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さみしさの詩

 きみが詩を書くためのメタファーとして  きみにつくられたかったが  ぼくは乳化した欲望のオブジェで  ぼく自身のからだのなかでしか死ねないんです……  丸めたティッシュが無数に散らばる、からっぽの駅 プラスチックの白のつめたさは、階段の裏側のようだね あかちゃんが、うまれるばしょみたいだね 半分だけあおいかげで満たされている 鍵盤の全身挫滅の音はまるでうちゅうの骨だね(夕暮れだと何度もいおうとして、舌がもつれて幽霊と何度もいいまちがえ、その頃からぼくは母の閃輝暗点を頻繁に

    • かえっていく……かえっていくよ……かえっていく…… この連続はすべて         神に対するエコラリアなのです…… 最後の卵として生まれたぼくは         空洞なのか沈澱しているのかも…… 対抗したいのではなく退行したいのだ         泣いているのか朗読しているのかも からだがねじれていくようだ         わからないまま殴らないでといい、 表象の中のきみの不在         ざらつきとしてすべてがみえる…… 鉛筆画としての死のあり方         

      • ブラックスペースの詩

        • リミナルスペースの詩

           内在化 階段をおりていく気配 透明なはらわたとして──夜中ぼくは目覚め、キッチンにいるきみにはなしかけることができなかった。包丁で青い暗闇が切られていくのがみえる ゼラチン質と宇宙のつくりは似ていて、弾力が薄い刃をはじくように──断裂、断裂、、断、  きみの皮膚はすべてを遠ざけたがる高潔 どれだけ触れてもぼくの手のひらにあるのは、みずからの神経のゆがみの感覚にすぎないと知ったとき 経験したことのないはずの幻肢痛をこれ以上なく感じた 経験したことのない幻肢痛を……  散るも

        さみしさの詩

          クロス【くろす、点滅、光より光としてある光】 「その光がどのような価値や意義をもつのか。その光を見出した瞬間と現在のあいだには、どのような違いがあるのか(ある教師の発問)」 「蜜だよぜんぶ。錆びるように、焼かれてもなにもかもそこにある(しきりに揺れている銀杏並木が光をうける様子をみて)」 ○輝点として。説明のできない展開図として。くりかえす反転の残像として。ぼくを殺す火として。すべてが明るみに出てしまう。俯瞰。痛みとして。つかめない粘土のように。命の光速だけが感じられるフレ

          幻詩分裂

          きみ、と呼ぶような音程のお              ん  垂れていくような 比喩が十字架として機能する が                く(耳鳴り──────── 齧られていくのをみていた それが羨ましかった  引き抜いたナイフから血が垂れるように、ぼくが語るものはぼく自身のものでしかなく きみが語ったこと‖だけをそっくりそのまま‖繰り返していたかった 歪んでいるものなどなにひとつないのに、崩れるものをみたことがないのに、どうしようもなく知っている…… ぼくはもう死んで

          幻詩分裂

           対称性…………二項対立……空間と時間、ほつれる……蛍光灯が点滅するように切れかけていくもの、人生、と、人生から生まれたもの むかし教科書で読んだI was bornという詩  ぼくがぼくから抜け落ちる感触(ずるりと全身を撫でてずるりと剥がれ落ちて糸を引く、糸の柔らかさ 消えていく感覚 それがぼくは心地いい 喉越しのよさが体の表面へと逆転したような 心地よさがグロテスクさに変わる瞬間(種が怖い あなたを殺すのが怖い ありふれたものが怖い))  救急車が通りすぎていく  救急

          憧憬の詩

           接続──永遠──手を組むと祈りにつながる、内包……無限……組んだ手にはすでに祈りがある、ふれあっていることは同じなのにちがってみえ、ぼくはいままで無音の場所にいたのだと 気がつくのはいつも耳鳴りがはじまってからだった 中に/外にある永遠の、てのひらとしてあなたがみえる(あなたをみていないわけじゃない)(ぼくが、あなたを選んだんです)  それは窓として、鏡として、液晶として、扉として、詩として、海として、表情として、隠す手として、眩しさとして、暗がりとして、夢として、内臓とし

          憧憬の詩

          宇宙相談電話

          透明性透明性透明性透明性透明性のゼリーのなかにぼくはいて、不足はないのに足りない、どうかどうか空間からたすけてください──どうかどうかぼくを(注0)させてください─どうかどうか時間からたすけてください(存在しないものを存在するもので表現するとき、そこに(生まれる生まれる生まれる生まれる生まれる生まれる生まれる)(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ)脈動しているのを感じる(連続──増幅)でも、ぼくは(注0 一回きりの知覚したことも想像したこともないものがほしいんです それはすべてぼく

          宇宙相談電話

          世界の終わりの詩

          世界の終わりの詩

          余白実験

          熱い氷が脳に 脳は氷で溶けていく 自然に接続してしまうので 1:1以外の 包摂よりも 失いたくないだけだとして、それでも(あらがいを失いたくないだけだとして、) 昔 削りとる 口の中で溶けた飴の 屈折の 揺らぎ 大きくて シルクをかぶった 見えることだけがわかる(なんて書いてあるのか、どんな顔をしているのかはわからない、それがなにかも でもみえていて、ぼくはそれに向かって手を振っている、それに向かって歩いている、きみがひとなのか、文字なのか、意味もなにもわからず

          余白実験

          ラブレターの詩

           砂よりやわらかくて水より硬くて電気よりゆっくりで、色よりやさしくて匂いより確実で音よりぼくのなかに染みこんで、くる、もの、のことを、ぼくは口走らずにはいられない、吐き戻すように/咀嚼するように口のなかにとどめつづけたくて、でもそれってたべものではないです //いちばん近くにあるもの/だけど食べられないもの/ぼくの体になることはできないが//神さまでさえつくれなかったもの  きみがきみでいるだけでいい、と思う、心の底から、ぼくはきみを口にとどめることはできない 傷を作ることが

          ラブレターの詩

          心臓の詩

           ずっと欲しかったものを手にしたときも、はじめて炎を見たときも、いま期待するよりずっと驚かなかったから、ぼくには口がないような気がする、手がないような気がする、ここにいないような気がする、なにも それなのにぼくがきみのなかに帰ったら、ぼくのぶんだけきみがきみから排除されてしまうことがかなしい 骨、切り身、雪、沈黙、ここになくてぼくのなかにあるものを示すにはぼくを裏返すしかない、天使の輪、天井からぶら下がるもの、死以上詩未満、なににもなれなかったもの、ひび割れた鋭いきっさき(ガ

          心臓の詩

          融解の詩

           きみの心臓が動いているのをみていた つめたい場所で吊るされる冷凍精肉のようにも 博物館の展示のようにもおもえた、だけどきみは生きてる、生きている、精肉や展示は死んでいると思ったけれど、それだって生きているのだ ただ待っているだけ 当たり前か、というきもちとさみしさがあって、きっとさみしいのはぼくもそうだからなのだ  みんななにかを待っているのだとしたら、待つということばのなつかしさは ぜんぶのなかのいちばんやわらかい、ほんとうのぶぶんなんだろうか それがぼくはさみしい、なつ

          融解の詩

          夢の詩

          願望 音楽と子守歌のちがい 眠気 連続  一秒ごとに覚めて夢になっていく ふと見た窓の向こうは常に青い夕暮れ、金属のような夕日、それに裁断されていくものたちのことをぼくは見ることができないが  囲まれているのに、地平線をみているような気分だ  ただ、──海が怖い 人が怖い 愛が怖い さざなみと遠くの教室から聞こえる合唱練習の声が怖い 覚えていないかわりに感じることができる 曇り空の眩しさも、先生の向こうにあった画用紙の棚も、白い画用紙の厚みや質感も、なにもかも「だれも知らな

          夢の詩

          バラバラ殺人の詩

           死について知った瞬間、ぼくの人生はすでに終わったようなものだったから、ゆっくりになっていく秒針──ゆっくり、ゆっくりになっていく秒針──ゆっくりになっていく──秒針──、光が暗いなかに浮かんでいて、最初はきみの手のひらに触れてさえいれば安心だった 目を合わせてさえいれば安心だった つぎになにがいらなくなるのかということが不安でしかたなく、きみに帰りたいといいたかった、それは暴力だよ、暴力だよ、と風が吹いている 雨が降りかかる もうじき雪になる 地震のように揺れている気がする

          バラバラ殺人の詩