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わたしの好きな本:軍艦島・端島の記録編


久しぶりの、わたしの好きな本まとめは第11弾です!今回はわたしの本棚から、軍艦島・端島に関する記録の本をまとめてみました。
幼い頃から、何故だか無性に廃墟に惹かれます。路地裏や、朽ち果てそうな古い家やビル、車両基地や工場などは住みたい程に大好きです。
無機質なもの、屍や白骨の様に朽ちた様子に魅了されているのかと錯覚していましたが、一見打ち捨てられた世界に残る、かつてその場所を愛した人の気配が感じられることに魅力があるのだと、最近気づいたのです。

☺︎目次のタイトルは本の題名です。カテゴリーを【】の中に入れてみました。

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【廃墟】 軍艦島 眠りの中の覚醒


廃墟の中の生活の記憶を写し取った写真集。

写真家の雜賀さんは、軍艦島が端島だった頃、閉山すると知った直後の1974年1月10日から(1月15日に閉山)、完全に無人島になってしまう1974年4月20日まで、端島を訪れて島民と一緒に過ごしました。
島民の様子、こどもたちとの交流や閉山から無人島になるまでの出来事を後記に日記として載せています。閉山までの様子は胸が熱くなり、さらにぎゅうっと締め付けられ切なくなります。
写真集はその10年後、廃墟と化した端島の様子が写されています。雜賀さんの目には、そこはただの廃墟ではなく、出会った人々の記憶が生きているのです。

廃墟としての美しさも堪能でき、生々しく残る生活の断片を収めた写真も多く、懐かしさと寂しさを感じる美しい写真集です。

人々が生活し息づいていた、軍艦島になる前の“端島”の事を知りたい、と思ったきっかけの本です。

写真・文=雜賀雄二


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【建築】 軍艦島の生活

端島の集合住宅の詳細がわかる、素晴らしい建築的資料。

住宅学者の西山夘三さんが、端島が現役で賑やかだった頃の住宅をリポートした貴重な本です。
様々な角度から捉えた居住区の様子や、住居内の写真や多数の図面、建築や構造の分析や当時の端島の様子など詳細に語られていてとても面白いです。
団地好きにはたまらないですし、部屋の詳細が見れるのはわくわくします。“渡辺篤史の建もの探訪”好きにはたまらないです。
端島の生い立ちや生活環境にも言及していて、当時の高層住宅の衛生環境や、自然災害を経ての建築様式の移り変わりなども興味深いです。

当時の住居の様子を、詳しく垣間見る事が出来る素晴らしい一冊です。

住宅学者西山夘三の端島住宅調査リポート


▪️書籍や西山さんの詳しい事はこちらへ


【日常】 あの頃の軍艦島

少年の目に映る端島。

物心着いた時に親戚と端島に移住した少年がカメラと出会い。端島の生き生きした生活を写真に残していました。写真の枚数自体は多いとは言えないのですが、普段の生活、飾らない端島の日常を感じる事ができる素敵な写真集です。
少年が撮っているからか、被写体の無防備な表情を見る事ができ、その場に一緒にいるかのような臨場感を味わう事が出来るのが嬉しいです。

息づく端島を感じる事ができる、貴重な写真集です。

撮影=皆川隆


▪️書籍の詳しいことはこちら



【生活】 私の軍艦島記

端島に生まれて端島を生きた人の、生活の記憶と記録。

端島に生まれて、閉山するまで炭鉱で働いた生粋の端島っ子、加地英夫さんの思い出と記録。
端島の日常や彼の生きてきた端島の歴史を詳しく知る事が出来る貴重な資料です。端島の学校での出来事や日常、戦時中に被爆されたつらい経験や、炭鉱の仕事、組合のことが語られています。

そこを生きた人しか知らない出来事が、彼の言葉を通して映し出されており、全てが貴重で新鮮です。

著=加地英夫

▪️本についてはこちらもどうぞ


あとがき


炭鉱という事業で、高度成長期を支えた企業の社宅件職場という稀有な存在であった端島。
生活は保証されていますが、炭鉱の仕事は常に命の危険と隣り合わせの過酷な重労働でした。
企業の社員である事が前提の、小さな島の独自のコミュニティは、他の島のそれとはかなり異なっていると感じます。
人口も含め全ての密度が高く、衣食住に関する生産力がないため外部に依存していましたが、依存することにより外部との接触が常に保たれ、新しい情報が入ってくるという活気にも繋がっていたのではないかと思います。
そんな中でも、緑地や動植物にあまり触れられない環境の子どもたちを慮って、屋上庭園で植物を栽培するなど、情操教育にも力を注いでいた事が伺えます。

かつてあった生活、なくなってしまった誰かの当たり前、思いを馳せては儚く消えてしまいますが、残された写真や資料によってその一端に触れられる事自体、何だかとても不思議な気持ちです。

知るたびに、誰かの愛しい思い出を、側からまた愛せたら良いなと感じます。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!とっても嬉しいです!


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