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JW196 鬼住山鎮撫

【孝霊天皇編】エピソード51 鬼住山鎮撫


第七代天皇、孝霊天皇(こうれいてんのう)の御世。

鬼住山(きずみやま)を拠点とする、大牛蟹(おおうしがに)(以下、シガニー)鎮定は、最終局面を迎えようとしていた。

笹福一行
地図(鬼住山)

笹の葉が、鬼たちにまとわりつき、身動きが取れない状態となる中、孝霊天皇こと、大日本根子彦太瓊尊(おおやまとねこひこふとに・のみこと)(以下、笹福(ささふく))たちは、総攻撃を仕掛けるのであった。

笹福「皆の衆! 攻めかかれぇぇ!」

一同「おお!」×多数

シガニー「ど・・・どげしたら、ええんだ!?」

鬼たち「ちょっと! お頭(かしら)! 火が! 火が!」×多数

シガニー「どげしただ? 火?」

鬼たち「笹の葉が、いきなり燃え上がって・・・熱ちぃぃ!!」×多数

シガニー「も・・・もうダメだがね! 逃げるがっ!」

笹福「逃すな! 追い討ちじゃ!」

一同「御意!」×多数

鬼たち「うぎゃぁ! もう終わりだがん!」×多数

シガニー「こ・・・こうなったら、降参するしかないがね! 降参するがっ! わ(私)たちは、降参するがっ!」

笹福「もう、邑(むら)を襲うようなことはせぬか?」

シガニー「もうやりません! 絶対、しません!」

牛鬼「シガニーの奴・・・蟹(かに)のように這(は)いつくばって降参しちょる。」

シガニー「これからは、大王の家来となって、伯伎(ほうき:現在の鳥取県西部)を守ります!」

地図(伯伎)

ヘンリー「おお! 心強い味方が出来たがね!」

笹福「相分(あいわ)かった。牛鬼(ぎゅうき)よ! シガニーたちに、手ほどきしてやれ!」

牛鬼「だいど(だけど)、わ(私)は、この伝承には、登場しちょらんが。」

笹福「されど、先に降参した、鬼の大先輩ではないか。」

牛鬼「なるほど・・・。兄貴の言うことにも一理有るがね。降参した、わ(私)が生きちょるのは間違いないわけで・・・。流れから考えたら、わ(私)の部下になって、手取り足取り教えてもらうというんは、有り得る話だがん。」

シガニー「そげですね。そげですね。」

朝妻「大王! まことに良いのですか?」

笹福「何じゃ? 朝妻?」

朝妻「シガニーは、この物語のオリジナル設定とはいえ、鶯王の敵(かたき)だがん! わ(私)は許せません!」

笹福「汝(いまし)の申し分にも一理有る。されどな、それを申していたら、我(われ)は、シガニーにとって、弟の敵となるのじゃぞ? 朝妻・・・。安寧(あんねい)とは、怨恨(えんこん)を越えた先に、もたらされるモノではないか?」

朝妻「お・・・大王・・・。」

笹福「鶯王も、敵を討ってくれなどと思うてはおらぬ。妹たちと仲睦まじくしておった。」

朝妻「えっ?」

笹福「夢で会(お)うたのじゃ。夢で・・・。」

こうして、鬼住山の大牛蟹こと「シガニー」は降参し、伯伎に本当の平和が訪れたのであった。

そして、村人たちは、笹福に感謝し、笹で覆(おお)った社(やしろ)を建てた。

大目「これが、伯耆町(ほうきちょう)の宮原(みやばら)に鎮座する、樂樂福神社(ささふくじんじゃ)なんじゃほい。」

地図(樂樂福神社・宮原)
樂樂福神社・宮原(鳥居)
樂樂福神社・宮原(拝殿)

朝妻「鶯王を祀(まつ)った神社とも言われておりますね。」

笹福「その通りじゃ。我(われ)と鶯王が祀られておるというわけじゃ。」

歯黒「更に、この宮原の樂樂福神社は、行宮(あんぐう:仮の御所)であったという説も有るようですな?」

タケ「なるほど。ここを拠点にして、シガニーたちに稲作を教えておったというわけか・・・。」

牛鬼「わ(私)の手ほどきを受けてな!」

シガニー「兄貴ぃぃ! 付いて行きます!」

牛鬼「あ・・・兄貴?」

笹福「ハハハ((´∀`)) ついに牛鬼が、兄貴になってしもうたのう。」

芹彦「父上! 樂樂福神社は、他にも有りまするぞ。鳥取県南部町(なんぶちょう)にも鎮座しておりまする。」

ユミ「その通り! 南部町の中(なか)に鎮座してるのよね。」

地図(樂樂福神社・中)
樂樂福神社・中(鳥居)
樂樂福神社・中(拝殿)

ぐっさん「それだけやないで! 鳥取県米子市(よなごし)にも、樂樂福神社が有るんやで。」

ユミ「その通り! 米子市の上安曇(かみあずま)にも鎮座してるのよね。」

地図(樂樂福神社・上安曇)
樂樂福神社・上安曇(鳥居と拝殿)

みなお「詳しい伝承は残ってないけど、大王が、稲作教室で廻ったんかもしれまへんなぁ。」

笹福「うむ。これぞロマンじゃな・・・。」

地図(三つの樂樂福神社)

朝妻「では、牛鬼殿、シガニー殿。伯伎の守り・・・お願い致します。」

シガニー「朝妻様。必ず、守り切ってみせます。それが、わ(私)の罪滅ぼしですけん(から)。」

朝妻「よろしく頼みます。」

牛鬼「朝妻様。心配せんでも、ええが。わ(私)が、手取り足取り、国を守ることの何たるかを叩きこむつもりだけん(だから)。」

笹福「頼もしいのう。」

歯黒「では、大王。我(われ)らは、稲作が広まったのを見届けて、ヤマトに帰るのですな?」

笹福「そうなるのう。あと何年かかるか・・・。」

タケ「出雲君(いずものきみ)がお許しになるでしょうか?」

笹福「出雲君?」

タケ「たしか・・・エピソード188で、印賀(いんが)の鬼を退治すると申して・・・。」

笹福「あれから、十年以上経つのじゃな・・・。まあ、もうしばらくは、許してくれるであろう。」

この物語では、笹福は気付いていない。

既に、稲葉(いなば:現在の鳥取県東部)、隠伎(おき:現在の隠岐の島)、そして伯伎が、ヤマトの版図に組み込まれているということを・・・。

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