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ルイス・キャロルの「アリス」考察

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『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』および関連作品の考察。 作中のパズルを解く記事が中心です。
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2020年9月の記事一覧

『鏡の国のアリス』謎々詩としての「ジャバウォッキー」

Jabberwockyの第2連~第6連は謎々詩です。

この詩全体が第1連と第7連が第2連~第6連を挟む配置で、英国式のクリスマスクラッカーを模した形象詩になっています。

クリスマスクラッカーの中央部分には、通常王冠の玩具や謎々の紙などが入っています。
Jabberwockyの中央部分も謎々です。

私の回答。

謎々の答としては"snapdragon"とか"a snapdragon in a

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『鏡の国のアリス』のチェス問題⑧(詩との関連4)

第9章で白の女王が披露する「fishの謎々」について述べます。謎々の答が「牡蠣」だというのは有名ですね。
(英語で貝をshellfishということから)

この謎々詩とチェス手順の関連について。

" 'First, the fish must be caught.'
That is easy: a baby, I think, could have caught it.
'Next, the f

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『鏡の国のアリス』のチェス問題⑦(詩との関連3)

The Warlus and the Carpenter双子兄弟が歌う「セイウチと大工」の詩とチェス手順の関連です。
実はテキストによって挿絵の位置がまちまちなので少し曖昧になってしまうのですが。

詩18連+挿絵3枚→21手ですが、挿絵の位置がハンプティ・ダンプティの詩のような「詩の中に挿絵が埋め込まれている」タイプなのか、連と連の間に入るタイプなのか不明。

前者なら連と挿絵がセットでチェス手

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『鏡の国のアリス』のチェス問題⑥(詩との関連2)

引き続き、詩との関連です。

ハンプティ・ダンプティの詩ハンプティ・ダンプティがアリスに聞かせる詩は、二行連句が20連と挿絵が1枚。
20連+1枚→21手で、詩の1連と挿絵の1枚がそれぞれチェス手順の1手に対応していると予想されますが、少し違うようです。

第15連が、1行目~挿絵~2行目という順序で配置されていて、詩と挿絵がセットで2手に相当するという意味のようです。

チェス手順の15手目は1

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マザーグースの忘れられた謎々⑧

今回は"There was a man of double deed"と
"A man of words and not of deeds"です。

原詩AThere was a man of double deed
Sowed his garden full of seed.
When the seed began to grow,
'Twas like a garden full of sno

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マザーグースの忘れられた謎々⑦

今回は「靴に住んでたおばあさん」他です。

原詩1There was an old woman who lived in a shoe,
She had so many children she didn't know what to do;
She gave them some broth without any bread;
She whipped them all soundly and p

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『鏡の国のアリス』のチェス問題⑤(詩との関連1)

チェス手順と詩との関連です。今回は"Jabberwocky"の第2連~第6連について。

4行×5連=20行が基本的に1行=1手の比率でチェス手順に対応しています。

1行目(第2連1行目)=1.○Nd4
Beware the Jabberwock, my son!が「花壇の中央の木が敵を追い払う」に対応。

3行目(第2連3行目)=3.●Nd5
Beware the Jubjub birdが「

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マザーグースの忘れられた謎々⑥

今回は「ヒッコリー、ディッコリー、ドック」です。

原詩Hickory, dickory, dock,
The mouse ran up the clock.
The clock struck one,
The mouse ran down,
Hickory, dickory, dock.

(拙訳)
8、9、10
マウスが時計を駆け上がる
時計が1つ鐘を打てば
マウスは時計を駆け

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『不思議の国のアリス』お茶会の考察(謎々以外)

『不思議の国のアリス』第7章のマッド・ティーパーティーについてのあれこれです。
帽子屋が出題する謎々については既に書きましたが、この章には他にも多くの仕掛けが。
私が気付いたものを書き留めておきます。

ドーマウスの「井戸の中の三姉妹」はお茶会全体の縮図のような側面がありますが、彼女らの名前には言葉遊びが仕掛けてあります。
それと同様、お茶会メンバーの名前にも意味があるのです。

章題のA Mad

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『鏡の国のアリス』のチェス問題④(日付との関連)

今回はチェス手順と日付との関連です。

1手=1日対応では、21手のチェス手順はLentの後半3週間に相当しています。

Lentは、元々40日間の断食期間だったのが、期間中の6回の日曜日を「断食を休む日」にして46日間になったという経緯があります。

白の女王の台詞「breakfastの前に6つのあり得ないことを信じた」の「あり得ないこと」というのは、Lent期間中の日曜日のこと。
そもそも朝食

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マザーグースの忘れられた謎々⑤

今回は「私の息子ぽっちゃりジョン」です。

原詩Diddle, diddle, dumpling, my son John,
Went to bed with his trousers on;
One shoe off, and one shoe on,
Diddle, diddle, dumpling, my son John.

(拙訳)
私の息子ぽっちゃりジョン
ベッドにズボンを脱がずに入る

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『鏡の国のアリス』のチェス問題③(時間との関連)

チェスの回答手順と時間の関係です。
1手=1年、1手=1日、1/2手=1時間の3種類がありますが、今回は「年」と「時」です。

1手=1年Alice Liddellは1852年5月4日生まれ。
そのアリスの半生と『鏡の国』のチェス手順が連動しています。
第1手=1852年、第2手=1853年、・・・第21手=1872年という対応です。

1852年(1.○Nd4)
アリス・リデル生まれる(数え年1

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『鏡の国のアリス』のチェス問題②(物語との関連)

回答手順と物語の関連(主なもの)1.○Nd4 花壇中央の木、「バウワウ」①
1.●Qh5 赤の女王「2,3,4,5」と数えて去る
2.○Nf5
2.●Nf6
3.○d4 双子との会話、"harf past four"
3.●Nd5 ナイチンゲール来襲②
4.○Qc4 白のクイーン、赤のナイトを攻撃
4.●Nf4 白のナイト孤立(牢の帽子屋)
5.○Qc5 白のクイーン、白のナイトを守る
5.●Ng

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『鏡の国のアリス』のチェス問題①(回答手順)

『鏡の国のアリス』巻頭のチェスプロブレムへの私の回答です。
『鏡の国』は、この回答手順を踏まえないと作者が表現しようとした内容のうちの半分も理解できないのではないかと思います。
来年2021年は『鏡の国』刊行から150年。
『不思議の国』は大好きだけど『鏡の国』はちょっと、という人もこれを機会に挑戦してみては如何でしょうか。

回答手順 1.○Nd4・・・1.●Qh5
2.○Nf5・・・2.

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