トイレのカギのかけ忘れ。
数ヶ月前、札幌市内の
とある居酒屋さんにいった時の話である。
とある知人と2人で、北海道の幸をデフォルトの物として堪能しながら、ビールを飲み、ハイボールを飲み、日本酒を飲み、焼酎を飲み、と、要するにアルコールと水分を摂取しまくった夜があった。
その居酒屋はいわゆる大衆チェーン店ではなく、大将的な人が小気味よく料理を作り、20代前半の男女の店員さんが元気よく飲み物の注文を取りにくるようなお店。
店内には私たち2人のほかにもお客さんがいて、視線を移せばカウンターでサラリーマンが一人でチビチビとお酒を飲んでいる。つまりは赤い提灯がよく似合うお店である。
その食事の途中、
(…うーん)
(お手洗いに行きたいぞ、漏れそうだぁ)
そう思って、お相手にことわってトイレに行った。
そのお店は1階に男性用のトイレ、2階に女性用のトイレがある作りで、私は32歳男性だから、当然1階のトイレを利用しようと思い、トコトコと向かった。
トイレのドアは、横にスライドするタイプのもので、私はそのドアに手をかけ、グッと力を入れてドアを開けた。
ガララッ
が、
中には男の人がいて、
用を足しているではないか!
「うわっ! 用を足してる人がいる!」
と思うが早いか、一瞬だけ開けられたドアは勢いよく
ドゴンっ!
と閉まった。
…
(そんな勢いよく閉めなくてもいいのに…)
と私は思いながら、ドアの前から少し離れたところで待つことにした。トイレの中の男性が出てきたときに「ちっ、こいつか、ドアを開けてきたのは」と思われてもつらい。
そのあたりは、大人の男性としての礼節を、
と思って少し離れることにした。
それにしてもずいぶんと勢いよくドアを閉めてきたなあ。「ドゴンっ」って音が鳴ったよ。でもなぁ、気持ちも分かるかも。逆の立場だった場合、私でも勢いよくドアを閉めると思う。だって、
恥ずかしいもん。
トイレから出てくるおじさんは、どんな人なんだろう…。せめて私の方はニコニコして「す、すんません!えへへ」みたいな感じで会釈をするから、いやな顔でトイレから出てこないでほしい。
そう思ってたら、
トイレのドアがガララッと開いた。
外国人だった。
それも欧米の人ではなく、あそこ。
インドあたりにいそうな。
なんか分かんないけどそれが笑えた。
外国人だったか。
そりゃあ外国の方なら、そういうこともあるよね。日本のトイレはどうですか。いいでしょ。札幌を楽しんでますか。どうですか。
なんて思ってニコニコしていたんだけど、そのインド風な彼も、ニコニコしてて「あ、さっきはすいません」みたいに頭をペコペコしてくれたもんだから「全然気にしてませんよ」と、そっと目くばせ。
ドゴンとドアを閉めた相手が外国人ならば、おおらかな心をもって迎えられるけれど、これが純札幌産のヤンキーだったら、私もムスッとするのかな、と思うとまだまだ修行が足りない。
そんな自分に苦笑いしつつ、
外国人の彼にニコッとした。
【昔の記事】トイレ待ちは笑いの宝庫
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