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小説「鏡面で踊る男」 小説塾・6回課題コース 第1課題

小説「鏡面で踊る男」 小説塾・6回課題コース 第1課題

絵描きを目指しているかたが、時系列で作品を並べて、腕が上達する過程を見せてくれることがあります。それを小説でやってみようと思います。無料で読めます。投げ銭スタイルです。

2018年に薄井ゆうじ氏が主催する「小説塾」の小説創作講座・全6回・課題コースを受講した際に提出した小説たちです。最後の課題だけ、褒められました。

最後に、この小説の(厳しい)講評を紹介したブログ記事のリンクを載せておきます。

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小説「三日月に散る」 小説塾・6回課題コース 第2課題

小説「三日月に散る」 小説塾・6回課題コース 第2課題

絵描きを目指しているかたが、時系列で作品を並べて、腕が上達する過程を見せてくれることがあります。それを小説でやってみようと思います。無料で読めます。投げ銭スタイルです。

2018年に薄井ゆうじ氏が主催する「小説塾」の小説創作講座・全6回・課題コースを受講した際に提出した小説たちです。最後の課題だけ、褒められました。

最後に、この小説の(厳しい)講評を紹介したブログ記事のリンクを載せておきます。

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小説「朽ち果てた飛行船」 小説塾・6回課題コース 第3課題

小説「朽ち果てた飛行船」 小説塾・6回課題コース 第3課題

絵描きを目指しているかたが、時系列で作品を並べて、腕が上達する過程を見せてくれることがあります。それを小説でやってみようと思います。無料で読めます。投げ銭スタイルです。

2018年に薄井ゆうじ氏が主催する「小説塾」の小説創作講座・全6回・課題コースを受講した際に提出した小説たちです。最後の課題だけ、褒められました。

最後に、この小説の(厳しい)講評を紹介したブログ記事のリンクを載せておきます。

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小説「花束ルーレット」 小説塾・6回課題コース 第4課題

小説「花束ルーレット」 小説塾・6回課題コース 第4課題

絵描きを目指しているかたが、時系列で作品を並べて、腕が上達する過程を見せてくれることがあります。それを小説でやってみようと思います。無料で読めます。投げ銭スタイルです。

2018年に薄井ゆうじ氏が主催する「小説塾」の小説創作講座・全6回・課題コースを受講した際に提出した小説たちです。最後の課題だけ、褒められました。

最後に、この小説の(厳しい)講評を紹介したブログ記事のリンクを載せておきます。

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小説「透明楽団」 小説塾・6回課題コース 第5課題

小説「透明楽団」 小説塾・6回課題コース 第5課題

絵描きを目指しているかたが、時系列で作品を並べて、腕が上達する過程を見せてくれることがあります。それを小説でやってみようと思います。無料で読めます。投げ銭スタイルです。

2018年に薄井ゆうじ氏が主催する「小説塾」の小説創作講座・全6回・課題コースを受講した際に提出した小説たちです。最後の課題だけ、褒められました。

最後に、この小説の(厳しい)講評を紹介したブログ記事のリンクを載せておきます。

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小説「ホウオウの寝床」 小説塾・6回課題コース 第6課題

小説「ホウオウの寝床」 小説塾・6回課題コース 第6課題

絵描きを目指しているかたが、時系列で作品を並べて、腕が上達する過程を見せてくれることがあります。それを小説でやってみようと思います。無料で読めます。投げ銭スタイルです。

2018年に薄井ゆうじ氏が主催する「小説塾」の小説創作講座・全6回・課題コースを受講した際に提出した小説たちです。最後の課題だけ、褒められました。

最後に、この小説の(厳しい)講評を紹介したブログ記事のリンクを載せておきます。

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回虫のように 1章

赤井郵太郎(あかいゆうたろう)が出産をしたのは、二十一歳の誕生日だった。
 腹痛で目が覚めたとき、ベッドの枕もとのデジタル時計は三月三十一日の四時過ぎを示していた。まだ夜は明けていない。空気はひんやりとしていた。隣の女性は静かに寝息をたてている。彼女のみずみずしい肌の足が薄闇のなかに白く伸びていた。郵太郎はブランケットを西村奈緒(にしむらなお)にやさしくかけた。
 痛みが激しくなったのはその瞬間だ

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回虫のように 2章

 香ばしいパンの匂いで目が覚めた。時計は十時過ぎを示している。ベッドから起き上がると、奈緒が朝食を用意していた。おはよう、と声をかけると奈緒は、
「クローゼットからこれ借りた」
 と言い、赤い上下のジャージを示した。高校のサッカー部のジャージだった。
 郵太郎は洗面台で顔を洗い、トイレに入った。便座にすわると、肛門に寄生虫の感触が残っていた。奈緒はクローゼットからジャージを取り出した、と言った。小

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回虫のように 3章

 奈緒とはじめて会った夜は激しい雨の降る、九月の最初の金曜日だった。前日に郵太郎が所属するフットサルサークルの学年がひとつ上の吉田(よしだ)健(たける)から連絡を受け、翌日の午後の予定を空けておくように、と強引に言われた。
 池袋駅東口近くの雑居ビルにあるその居酒屋に、集合時間である一九時の十分前に着くと、すでにテーブルには熊のように体の大きい吉田がいた。郵太郎が席にすわると吉田は、
「ぴったり十

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回虫のように 4章

 トイレに向かった奈緒の後ろ姿が見えなくなると、郵太郎はポケットから取り出した小瓶をテーブルに置いた。
 この席からは店内のすべてが見渡せた。話し込む二人組、読書する客、手帳に何かを書いている客、コーヒーを淹れている主人、壁のポスター、木目調の床、革張りのソファ、手作りのメニュー表、木彫りの動物、窓の外の通りには歩行者、老人、サラリーマン、自動販売機、雲、看板があった。そのすべてとの関わりを拒絶

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回虫のように 5章

 狭く埃っぽいエレベーターに乗り、奈緒はB1のボタンを押した。扉が開くと、占いの館の看板が目に入った。看板には大きな金色の文字で、

『ホウオウがあなたの生と死を導きます』
 と書いてあった。入口のドアには、鳳凰が描かれたステンドグラスがはめ込まれていた。ドアを開くとすぐに受付があり、カウンターのなかで中年女性が煙草を吸っていた。鳳凰の描かれた赤い袈裟と、赤いターバンを身につけていた。
 奈緒の予

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回虫のように 6章

 ビルを出ると細く白い奈緒の指に、郵太郎は自分の指を絡めた。池袋の空はまだ明るかった。目の前の車道を車が行き交う。
郵太郎は奈緒に占いのプレゼントの礼を言った。
「占いによれば、あなたは今日、変わるのよ。たぶん私の前で」
「当たればね」
「当たるんだから」奈緒は笑顔をつくった。
「次も何か予定があるのか?」
郵太郎の問いに奈緒は、公園に行きたい、と答えた。
 南池袋公園のカフェを見ながら、貸出用の

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回虫のように 7章

 チケット売り場の女性は、閉園まであと三十分です、と告げた。
 平日の客は少なかった。カップルや学生のグループが何組かいるだけだった。まっすぐに観覧車へ向かった。ジェットコースターの走る音に人間の声が少しだけ混じっていた。夜のなかで観覧車はカラフルな光を不気味に放っていた。
 ほとんど待つことはなかった。赤く光るゴンドラの扉を係員が開け、なかに入り、ふたりは向き合うようにすわった。だんだんと地上が

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回虫のように 8章

 奈緒は赤羽に住んでいた。赤羽駅西口を南へ十五分ほど歩いたところにある丘の中腹に、その新築の鉄筋アパートはある。二階のいちばん奥の部屋を彼女は借りていた。
 玄関を開けると廊下がまっすぐ伸びている。右側には小さなキッチンと冷蔵庫がある。左側にはドアがふたつあり、ひとつはトイレ、ひとつは洗面台と洗濯機と浴室があるスペースに通じている。廊下の突き当りの居間の中央にテーブル、壁際にベッド、その向かいの壁

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