JW484 永住を求めて
【垂仁天皇編】エピソード13 永住を求めて
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前27年、皇紀634年(垂仁天皇3)3月。
新羅(しらぎ)の王子、天日槍(あめのひぼこ)(以下、ヒボコ)が来日。
針間国(はりま・のくに)の宍粟邑(しさわ・のむら)に滞在することとなった。
これを聞き、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)は、使者を派遣する。
その使者とは、三輪大友主(みわ・の・おおともぬし)(以下、オート)と、大倭市磯長尾市(やまと・の・いちしのながおち)(以下、イッチー)である。
若日子建吉備津日子(わかひこたけ・きびつひこ)(以下、タケ)も加わる中、「ヒボコ」は、八つの宝について語り始めるのであった。
ヒボコ「ウリ(私)は、大王(おおきみ)に八つの『玉津宝(たまつたから)』を献上するハセヨ。そして、ヤマトで暮らすハセヨ。」
タケ「八つの宝とは、以下の宝を指すぞ。」
別伝による天日槍の宝
①葉細(はほそ)の珠(たま)
②足高(あしたか)の珠
③鵜鹿鹿(うかか)の赤石の珠
④出石(いずし)の刀子(かたな)
⑤出石の槍(ほこ)
⑥日鏡(ひのかがみ)
⑦熊の神籬(ひもろき)
⑧胆狭浅(いささ)の大刀(たち)
こうして「ヒボコ」は、八つの宝を携(たずさ)え、纏向珠城宮(まきむくのたまき・のみや)にて「イク」に謁見(えっけん)したのであった。
ヒボコ「お初にお目にかかるニダ。ウリが『ヒボコ』ハセヨ。」
イク「初めまして・・・。ところで、聞くところによると、ヤマトで暮らしたいそうだね。」
ヒボコ「本当は、妻を追いかけて来たハセヨ。でも、それは『古事記(こじき)』の話で『日本書紀(にほんしょき)』では、永住する気満々で、やって来ているニダ。・・・というわけで、この八つの『玉津宝(たまつたから)』を受け取って欲しいニダ。」
イク「それは出来ないよ。なぜなら、本文では、七つの宝になっているからだよ。」
ヒボコ「えっ? 七つ? ど・・・どういうことニカ?」
イク「以下が、七つの宝だよ。」
本文による天日槍の宝
①羽太(はふと)の玉(たま)
②足高の玉
③鵜鹿鹿の赤石の玉
④出石の小刀
⑤出石の桙(ほこ)
⑥日鏡
⑦熊の神籬
イク「胆狭浅の大刀が抜(ぬ)けてるんだよね。それに、他の宝も微妙に表記が違うみたいだね。」
ヒボコ「そ・・・そんな・・・。では、永住は認められないニカ?」
イク「そんなことはないよ。宝は、受け取らないけど、永住は認めるよ。兵庫県宍粟市(しそうし)周辺と言われる、宍粟邑に住んでもいいよ。それから、淡道国(あわじ・のくに:現在の淡路島)の出浅邑(いでさ・のむら)にも住んでいいよ。」
ヒボコ「出浅邑? それは、一体、どこですか?」
イク「兵庫県洲本市(すもとし)の由良町由良(ゆらちょう・ゆら)に、生石公園(おいし・こうえん)が有るんだけど、その辺だと言われているね。どちらかを選ぶってわけじゃなくて、汝(なれ)の気の向くまま、どちらにも住んでいいんだよ。」
ヒボコ「大変、ありがたいことですが、願わくば、ウリ(私)が、自ら諸国を巡り歩き、ウリの心に適(かな)った地で暮らしたいと思っているニダ。よろしいでしょうか?」
イク「なるほど・・・。『ヒボコ』の言う通りだ。それが一番いいね。決まったら、教えてね。」
ヒボコ「かしこまったニダ。早速、出発するハセヨ!」
許しを受け「ヒボコ」は定住先を求める旅に出た。
まず、菟道河(うじがわ)を北上し・・・。
ヒボコ「そして淡海国(おうみ・のくに)に入ったハセヨ。二千年後の滋賀県ニダ。ということで、記念に、鏡を山に埋(う)めるニダ。これが、鏡山(かがみやま)と伝わっているハセヨ。」
そのとき「ヒボコ」の従者たちが、いきなり登場した。
一体何事であろうか?
次回につづく
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