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「鳴リモノ」市橋美佳

 私は「鳴リモノ」を振り鳴らす事で、詩を読誦する姿を想像します。
 「鳴リモノ」とは、振ると音が鳴るのですが、静止した状態にも音は存在していると捉えたものです。それは意識の中に思い出そうとすれば思い出すことのできる音で、私はこれを作品の手掛かりとしています。
そう思えば、文字にも「あ」の音には『あ』という形があり、それによって言葉が楽譜のようにも見えてきます。「鳴リモノ」と言葉、どちらも音を内包しているものと考えています。

 この展示を前に、博物館にある民具を見せてもらう機会があり、いくつか展示として使わせていただくことにしました。かつてこの土地に居た人が手にしていた痕跡が残り、どの民具も濃密な気配を含んでいます。どれもが饒舌に語りかけ、移築された民家に置いてみるとそこに居た人は留守であるだけのようです。今回はそこにもう一つの要素として「鳴リモノ」を関係させます。

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市橋美佳(イチハシミカ)

幼少期に鈴を集めていた記憶から、陶の「鳴りモノ」をつくる。鈴木しづ子の俳句とあわせた作品集『月ピンクひまこれっきりすきなものは』2021年出版。 https://ichihashimika.site/


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