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考えていることがあるのに、それを誰にも話していないマダム。
今から1年以上前の話を引っ張り出して書く。
68歳の女性マダムと、仕事の打ち合わせをする機会があった。その方は、札幌市内のとある社団法人の理事長で、人前に出て話す仕事をしていた。
私と一緒に「セミナーをやりましょう」という話になり、打ち合わせをしていたわけ。
そのマダムは、綺麗な身なりをしていらっしゃって、話し言葉も丁寧。いわゆる「きちんとした」社会人生活を送ってこられたのであろう。
「それではセミナーの形式は
これでいいかしらね?」
「ええ、そうしましょう」
「日程はいつがいいかしら?」
「そうですねぇ」
打ち合わせ中、私たちは仕事以外の話はせず、
お互いのプライベートや思想について話すこともしなかった。
が、なんだか気になり、打ち合わせ終了後の雑談の最中、私は質問した。
「小室圭さんと眞子様の結婚問題については、
どのようにお考えですか?」
この頃のワイドショーはこのニュースで持ちきりだった。特別な思想を持ち合わせていたわけではないので、私もこのニュースに関しては特に意見はなかったのだが、目の前にいる人生の先輩がどう思っているのかが単純に気になった。
すると、
「いやぁ、眞子様ねぇ、あれはねぇ」
と言ったかと思えば、仕事の打ち合わせの2倍速のスピードで、あの問題について論じ始めたのである。
天皇制について、政治について、皇室の恋愛事情や、自分の頃の皇室のあり方、かと思えば、携帯電話がなかった頃のマダムの恋愛、ソニーのウォークマンが登場した時のこと、自分の子育てがどれだけ大変だったかなど、話題があっちこっちに飛ぶのである。
話として面白かったので、私はマダムにどんどん質問した。そうこうしていると、仕事の打ち合わせ時間よりも長いこと、このマダムの話を聞くことになった。
で、さらに気になったので、質問した。
「ちょっと質問したいのですが、いいですか?」
「あらやだ、お話しし過ぎちゃいましたわ。
質問、よろしいですよ」
「いま、お話しになったことって、どなたかに聞いてもらったことはありますか?」
「?」
「例えば年齢の近い友人とか、逆に私のように歳の離れた人間だとかにそういった考えであるとか、過去の苦労話だとかをお話しになったことは?」
マダムはキョトンとした顔でこう答えた。
「そういえば、ありませんわね」
このエピソードを通して、私が何を言いたいか。
ほとんどの人が、考えていることがあるのに、
それを誰にも話していない。
ほとんどの人が、自分だけの経験があるのに、
それを誰にも伝えていない。
そもそも「誰も自分の考えを持っていない」というような論を展開するのは寂しいので割愛。
現代は「1億総記者時代」である。
誰だって今日から記者になれる。発信者になれる。そこに規模の大小はあるにせよ、自分だけの経験・考えを発信することができるのが現代なのに、ほとんどの人がそれをしていない。
これは、非常にもったいないことではないか?
私はそう思ってしまう人種である。
そのマダムとの会話は、
私が以下のようなことを伝えて終わった。
「世代を問わず、誰でも自分の経験や、
意見を語り合える場が欲しいですよね」
「それは素晴らしいですわ!」
「ある場所にはあるんでしょうけどね」
「そうなのよ、でも自分の場所はないのよね」
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誰だってWEB空間では発信者になれる。
言い換えれば、誰だって自分の場所は作れる。
エッセイ、コラム、誰かの文章を読むということの面白さ、つまりこのnoteの面白さが何かというと、
「自分が普段見ている世界を、
他人のフィルター(視点)で見ることができる」
という点であるように思う。
そこには新たな発見があり、学びがあり、注意喚起があり、そういうことを学んで、私たちは自分の実生活に少しだけ生かすのである。
このエピソードは、私が勝手にやっている「勝手にリレーエッセイ」の着想、いや、正しく言えば、その前段の記事を書くきっかけになったものである。リレーエッセイ自体のアイデアをくれたのは勇敢なヘラジカさんだ。
▶︎勝手にリレーエッセイ?と思ったらコチラ
間も無く、1月から勝手に始める「勝手にリレーエッセイ2023冬」の参加者募集を始めようと思う。このリレーエッセイ企画は、このマダムとのエピソードが出発点になっている。
【告知】勝手にリレーエッセイ2022秋、オフ会公開生放送は2022.12.9(金)21:00から
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/92620902/picture_pc_db9ae2cf4af3981005b9a44d97401575.png?width=1200)
先述のマガジンに格納されている過去の企画の概要などをよくご覧になり「なるほど、そういう趣旨のものね」とご納得の上、どんな状況下にあるどなたでも、気軽にご参加いただければ幸いだ。
要は、みんなでエッセイをリレーしようぜ、
という趣旨である。
明日、募集要項記事を公開しようと思うので、関連記事を今日のあとがきの後にまとめておこう。
それではまた!
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〈あとがき〉
要するに、自分の中だけで溜めないで、どこかに吐き出しましょう、でも1人で吐き出すのは怖いので、誰かと一緒に吐き出しましょう。その意見、経験を元にして、何か新しい概念が生まれたら、誰かの人生や世界を変えないまでも、なんだかいいよね、というのが「勝手にリレーエッセイ」です。今日もありがとうございました。
▶︎勝手にリレーエッセイのはじまり
▶︎これからのコミュニティはどうなるか?
▶︎話し相手がいない現代人について
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