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コトバでシニカルドライブ

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頭の中でたまーに構成する言葉とコトバ。 その組み合わせは、案外おもしろいとボクは思う。誰に向けるでもなく、自分の中にあるスクラップをつなげてリユース。エッセイや小さな物語を綴りま…
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2020年7月の記事一覧

[ちょっとした物語] 軒先の雨宿り

[ちょっとした物語] 軒先の雨宿り

 今日はいやな雨の降り方をする。
 強く降ったり、弱く降ったり。なんだか動きづらい。蒸し暑く、もう服を着ていることすら鬱陶しくなる。

 駅を出ると、雲の切れ目から太陽が顔を覗かせていた。これは幸運だ。今のうちにと濡れた路面を駆ける。
 しかし、ふと思った。
「何をそんなに急ぐ必要があるのだろう」
 僕らは時に、いつもどおりのことができないと少し焦ってしまう。今もそうだ。雨が少しの間止みそうだから

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[ちょっとした物語]溺れる魚は七夕を想う

[ちょっとした物語]溺れる魚は七夕を想う

 夜の街、僕はひとりで路地を歩いた。
 家路を急ぐ道すがら、並ぶ住宅の塀に添えられた笹の葉を見た。
 掛けられた短冊が、今日が七夕であることを教えてくれた。

 願い事を最後のしたのはいつだろう。
 急いで抜けた終電間際の改札。
 今日が七夕なんて頭の片隅にもなかった。

 今の僕は、天の川を渡ろうとする彦星か。
 なんて、主役気取りか。
 そんなバカな考えに辟易した。
 待ってる人のいない対岸に

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[ちょっとした物語]雨

[ちょっとした物語]雨

 僕らは雨が降ると、いつも家で過ごすようにしていた。

ポツポツ
ザーザー

 どんな雨でも同じだった。
 ほんの薄暗い日中は、よく最近見たドラマや読んだ本、聴いた音楽の話をした。
 でもふと、ふたりの会話に、窓から漏れる雨音が差し込むと、僕らは会話を止めて降り続く雨の音を聴いた。
 それはまるで、ショーウィンドウに飾られたマネキンのように、降る雨をひたすら同じ顔つきで、同じ姿勢で、やりすごすよう

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