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JW315 出雲弱体化の理由

【丹波平定編】エピソード22 出雲弱体化の理由


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

出雲(いずも)に来訪していた、彦坐王(ひこいます・のきみ)の一行は、無事、帰路に就いた。

一方、出雲君(いずものきみ)の世毛呂須(よけろす)(以下、ケロロ)は、息子の振根(ふるね)と激論を交わすのであった。

振根「わしが狩りに行っとる間、夜麻登(やまと)の奴原(やつばら)が来訪しとったとか?!」

ケロロ「うむ。そげだ・・・。」

振根「そ・・・それも、出雲大社(いづもおおやしろ)と美保神社(みほじんじゃ)の参拝を許したと聞きましたが、まことですか?」

ケロロ「まことだに。」

振根「父上ぇぇ! それが、何を意味するか、分かっとるんですか?!」

ケロロ「振根よ・・・。汝(なれ)が言いたいことは、よう分かっとる。」

振根「何も分かっとらんっ。父上は、出雲君に相応(ふさわ)しからずっ。」

ここで「ケロロ」の息子にして、振根の弟、飯入根(いいいりね)が吼えた。

系図(出雲氏)

飯入根「兄上! 出雲君に対し、無礼にござりまするぞっ!」

振根「無礼を承知で言うとるんだに。父上は、とんだ呆(ほう)け者だっちゃ!」

ケロロ「そげだな・・・。わしは呆け者だに。夜麻登を抑(おさ)えることも出来ん・・・。」

飯入根「わ・・・我が君・・・。」

ケロロ「夜麻登人(やまとびと)が、大社(おおやしろ)を拝(はい)し、戦勝を寿(ことほ)いだとなれば、夜麻登が、出雲の神々を祀(まつ)ることを・・・認めたも同じだに・・・。」

振根「父上は・・・それを承知で? わしに狩りへ行けと申されたのも、それがためにござるか?」

ケロロ「そげだ。汝(なれ)がおったら、夜麻登人(やまとびと)を斬りかねんからなぁ。」

振根「た・・・たしかに、斬っとりましたな・・・。」

ケロロ「だがな・・・時の流れには逆らえんのだっ。汝(なれ)も承知の通り、出雲の国力は弱まっとる。夜麻登と戦(いくさ)をする力も無い・・・。港も小さくなっておる。」

飯入根「砂が堆積(たいせき)し、神西湖(じんざいこ)の港も小さくなっておりまするからな・・・。」

栄えた頃の出雲
弥生時代の神西湖
港として利用された神西湖
現在の神西湖

振根「そげなことは、わしも分かっとる! 島根半島(しまねはんとう)が離岸堤(りがんてい)の役目を果たし、大きな『トンボロ』を作っていることくらい・・・。」

ケロロ「そげだ。NHKの『ブラタモリ』で、素晴らしい解説がおこなわれておったに。」

離岸堤
離岸堤で、砂が堆積
トンボロとは
トンボロの形成
巨大なトンボロ
比較図

飯入根「陸(おか)と島をつなぐ『トンボロ』によって港が失われ、それと同時に、交易の規模も小さくなっているのですな?」

ケロロ「そげだ・・・。それと・・・汝(なれ)たちも、荒神谷遺跡(こうじんだにいせき)は知っておろう?」

振根「島根県出雲市(いずもし)の斐川町神庭(ひかわちょう・かんば)に有る遺跡ですな?」

地図(荒神谷遺跡)

ケロロ「そげだ・・・。そこから、358本の銅剣(どうけん)が見つかっとる。丘(おか)の斜面から出土したんだに。」

飯入根「西暦1984年(昭和59)のことですな?」

ケロロ「それだけではないぞ。その翌年には、銅鐸(どうたく)が6個、見つかっとる。」

振根「父上! 何が言いたいんだに!」

ケロロ「そのときの出土状況は知っておるか?」

振根「状況? そげなこと言われても・・・。」

ケロロ「銅剣は、奇麗に並べられ、銅鐸は、鈕(ちゅう)と呼ばれる『つまみ』を向かい合わせる形で並べられとったんだに。」

荒神谷遺跡
銅剣と銅鐸の出土状況

飯入根「それが、どう繋(つな)がってくるのですか?」

ケロロ「これを見て、作者は思った。これは、不良在庫の山ではないかと・・・。」

振根「不良在庫?」

ケロロ「そげだ・・・。かつて、大八洲(おおやしま)では、鉄器(てっき)を作ることが出来ず、輸入に頼っておった。されど、青銅器(せいどうき)は、すぐに作れたんだに。」

飯入根「青銅器を作り、各地に売っていたと?」

ケロロ「まだまだ、鉄器は貴重でな・・・。3世紀までに、鉄器が普及しちょったのは、北九州に限られとったんだに。」

振根「それ以外の地に、売りさばいとったわけか・・・。」

ケロロ「そうではないかと思うとる。だが、鉄器の作り方が伝来し、青銅器に取って代わったため、大量の不良在庫が生まれたのではないかと、作者は考えとるんだに。」

飯入根「なるほど・・・。港を失い、交易が小規模となっただけでなく、売り物の青銅器まで、ダメになったと?」

ケロロ「そげだ。そして、製鉄の技(わざ)を、いち早く手に入れたのが夜麻登だったのではないかと・・・。」

振根「そ・・・そげなこと・・・。わしら出雲も、鉄を作れば良いことだに。」

ケロロ「砂鉄(さてつ)が見つからんかったのかもしれん。鉱山を見つける技も、要(い)り様(よう)となるからな・・・。」

飯入根「夜麻登は、鉱山を見つける技も持っておったと?」

ケロロ「大陸や半島の者らを受け入れたからであろう。」

振根「そ・・・そげな・・・。父上は、それでよろしいのか!?」

ケロロ「悔しいが認めねばならん。時の流れには、逆らえぬ・・・。」

飯入根「御心中・・・お察し申し上げまする・・・(´;ω;`)。」

ケロロ「だがな・・・。わしらには、誇りよりも守らねばならぬモノが有る。」

振根「誇りよりも、大事なモノが有ると申されまするか?」

ケロロ「出雲の神々だっちゃ。出雲の神々を守り抜かねばならん。それがためには、戦などで、出雲を灰にすることは出来ないんだに。」

飯入根「わ・・・我が君・・・。」

ケロロ「若かりし頃、夜麻登君(やまとのきみ)の笹福(ささふく:七代目、孝霊天皇)を見た。敵(かな)わぬと思うた。それを認めるまで、かなりの時を要(よう)してしまったに。」

振根「ち・・・父上・・・(´;ω;`)ウッ…。」

ケロロ「振根よ。汝(いまし)に出雲君を譲ろう。兄弟、相和(あいわ)して、国を・・・神々を守ってゆけ。これにて、わしは、クランクアップとするっ。」

長きに渡り君臨した出雲君が、この日、引退したのであった。 

つづく

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