リミナルスペースの詩

 内在化 階段をおりていく気配 透明なはらわたとして──夜中ぼくは目覚め、キッチンにいるきみにはなしかけることができなかった。包丁で青い暗闇が切られていくのがみえる ゼラチン質と宇宙のつくりは似ていて、弾力が薄い刃をはじくように──断裂、断裂、、断、
 きみの皮膚はすべてを遠ざけたがる高潔 どれだけ触れてもぼくの手のひらにあるのは、みずからの神経のゆがみの感覚にすぎないと知ったとき 経験したことのないはずの幻肢痛をこれ以上なく感じた 経験したことのない幻肢痛を……

 散るもの ひろく絶望し ぼくは死ぬように眠り、
 きみは目が覚めるように死んでいく

 すべて──再構成としての──デジャブ(繰り返されるものがいずれ聖歌になる) もうだれも祈らなくていい世界、火花、グラデーション、なにも覚えていないメモ
 うずくまるのはぼく自身だった/弦楽器のようにしゃくりあげていた/突然意識された部屋の、壁と天井が混ざる一点が なにもかもを透視してしまうように感じる なにもかも言うまでもないが、すべての枠線が立体になる その凹凸を指でなぞるように確かめずにはいられなくな

 る
  ぼくは────流体
磁力のようにくらく
     手を引かれる夢を見ている
 説明文のむこうに

 ぼくは静まり返った水族館の深海魚コーナーのくらい部屋にいた 壁につくられた正四角形の穴には厚いガラスで蓋をされて まるで墓に踏み入れるようにして 薄明かりで照らされたべつの生き物をみた きみが寝返りをうつ 服の布が粘土のように動いている……

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