんごし)の久美浜町(くみはまちょう)にございますよ。」
ケモロー「でもよぉ。二千年後の地図には、神谷太刀宮神社(かみたにたちのみやじんじゃ)と書かれとるで。これは、どういうことだ?」
ミッチー「垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世に、太刀宮神社(たちのみやじんじゃ)が合祀(ごうし)されるのでござる。それまでは、神谷神社だけが鎮座しているのでござる。」
マス子「ちなみに、鎮座した地は、山林の中の開けた平坦地だったそうですねぇ?」
ミッチー「その通りじゃ! 『神谷明神谷(かみたに・みょうじんだに)』と呼ばれていたのじゃ。」
ケモロー「ほんで・・・。これで全部か?」
ミッチー「あとは、それがしが、合祀(ごうし)したという社がござりまする。」
マス子「エピソード267で紹介した、大宮売神社(おおみやのめじんじゃ)に、若宮売神(わかみやのめのかみ)を合祀しました。ちなみに、若宮売神ですが、神社側は、豊受大神(とようけのおおかみ)と同一視してるみたいですねぇ。伊勢神宮(いせじんぐう)の外宮(げくう)に祀られてる神様のことですぅ。」
ケモロー「マ・・・マス子! 伊勢神宮は、フライングだでっ!」
マス子「あっ!」
ミッチー「き・・・聞かなかったことにしようぞ。」
こうして、いろいろと神社が創建されたのであった。
つづく
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