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JW230 祖神に奉仕せよ

【開化天皇編】エピソード15 祖神に奉仕せよ


第九代天皇、開化天皇(かいかてんのう)の御世。

開化天皇こと、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)の元に、子供たち(四兄弟)と旅の仲間が報告に来ている。

四兄弟とは、下記の通り。

長男、彦湯産隅(ひこゆむすみ)(以下、ムッシュ)。

次男、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)。

三男、彦坐王(ひこいます・のきみ)(以下、イマス)。

四男、建豊波豆羅和気王(たけとよはづらわけ・のきみ)(以下、ヅラ)。

そして、旅の仲間とは、四兄弟の従兄弟、武渟川別(たけぬなかわわけ)(以下、カーケ)。

それから、四兄弟の大伯父、稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)である。

皇室系図(旅の仲間)

一行は、旅の報せを奏上(そうじょう)するため、参内(さんだい)しているのであった。


ミマキ「あ・・・兄上? 奏上とは、如何(いか)なる意にござりまするか?」

ムッシュ「奏上とは、大王(おおきみ)に報告するという意味だ。」

イマス「ミ・・・ミマキ兄上? 奏上の意を御存知なかったのですか?」

ヅラ「そうとしか思えないずら!」

ミマキ「ち・・・違う! 断じて違うぞ!」

カーケ「その焦(あせ)り方・・・図星としか思えないんだぜ!」

タケ「皆! 私語は慎めっ!」

ムッシュ・ミマキ・イマス・ヅラ・カーケ「ぎょ・・・御意!」×5

ピッピ「う・・・うむ。して、なにゆえ、伯母上がおられるのじゃ?」

一同が並ぶ、その隣に、なぜか、四兄弟の大伯母にあたる、倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)(以下、モモ)がいるのであった。

皇室系図(モモ)

モモ「仕方ないでしょ! 旅の途中で、この子たちと、ばったり会っちゃったんだから!」

ミマキ「と・・・ところで、大伯母上は、久方ぶりの登場ではありませぬか?」

モモ「そうなのよ! エピソード166以来よ! 分かる!? かなり出て無かったのよ!」

タケ「仕方がないではないか・・・。ずっと讃岐(さぬき:今の香川県)におったのじゃ。」

モモ「それが、そうでもない設定になってるのよ!」

タケ「どういうことじゃ?」

モモ「まあ、なんて言うの・・・二千年後でいう、キャリアウーマンってヤツ?」

ムッシュ・ミマキ・イマス・ヅラ・カーケ「キャラウーマ?」×5

モモ「讃岐支社と、ヤマト本社を行ったり来たりの出張生活ってヤツね。今回、この子たちと遭遇したのも、出張途中の出来事ってこと! まあ、いわゆる? 私が、本邦初のキャリアウーマンってわけよ!」

地図(讃岐とヤマト)

ピッピ「キャラーマはともかく、子供たちと共に参内せずとも良いではありませぬか・・・。」

モモ「だって、ずっと登場してなかったのよ!? こんな時ぐらいじゃないと、登場できませんからねっ!」

ピッピ「そ・・・そのようなことを申されましても・・・。」

困惑の表情を浮かべ、ピッピが腕組みをしていると、和珥彦国姥津(わに・の・ひこくにははつ)(以下、ニーハン)がやって来た。

皇室系図(ニーハン)

ピッピ「ニーハン・・・如何(いかが)したのじゃ?」

ニーハン「うむ。なにゆえ、拙者(せっしゃ)が参ったか・・・。それには、まず三上山(みかみやま)について語らねばなるまい。」

三上山

ピッピ「三上山?」

ニーハン「淡海国(おうみ・のくに)の山じゃ。」

ピッピ「淡海とは、二千年後の滋賀県のことじゃな?」

ニーハン「左様。その山は、二千年後でいう、滋賀県野洲市(やすし)の三上(みかみ)にある山じゃ。標高432mじゃぞ。」

ピッピ「それがどうしたというのじゃ?」

ニーハン「エピソード153にて、その山に、天之御影神(あめのみかげのかみ)が降臨なされたのは、覚えておるか?」

イマス「たしか・・・。天之御影神とは、倭鍛部天津真浦(やまとのかぬちべ・の・あまつまら)こと『カヌー』の別名ではありませんでしたか?」

ニーハン「その通りじゃ、イマス! さすがは、我(わ)が甥っ子!」

ミマキ「なっ!? 『カヌー』とは、エピソード77で登場した神ではありませぬか?! たしか、二代目様が兄君の手研耳命(たぎしみみ・のみこと)を討ち取られる件(くだり)で・・・。」

ニーハン「物部(もののべ)の子にしては、なかなかやるのう・・・。その通りじゃ。」

ピッピ「ニーハン・・・。もう良い。それで、御上神社(みかみじんじゃ)が創建されたのであろう? して、それが、どうしたのじゃ?」

地図(御上神社・滋賀県野洲市三上)
御上神社(鳥居)
御上神社(本殿・国宝)

ニーハン「うむ。して、大王の御世に、その神社に奉仕する祝(はふり)が任命されたのじゃ。」

ヅラ「祝(はふり)? どういう意味ずらか?」

ムッシュ「祝(はふり)とは、神々に御仕えする者という意味だ。」

タケ「して、その祝の名は?」

ニーハン「三上祝(みかみ・のはふり)にござる。」

モモ「ちょっと待ちなさいよ! 御上神社は、私の父上、七代目の時に創建された神社よ。なんで、今頃になって、祝(はふり)が任命されてんのよ!?」

ニーハン「そ・・・それは・・・ロマン?」

モモ「父上の口癖で逃げんじゃないわよ! ちゃんと解説しなさいっ! ニーハンッ!」

ニーハン「そ・・・そのようなことを申されましても・・・。」

戸惑(とまど)いながら、ニーハンが脂汗(あぶらあせ)をかいていると、ある人物がやって来た。

ある人物「お初にお目にかかるでやんす。あっしが、此度(こたび)、祝となった、彦伊賀都(ひこいかつ)でやんすよ。『こいかつ』と呼んでおくんなせぇ。」

ピッピ「こ・・・こいかつ? して、なにゆえ、汝(いまし)が祝となったのじゃ?」

こいかつ「なぜかって? あっしが、天之御影神の子孫だからでやんすよ!」

ピッピ「これまで、天之御影神の子孫が見つかっていなかったのか?」

こいかつ「そういうことかもしれませんが、ロマンということでも、いいでやんすよ!」

こうして、なにはともあれ、三上祝が任命されたのであった。 

つづく

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