JW459 引退したあと
【崇神経綸編】エピソード34 引退したあと
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前33年、皇紀628年(崇神天皇65)1月。
ここは、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。
新たな大臣(おおおみ)が就任した。
尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)である。
崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)の面前で「ケモロー」は所信(しょしん)を述べるのであった。
ケモロー「やっとかめだなも(おひさしぶりです)! 大臣になったがや!」
ミマキ「たしか・・・エピソード301以来の登場であったな? よろしく頼むぞ。」
するとそこに、前大臣の物部伊香色雄(もののべ・の・いかがしこお)(以下、ガーシー)がやって来た。
ガーシー「ホンマ、頼むでぇ。わての息子や孫を差し置いて、大臣になったんやから・・・。」
ケモロー「分かっとるがや。しっかり務めを果たすでよ。安心してちょう(安心してください)。」
ミマキ「それより『ガーシー』・・・。なにゆえ、出て参った? 引退したのではなかったのか?」
ガーシー「引退したんですが、実は、わてには、後日談が有るみたいなんですわ。」
ミマキ「後日談? 引退したあとに、なにか、やらかしたと申すか?」
ガーシー「実は、わて・・・二千年後の愛媛県・・・。すなわち、伊予国(いよ・のくに)に行ったかもしれへんのですわ。まあ、伝承では、伊香武雄(いかがたけお)と書かれてるんですけどね。名前が似てるでしょ? もしかしたら、わてのことかもしれへんなぁ・・・と思いまして・・・。」
ケモロー「どういうことだがや? なんで、伊予国に行っとるんだ?」
ガーシー「愛媛県今治市(いまばりし)の古谷(こや)に、多伎神社(たきじんじゃ)が鎮座(ちんざ)してるんですけどね。そこの初代の斎宮(さいぐう)になったみたいなんですわ。」
ミマキー「斎宮とは、神に奉仕(ほうし)する者のことじゃな?」
ガーシー「そうですぅ。わてこと、伊香武雄は、斎宮となって、「瀧の宮(たきのみや)」の社号を奉(たてまつ)ったと書かれてるんですわ。ちなみに、祭神は、多伎都比売(たきつひめ)、多伎津比古(たきつひこ)、素戔嗚命(すさのお・のみこと)の三本です!」
ケモロー「多伎都比売は、天照大神(あまてらすおおみかみ)と素戔嗚命の誓約(うけい)で生まれた女神のことだがや。多伎津比古は、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の孫だがや。」
こうして「ガーシー」は、しゃべるだけしゃべって帰っていった。
ケモロー「さて、大王(おおきみ)・・・。今年、熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)が創建されとるんで、ついでに紹介するがや。エピソード36でも、少しだけ紹介されとるがや。」
ミマキ「たしか、祭神は、家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)という神であったな?」
ケモロー「その通りだがや。素戔嗚命とも、その息子の五十猛神(いたけるのかみ)とも、北陸地方の白山(はくさん)に祀られている、菊理媛神(くくりひめのかみ)とも言われとるんだで。」
ミマキ「さ・・・左様か・・・。」
さて、大王と大臣が、熊野の神について語り合っていた頃、遠い海の向こうでは、蘇那曷叱知(そなかしち)(以下、ソナカ)という男が、黄牛(あめうし)を引いて歩いていた。
次回、ついに、あの半島が動く。
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