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私たちには、なぜ友だちがいないのか?

私は北海道で保険外交員をやっている。

仕事柄、様々な年代のお客さんとお話しする機会に恵まれる。18歳、20歳、23歳、47歳、55歳、ここ1週間だけでも、これだけのバリエーションに富んだ年齢の人たちとお話をした。北海道は広いので、地域も様々だ。札幌、函館、旭川はもちろん、滝川、帯広、書き出せばキリがない。

私の前職はBtoBビジネスだったので、触れ合う人たちは40〜60代の会社員が多かった。まさか自分が、18歳の人と、ついこの前まで高校生でした、という人たちと、しかも僻地と呼ばれる地域に住んでいる人たちと、仕事の話をするとは思ってもみなかった。

さて、タイトルについてである。
私はお客さんと会っている時、家族関係や友人関係について質問する。すなわち「仲のいい友だちはいますか?」という質問だ。

一様になんと返ってくるか?
答えは「うーん、いませんね」である。
そりゃ、いるにはいるのだろうけど、みんな「いない」と答えるのだ。先日、こんなお客さんがいた。

18歳、北海道のある地方に住む女性だ。その子は今年高校を卒業して、進学はせず地元の企業に事務員として就職したそうだ。同級生で高卒で就職した子は数%らしい。少数派だ。

「同級生はどんなところに進学したの?」と聞くと、大半が専門学校だという。ここにも教育格差的な問題があるな、と感じるけれど、教育について思うところは、また今度に譲るとして。

同級生はみんな専門学校、地元を出るのだ。その子は地元に取り残された形になる。この子が将来、どんな大人になるのか想像すると、思うところはあるんだけど、とにかくこの子は地元に残った。

「インスタを見ると、みんなキラキラしたストーリーあげたりするんじゃない?くそー、って思ったりする?」と聞くと「はい、やり返したくなります」とニコニコ答えてくれた。

「休みの日は友だちと出かけたりするの?」
と聞くと

「もっぱら1人でドライブです。友だちはいないので」
と答える。

「そうなんだね、友だちは欲しいと思うの?」
と聞くと

「そりゃ欲しいです。色んな話がしたいし」
と答えてくれて

「そうだよね」
と私は言った。

20歳、青森出身の女の子のお客さんがいた。その子もまた高卒で就職して、縁もゆかりもない北海道で働いている。私はこの子と5回は会っていて、いつもうんうん話を聞く係になっている。誤解なきよう書いておくと、人の話を聞くのが楽しいからだ。そういうタイプなのである。

その子曰く、やはり自分には仕事での繋がりしかなく、友だちはいないらしい。切実にこう言っていた。

「私、友だちが欲しいんです。今日あったこととか、考えてることを話せる友だちが」

なるほどなぁ、と思って話を聞いていたんだけど、その子は「今日、○○さんに会えるから、休みの日に考えてたことをとにかく話したくて、昨日整理してたんです」

「整理したこと全部話せた?」と聞くと「はい!もう空っぽです!」ってニコニコしてて、いい子だなぁ、と。

あぁ、私の仕事は人の話を聞くことなのかな、と自尊心が保たれたり。

でも同時に思った。
友だち、作ったらいいのにな。

翻って現代社会である。
私たちには友達がいない。いや、いるんだけど、なんか満たされてない。だから「友だちはいるの?」と質問されると困るし、「友だちはいない」と答える。

ここで「友だち」という単語を定義しておく必要がありそうなので、自分なりの定義をしておきたい。私の友だちの定義はこうだ。

友だち=気軽に連絡が取れて、理由なく会えて、悩みや人生の考え方を議論できて、困ったら助けてあげるし、逆に自分が困った時には助けてくれる存在。

こうでしょ。友だちって。
少なくとも私は、友だちってそういうものだと思ってる。連帯感みたいなものだよね。ところが現代はどうだろう?先に書いた2人の女の子はどうだろう?

友だちと呼べる存在は、確かにいるんだけど、みんな何か足りてない。だから「友だちはいない」と答える。なぜなのか?なぜ友だちがいないのか?

結論を書く。
私たちは、友だちの作り方を知らないからだ。

スマホを見れば、SNS、YouTube、Netflix、アマプラ。足りているのだ。可処分時間みたいなものは、スマホに占領されている。友だちみたいな存在もその中にいる。でもスマホは情報を送ってくれるだけで、私たちの意見や日常の些事を聞いてはくれない。

学校でも友だちの作り方は教えてくれない。円周率とか鎌倉幕府の設立がいつだったかは教えてくれるけど、肝心要の人間関係の作り方は教えてくれない。だって先生も友だちがいないから。分からないし、抽象的なものだから教えられない。

ゆるやかなコミュニティが現代社会には、ない。
みんなが意見を交換できる、うんうん聞いてくれて、何か話せる、そんな場所が私たちにはない。だからそんな場所を作りたい。

宮台真司さんがこう言ってた。
「友だちなんて、困ってる人を助けたら自然にできるでしょ」
私たちは、こんな簡単なことが出来ていない。

私たちには、なぜ友だちがいないのか?
それは、作り方を知らないからだ。
だから、みんなが集まれる場所が必要だ。

そういう場所をこれから作ろうと思う。

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