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JW193 笹巻き団子大作戦

【孝霊天皇編】エピソード48 笹巻き団子大作戦


第七代天皇、孝霊天皇(こうれいてんのう)の御世。

吉備(きび)の石蟹魁師荒仁(いわかにたける・こうじん)を平定した一行。

笹福一行

その直後か、数日後か、数か月後か、妻木(むき)から、ヘンリーと朝妻姫(あさづまひめ)がやって来たのであった。

地図(妻木から)

ヘンリー「大王(おおきみ)! 久しぶりだがん!」

朝妻「大王・・・。大后(おおきさき)のことは、聞き及びました。お悔み申し上げまする。」

唐突な来訪に驚きつつも、孝霊天皇こと、大日本根子彦太瓊尊(おおやまとねこひこふとに・のみこと)(以下、笹福(ささふく))が返す。

笹福「二人とも、大后の陵(みささぎ)に参るために、こちらへ?」

朝妻「それもありますが・・・。」

ヘンリー「実は・・・鬼が現れたんだがね。鬼住山(きずみやま)に、鬼が現れたんだわ。」

ここで、彦狭島(ひこさしま)(以下、歯黒)と磯城大目(しき・の・おおめ)が反応した。

歯黒「鬼が現れたじゃと!?」

大目「そ・・・それで、鬼住山とは、二千年後のどこなんじゃほい?」

朝妻「鳥取県伯耆町溝口(ほうきちょう・みぞぐち)だがん。」

地図(鬼住山)

そのとき、笹福と朝妻の息子、鶯王(うぐいすおう)が尋ねた。

鶯王「母上。この伝承では、ヘンリーは、もとより、母上も登場せぬはずですが?」

朝妻「そうなのですが、作者が、新しい人物を出すのに疲れたみたいなんだわ。」

鶯王「つ・・・疲れた?」

ヘンリー「そういうことで、わ(私)たちが、こちらまで報せに行くことになったんだが。」

笹福「とにもかくにも、その鬼を退治(たいじ)せねばならぬのじゃな?」

ヘンリー「そういうことだがん!」

朝妻「ちなみに、鬼の大将ですが、大牛蟹(おおうしがに)という鬼だがん。弟の乙牛蟹(おとうしがに)と共に、手下を連れて暴れちょるんだがね。」

笹福「大牛蟹と乙牛蟹か・・・。よし! では、直ちに出立致すっ!」

こうして、笹福一行は、鬼住山へと向かった。

その道すがら、鶯王が、ある山を見つけたことにしたい。

鶯王「大王! 鬼住山の南に、良き山が有りまするぞ!」

笹福「ほう・・・。あれは、何と言う山じゃ?」

朝妻「あれは、笹苞山(さすとやま)だがん。ですが・・・あの山が、どげしたんですか?」

地図(笹苞山)

鶯王「見晴らしの良い山じゃと思いまして・・・。あそこからなら、鬼住山を見下ろすことが出来ましょう。」

鬼住山と笹苞山

笹福「うむ。そういうことじゃ。では、あの山に陣を敷く! 皆の衆! 急いで陣を築けっ!」

一同「御意!」×多数

こうして、笹福たちは笹苞山に陣を構築したのであった。

笹福「ここからなら、大牛蟹たちの屋敷が、手に取るように見えるぞ。」

みなお「せやけど、立派な御屋敷やなぁ。」

タケ「守りも固いようですぞ。あれでは、攻めにくうござりまするな?」

笹福「うむ。如何(いか)にすれば良いか・・・。」

朝妻「あのう・・・。お話のところ、申し訳ないんだけんど・・・。」

笹福「何じゃ? 朝妻?」

朝妻「笹巻き団子が出来ましたけん(から)、みなさんで食べてごしない(ください)。」

笹巻き団子

鶯王「おお! 母上の笹巻き団子!」

芹彦「朝妻殿の笹巻き団子かぁ。懐かしいのう。」

歯黒「方言教室のあとで、よく馳走(ちそう)になっておったのう。」

朝妻「さあさあ、食べてごせ(ください)。」

みなお「おおきに!」

ユミ「うわぁぁぁあ! おいしぃぃぃ!」

ぐっさん「やっぱり美味いですなぁ・・・。せやけど、伝承に、こんな描写は無いんやけどなぁ。」

牛鬼「そげだがん(その通りです)! 伝承では、村人が献上したことになっちょるのに・・・。」

ユミ「それをあえて、朝妻様の笹巻き団子にしたってことは・・・。」

笹福「なるほど・・・。作者の意図が読めたぞ!」

芹彦「んふぉほわ?」

タケ「芹彦! 食べ終わってから話せ!」

笹福「この団子を用いて、敵をおびき出すということじゃ。」

タケ「通じておる(;゚Д゚)!」

こうして、笹福一行は、笹巻き団子で鬼をおびき出す作戦を遂行した。

まず、山麓の赤坂(あかさか)という地に、団子を三つ並べた。

すると、どうであろう。

団子の香りに誘われて、鬼たちが出て来たではないか。

その中には、弟の乙牛蟹(おとうしがに)(以下、オットー)の姿もあった。

オットー「美味しそうな匂いがしちょるのう。こ・・・これは、笹巻き団子! こげなところに、なんで団子が・・・。まさか、神様のご褒美? では、いただきまぁぁす!」

前方の茂みでは、笹福一行が、団子にかぶりつくのを眺めていた。

笹福「美味しそうに食べておるのう。」

歯黒「大王! ここは、矢で仕留めましょうぞ!」

笹福「うむ。では『ぐっさん』! 射かけよ。」

ぐっさん「わ・・・わて、ですか?」

笹福「伝承では、そうなっておるのじゃ。」

ぐっさん「ほ・・・ほな、やりますでっ! ぜ・・・全集中や! はっ!!」

矢が勢いよく飛んでいく。

鏃(やじり)は鋭く、風を切る。

そして、オットーが吼える。

オットー「こげなっ! こげなこと、聞いちょらんぞ! グフッ。」

一同「命中!!」×多数

そしてオットーは死んだ。

慌てふためく鬼たち。

頃合いを見て、笹福が叫ぶ。

笹福「皆の衆! 攻めかかれぇぇ!!」

混乱した鬼たちに向かい、笹福一行は突っ込んでいったのであった。 

つづく

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