心臓の詩

 ずっと欲しかったものを手にしたときも、はじめて炎を見たときも、いま期待するよりずっと驚かなかったから、ぼくには口がないような気がする、手がないような気がする、ここにいないような気がする、なにも それなのにぼくがきみのなかに帰ったら、ぼくのぶんだけきみがきみから排除されてしまうことがかなしい 骨、切り身、雪、沈黙、ここになくてぼくのなかにあるものを示すにはぼくを裏返すしかない、天使の輪、天井からぶら下がるもの、死以上詩未満、なににもなれなかったもの、ひび割れた鋭いきっさき(ガラスかもしれない、きみの体かもしれない、包まれていたもの、過去だけがあるもの)にゆっくり、ゆっくり、削られていく皮膚、紙と紙の隙間が怖くて本が読めなくなった、濁流のような霧、
 雑踏のような沈黙、

(雪にみえたのは灰でした、ぼくはそれを見てきみを殺してしまったと思いました、きみはきみの寝室で眠っていましたが、これまでに何千ものきみを殺してしまい、ぼくの炎がきみを)

 耳鳴りがする
』それでもぼくは、伝えようとしなければいけないんです『
』どうしても『
』完璧になりたい『
』祈りよりも祈りをする意志のほうが大切だってこと、神さまのまえではみんな知っているはずなのに、どうして祈らないと通じないんだろう『
』なにもみつけられなくて神さまの存在をじぶんでみつけられなくてごめんなさい、こわくてすごくてぜんぶが繋がっている中心にあるものを神さまだと思っていて、きみだと思えなくてごめんなさい、なにもみつけられなくてごめんなさい、それでもしなければならなくてごめんなさい、それがきみのためにならなくてごめんなさい、ごめんなさいのことばは神さまに続いていて、でもぼくは神さまと繋がることもきみと繋がることもできず、あるいはそれが自立にみえるそうです、おとなにはそうみえるそうです、それを受けいれるぼくはおとなです、でもぼくは
』どうして通じないんだろう『

溶けていく、レコードのように(レコードを聞いたことはないけれど)』耳鳴りのように『
』夢のように『
ぼくは繰り返す、』えーっと、じゃあ、オムライスがたべたい『
』う〜ん、むにゃむにゃ……もうたべられないよ……『
』オムライスがたべたいよ『
』むにゃむにゃ、もうたべられないよ〜……『

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