春日森の文化博物館 柴田慶子企画展 公式

岐阜県揖斐川町にある春日森の文化博物館で行われる柴田慶子企画展≪言葉が見せる風景ー聞き…

春日森の文化博物館 柴田慶子企画展 公式

岐阜県揖斐川町にある春日森の文化博物館で行われる柴田慶子企画展≪言葉が見せる風景ー聞き写し春日Ⅱー≫の公式note。会期は2022年10月22日~11月12日の金土日祝日。公式サイト:https://kurashikan.mystrikingly.com/

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記事一覧

「声と文学」

『企画展の課題 しみる〛 自分は、映像というよりadobe のソフトを使った画像を重ねる手法を採用している。画像と画像の間に重なる時間を設けるもの。作画の過程で時間を…

森の文化博物館 企画展 挨拶文

挨拶文を掲載します。 取り組む動機がちゃんと書けたような気がします。 誰に見せたい作品なのかと問われれば、自分の表現の世界のため、そのために、春日という土地を借…

目に見えるものと見えないもの について考える 対談に向けて

今回の企画展では、キュレーターの先生が私の作品を理解するためには「目に見えないもののの存在を理解する必要がある」と、パンフに書いてくれました。 実際、私は、目に…

「鳴リモノ」市橋美佳

 私は「鳴リモノ」を振り鳴らす事で、詩を読誦する姿を想像します。 「鳴リモノ」とは、振ると音が鳴るのですが、静止した状態にも音は存在していると捉えたものです。そ…

企画展の準備 陶芸家の市橋美佳さん

10月22日の企画展に向けて、会場の準備をしました。照明を自分でやりかえる陶芸家の市橋先生。 この部屋は、柴田の家の写真が2枚、生活用具に根差した作品をつくるという…

中山 山の講

中山集落の山の講です。いまも、行われています。この縄の向こうは結界です。縄より前に行くと注意されます。 「山の講には山に入らない。ごくうはんを備える。箸は1本。…

炭焼きの夫婦

この写真を撮影したのは中山から少し行った場所にある炭焼き小屋。川合で炭焼きをしていた夫妻です。夫君は、手作りが得意で、山からは段ボールをそりに、降りてきますし、…

水の中に

戦争に行って帰還しなかったもの、沈みゆっくダムで残されたモニュメントのような島。鹿。終戦後、村に帰ってきたばかりの鐘の前の稚児行列。

炭焼窯から炭を取り出す直前

炭を取り出す直前の炭焼き窯。炭は、炎にやかれ、向こう側に倒れています。春日の美束の炭焼き窯では3人の男性が従事。中心のしげさんは、木に火をつけることをうやると言…

百日紅

中山観音寺の好きなところに百日紅があります。墓地の近くにあり、お盆のころに満開になります。 百日紅は美束の五輪石の近くにもあります。 「関が原で敗れた武将をほうむ…

しゅびよくほうむってただいまかえりました

「しゅびよくほうむってただいまかえりました」  この言葉を聞いて何のことかわかると思います。ほうむるとは埋葬ですが、しゅびよくがつきます。そして、ただいまかえり…

ポチと熊を追う

この写真は、藤原さんの聞き取りから生まれたものです。藤原さんは、国見峠付近で、熊の猟をしていました。 「鼻をこう振って。風が吹くと匂いがする。何か風がくるなと、…

琵琶湖の水が

 今回の個展は、「琵琶湖の水が来ておったんじゃ」という、聞き書きから始まります。春日は岐阜の山村なので、琵琶湖の水が来るというのは考えられなかったのですが、そこ…

PRESS RELEASE

◆プレスリリース◆ プレスリリースの全文はこちら。 ◆ご取材のご案内◆ 10月13日(木)10:00~15:00の間 10月18日(火)10:00~15:00の間 開催直前の展示会場を【先行解…

呼び覚ますのは言葉、地霊 琵琶湖の水 琵琶湖の上のB29

企画展に向けて28日の小高先生との対談で、「呼び覚まされ写真を撮る」とのタイトルをつけました。 私は、何に呼び覚まされているのでしょう。初めて、春日に来たとき最初…

【対談「呼び覚まされ写真を撮る」】 小高美穂×柴田慶子 究極の対談 10/28(金)開催

概要 フォトキュレーター・小高美穂は、”柴田の作品を理解する上で重要な手がかりになるのは、目には見えないものの存在である。”と語る。 目には見えないもののの存在…

「声と文学」

「声と文学」

『企画展の課題 しみる〛

自分は、映像というよりadobe のソフトを使った画像を重ねる手法を採用している。画像と画像の間に重なる時間を設けるもの。作画の過程で時間をとめて、静止画にするときもある。

企画展では、1枚よりも映像の方が圧倒的に好まれている。自分もその方が良いと思っているが、その原因がわからないので探っている。一つのヒントになったのが「声と文学」の耳の聞こえない写真家の話だった。

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森の文化博物館 企画展 挨拶文

森の文化博物館 企画展 挨拶文

挨拶文を掲載します。

取り組む動機がちゃんと書けたような気がします。

誰に見せたい作品なのかと問われれば、自分の表現の世界のため、そのために、春日という土地を借りているというしかありません。私の目的は古老の言葉を得たことによって得られる視覚を提示することです。

 それでは、どうして、春日なのかといえば、春日を歩く時の、胸がしめつけるられるような感情にあるというしかありません。
 さっきまで赤

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目に見えるものと見えないもの について考える 対談に向けて

目に見えるものと見えないもの について考える 対談に向けて

今回の企画展では、キュレーターの先生が私の作品を理解するためには「目に見えないもののの存在を理解する必要がある」と、パンフに書いてくれました。

実際、私は、目に見えないものの存在について、考えてきました。そして、春日を被写体に選んだのは、目に見えないものの存在が顕著だったからです。
最初に春日を訪れたとき、私は谷山の廃村で、菊の花を撮りました。誰もいない集落で、墓は並んで立ち集落に向かって、川向

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「鳴リモノ」市橋美佳

「鳴リモノ」市橋美佳

 私は「鳴リモノ」を振り鳴らす事で、詩を読誦する姿を想像します。
「鳴リモノ」とは、振ると音が鳴るのですが、静止した状態にも音は存在していると捉えたものです。それは意識の中に思い出そうとすれば思い出すことのできる音で、私はこれを作品の手掛かりとしています。
そう思えば、文字にも「あ」の音には『あ』という形があり、それによって言葉が楽譜のようにも見えてきます。「鳴リモノ」と言葉、どちらも音を内包し

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企画展の準備 陶芸家の市橋美佳さん

企画展の準備 陶芸家の市橋美佳さん

10月22日の企画展に向けて、会場の準備をしました。照明を自分でやりかえる陶芸家の市橋先生。
この部屋は、柴田の家の写真が2枚、生活用具に根差した作品をつくるということで、生活のある写真を展示しています。柴田が一番好きなポートレートもここにあります。
和室の脇には川が流れ、いつも、川の音が。そして、栃の葉の影が入ってきます。先生の作品である鳴りモノがこの部屋でどう響くか。どうぞお楽しみに。

中山 山の講

中山集落の山の講です。いまも、行われています。この縄の向こうは結界です。縄より前に行くと注意されます。
「山の講には山に入らない。ごくうはんを備える。箸は1本。」
「山の講には山に入らない。神様が山の木を数えるから。」
 ちなみに、山の講はやまのこという発音に聞こえます。

縄を編むのに半日かかります。山の講の碑には大山祇神と掘ってあります。

炭焼きの夫婦

炭焼きの夫婦

この写真を撮影したのは中山から少し行った場所にある炭焼き小屋。川合で炭焼きをしていた夫妻です。夫君は、手作りが得意で、山からは段ボールをそりに、降りてきますし、橋から渡ると遠くなる炭焼き小屋までの直線距離を滑車で渡ります。奥様が、あぶない、といいながら、笑っていたのが印象的でした。女性も炭焼の労働力で、木を伐り、窯をうち、炭を負んだ。
山の神は女神だそうですが、奥様の姿が女神が降りてきたようにも見

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水の中に

水の中に

戦争に行って帰還しなかったもの、沈みゆっくダムで残されたモニュメントのような島。鹿。終戦後、村に帰ってきたばかりの鐘の前の稚児行列。

炭焼窯から炭を取り出す直前

炭焼窯から炭を取り出す直前

炭を取り出す直前の炭焼き窯。炭は、炎にやかれ、向こう側に倒れています。春日の美束の炭焼き窯では3人の男性が従事。中心のしげさんは、木に火をつけることをうやると言いいます。うやるとは燃やすと違い、線香が燃えていくのと同じことといいます。
炭焼きは煙とかざでやっていくと聞いて、かざを風と間違えてノートにとり、直してもらいました。かざとは匂いです。しげんさんのおばあさんは、炭焼き小屋からも「ちょっとかざ

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百日紅

百日紅

中山観音寺の好きなところに百日紅があります。墓地の近くにあり、お盆のころに満開になります。
百日紅は美束の五輪石の近くにもあります。
「関が原で敗れた武将をほうむったその屋敷には、百日紅がある。」

しゅびよくほうむってただいまかえりました

「しゅびよくほうむってただいまかえりました」
 この言葉を聞いて何のことかわかると思います。ほうむるとは埋葬ですが、しゅびよくがつきます。そして、ただいまかえりましたというように、施主に挨拶する姿が浮かびます。

 葬儀の時に、安土で使われていた言葉です。この言葉を使うようになったのはいわれがあります。

「しゅびよくほうむってただいまかえりました。おいぼうが、さんまいで井桁に木を組んで、なきがら

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ポチと熊を追う

ポチと熊を追う

この写真は、藤原さんの聞き取りから生まれたものです。藤原さんは、国見峠付近で、熊の猟をしていました。

「鼻をこう振って。風が吹くと匂いがする。何か風がくるなと、すると、だあだあだあだあと洞をずっと上がっていく、風が具合ようくると上がっていって、風がそれると、匂いが来ないようになる。すると、匂いがないので、あちこち歩いて、匂いのするところ、探しとるわ。飛び上がったりして」

猟は犬が全て、犬がふっ

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琵琶湖の水が

琵琶湖の水が

 今回の個展は、「琵琶湖の水が来ておったんじゃ」という、聞き書きから始まります。春日は岐阜の山村なので、琵琶湖の水が来るというのは考えられなかったのですが、そこには、太古に思いをはせる古老の言葉があったのです。

 春日の古老は、驚くべき表現と記憶力で、過去を語ります。熊と出会ったことを、戦争で帰還しなかった友人、薬草を大垣まで売りに行く道筋の景色、死間際の姑のこと。それは自分の記憶と比較して驚く

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PRESS RELEASE

PRESS RELEASE

◆プレスリリース◆
プレスリリースの全文はこちら。

◆ご取材のご案内◆
10月13日(木)10:00~15:00の間
10月18日(火)10:00~15:00の間
開催直前の展示会場を【先行解禁】します。

◆参加方法
ご取材頂けるメディア関係者の方は、事前に電話予約(0585-58-3111)をお願いします。その他、事前にご質問&ご要望等ございましたら、学芸担当までご連絡ください。どうぞよろし

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呼び覚ますのは言葉、地霊 琵琶湖の水 琵琶湖の上のB29

呼び覚ますのは言葉、地霊 琵琶湖の水 琵琶湖の上のB29

企画展に向けて28日の小高先生との対談で、「呼び覚まされ写真を撮る」とのタイトルをつけました。

私は、何に呼び覚まされているのでしょう。初めて、春日に来たとき最初に惹かれたのは春日の地霊といってもいいと思います。廃村で、川向うの墓にむけられている菊の花。貸してもらったカメラを向けると、何かが写っているね、と言われたものですが、その何かとは地霊というものだと、そのころからわかってはいました。

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【対談「呼び覚まされ写真を撮る」】 小高美穂×柴田慶子 究極の対談 10/28(金)開催

【対談「呼び覚まされ写真を撮る」】 小高美穂×柴田慶子 究極の対談 10/28(金)開催

概要

フォトキュレーター・小高美穂は、”柴田の作品を理解する上で重要な手がかりになるのは、目には見えないものの存在である。”と語る。
目には見えないもののの存在とは何か?共同体の中で語れてきた言葉にのみ存在するものとは何か?
小高美穂と柴田慶子の究極の対談をぜひ、お見逃し無く。

会期

10/28(金)

会場

春日森の文化博物館 森のくらし館
(岐阜県揖斐郡揖斐川町春日美束1902-183

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