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<SS>北風と太陽:人を動かす真の力

昔々のこと、北風と太陽が、悪い行いをしている人々の心を正すことを目的に競争をしました。

北風が真っ先に行動を開始しました。悪い行いをしている人々に向けて強い風を吹かせながら「やめろ!」と声を大にして叫びました。「やめなければ、もっと強い風を吹かせるぞ!」という脅しも加えました。しかし、この厳しい風と言葉は人々をただ頑固にさせるだけで、彼らは北風の言葉を無視し、さらに悪い行いに走ってしまいました。

次は太陽の番です。太陽は悪い行いをしている人々に対し、別のアプローチを取りました。太陽は優しく温かい光を送りながら心温まる言葉をかけました。「悪いことをしても全く意味がないよ。悪いことをしても君には何のメリットもないんだ」と、彼らに語りかけました。さらに太陽は、彼ら一人一人の良い面に目を向け、それらの点を認めて称賛しました。そして、「君たちの中にあるその良い部分を使って、もっと素晴らしいことをしよう」とアドバイスを送りました。太陽のやさしい言葉と温かい光に触れた人々は次第に心を開き始め、自分たちの行動を見直し、悪いことの無意味さを理解し始めました。

また、太陽が送り込んだ温かい光によって、自然と悪いことができないような状況が生まれました。太陽の光が世界を明るく照らし出すことで、人々の存在がはっきりと浮き彫りになります。この明るさにより、以前は隠れていた影の部分も次第に明らかになり、人々がより目に見える形で現れたのです。このように太陽の光のもとでは、人々の存在そのものが脚光を浴びます。その結果、悪い行いよりも良い行いが目立ち始めたのです。

最終的に、悪い行いをしていた人々は自らの意思で行動を変え始めました。そうして、少しずつそのような行いをする人々の数が減っていったのです。

この競争を通じて、北風と太陽は貴重な教訓を得ました。それは、強制や命令ではなく、理解と共感が人の心を動かす力を持っているということです。悪い行いをやめさせるためには、厳しい言葉を使うよりも、優しさと愛情を込めた接し方がはるかに効果的であることが明らかになりました。この競争で太陽が勝利を収めたとはいえ、実際には両者が多くのことを学んだのです。

     ◇  ◇  ◇

イソップ寓話の「北風と太陽」を基に、物語を創作してみました。

相手の心を変えるには、強制や命令よりも、優しさや理解を示すことが重要です。この物語は、悪い行いをしている人々に対するアプローチとして描きましたが、これは現実社会の人間関係や職場でのやり取りにも通じるものです。相手に何かをしてもらいたい時は、強制や命令ではなく、理解と共感を持って接することで、相手が自ら行動を起こすようになるのです。


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