1mmも興味が湧かなかった会社に3年もいる理由
はじめに
いきなりネタバレですが、タイトルの「1mmも興味が湧かなかった会社」とは、筆者が現在在籍しており、2年強の構造改革を経てリブランディングを行った株式会社LiBのことです。
そんな新生LiBの特徴・魅力を様々な視点から発信するためにブログリレーを行うことになり、自分は何を発信すべきか考えた結果、社員・友人・知人はもちろん、面談・面接など初対面の方も含めて、自分について良く聞かれる質問第一位である、「なぜLiBにいるんですか?」についてちゃんと説明するものを書くことにしました(※)。
私はプロダクト・サービスづくりの会社で長年仕事をしてきたため、「なぜ(過去の在籍企業とは程遠い、人材紹介企業である)LiBにいるんですか?」という()の中身が質問の意図なんだろうな、ということは認識しています。
ただ、丁寧に回答しようとするとやたら話が長くなるため、「ご縁ですね(笑)」で済ませたケースが多いのが正直なところです。。
その丁寧な説明が主目的であるため、本記事の想定読者は
過去、私にこの質問をしてくださった方
筆者のことに興味を持ってくださる方
がメインになってしまうのですが、せっかくなので、
「Willを言語化しろ」と言われて困ってしまう方
自分のやりたいことと会社のやりたいことのミスマッチを感じている方
へのヒントになる部分があれば、とも思っています。
※:対外発信一発目の社長投稿の反響が大きかったため、急遽その補足記事的なものを出すことになり、本記事の出番が遅れました。。
1mmも興味が湧かない会社との出会い
自分が働く会社を探したり、調べたり、選んだりする経験、多くの人が持ってますよね。その機会も、自分主導のケースだけでなく、ネットでたまたま見かけた、友人・知人に紹介された、といった受動的なケースなど、様々だと思います。
40代はスタートアップ業界に捧げると決めて"場"探しをしていた私は、あるとき戦友のEさんからLiBという会社の紹介を受けます。「先方がぜひ会いたい」と言っていると。
社名も知らなかったので、送られてきたURLをポチり、コーポレートサイトを一通り閲覧しました。
・・・が、残念ながら1mmも興味が沸かず、自分がジョインすべき場ではないと即断しました。主な理由は以下です:
女性向けのビジネス
→自分が男性でユーザー視点を持ちづらいので「女性だけ」に提供するサービスに興味がないプロダクトや技術の要素がない
→自分のスキルの大部分は、ものづくりに関するものなので、スキル発揮の場がない取締役・執行役員・CxO多数
→もう会社として出来上がっていて、自分の意思を差し込む余地がない上場準備中
→もう会社として出来上がっていて、自分の意思を差し込む余地がない
"場"探しを行う上で自分なりに重視する軸があったのですが、その軸にことごとく当てはまっていませんでした…。が、Eさんには過去借りがあるため、紹介者としてのEさんの顔を立てるためだけに、義理面談に向かうことに。
面談の場で、社長を始め経営幹部のみなさまにお話を伺った結果、LiBがやりたいことを整理すると、↓な感じでした。
右上の緑のあたりは自分のやりたいことと一致しているものの、
ジェンダーギャップを減らすべきという思想は共感できるが、女性の転職/採用サービスを運営することで本当にギャップが減るのだろうか?
運営している転職/採用サービスを触ってみたところ、特に目新しい要素もなく、これで本当に女性の支持を得られているのだろうか?
転職サイトのデータベースがそのまま別ビジネスに使えるなら、(LiBより圧倒的に大きい)競合他社の転職サイトでもできてしまうのではないか?
などなど、不安点が盛りだくさんでした。
が、
スタートアップなんてどの会社も変数のかたまり
無いものはつくれば良いし、ダメなものは変えれば良い
会社のトップが変化する意思を持っているかどうかが一番大事
という思想で活動してたこともあり、最も変化する意思がありそうで、最も困ってそうで、最も頼ってくれたLiBにジョインすることにしました。
アラフォーな自分の興味
これだけだと、ただの「スタートアップ好きな人」だと思うので、この意思決定の背景を理解していただくためには、少し時を遡ってお話しする必要があります。
ソニーとDeNAに在籍していた際、私は様々な国の人と仕事をする機会に恵まれたことで、自分が生まれ育った日本という国を客観視する機会も多く得られました。それにより、
「仕事=生活のための労働」という感覚のままで良いのか?
働くことを楽しめ、誇れるヒトを増やすことはできないのか?
という課題意識が強く芽生えてきました。そして、その解決策を自分なりに考え続けた結果、
VUCAの時代、自らをアップデートし続けているヒトが増えることが鍵なのではないか?
アップデート=行動変容とも言えるが、それにはまず認識の変化が必要ではないか?
認識の変化は、一人で行うことは難しく、他者による客観視が必須なのではないか?
という仮説を持ちました。「客観視」による「認識や行動の変化」と書くと堅苦しいですが、
「本当に◯◯が上手だね〜」と言われて自分の強みに気づいたこと
「その考えは古いと思うよ」と言われて自分の考えを改めたこと
「◯◯に興味ないの?」と言われて自分の視野や選択肢が広がったこと
といった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
少なくとも自分は数え切れないくらいありますし、幸運にも大小様々な認識変化のきっかけをいただけたことによって、今の自分が作られているという自覚と感謝の気持ちが明確にあります。
こういった機会が得られるかどうかを運ゲーにしたくない、いわゆる就職ガチャ・転職ガチャ・配属ガチャ・上司ガチャで当たりを引いた人だけでなく、多くの人が当たり前に得られる機会にしたい。これが「働くことを楽しめ、誇れるヒトを増やす」ための自分なりのアプローチです。
同様の思想から、このアプローチを選ぶ方はたくさんいると思いますが、その実装方法は人それぞれだと思います。私は一生ものづくりをし続けると決めており、得てきたスキルもそこに特化しているので、上記の仮説をプロダクトとして表現できないか、と考え始めました。
当時の脳内を構造化すると↓のような感じです。
右上に「DeNA卒業確定時点」とあるように、転職活動を始めた時点ではもっともっとぼんやりしたものでした。最初は「ヒトに関するイノベーションやりたい」くらいのノリだったと思います(苦笑)
ここまでスッキリ言語化できたのは、転職活動の過程で多種多様な企業の方とお話させていただき、様々なインプットや刺激をいただけたことが大きかったと思います。本記事の後半に出てくる「転職活動は個人の認識と行動をアップデートする機会になる」という経験をまさに身をもって味わえました。
スタートアップ業界で仮説検証開始
こうしてクリアになった「やりたいこと」を試せる場はないかという視点で企業を選んだ結果、コグニティという小さなAI系スタートアップにジョインすることにしました。
その時点での私の脳内は↓な感じです。
黄色い部分がコグニティが取り組んでいたことですが、「クローズドな場」というのは、面談・面接・1on1・商談など、ブラックボックス化することで他社からの客観視やフィードバックが行われづらく、やっている本人が全く成長する機会を得られない場、ということです。
かなりニッチではありますが、まさに自分が描いていたことの実装形態の1つだったので、ここから育てていくのも良いかと思い、同技術の開発と事業化に勤しみました。
残念ながら、いわゆる「音楽性の不一致」的な理由により同社は1年強で去ることになった(※)のですが、自分の中でぼんやりとイメージしていた「ヒトをアップデートするための仕組み」が、
実際に具体化できること
技術と人手の組み合わせによる実装が最適であること
それにより世の中に価値を提供できること
の3点についてかなりの手応えを得ることができました。
なので、「具体手法」の部分だけを白紙に戻し、やりたいことは一切変えず転職活動を行いました。↓その時点の脳内。
※:冒頭にLiB紹介者として登場したEさん、実はここで同僚だったのですが、入社後半年を待たず退職することになりました。このEさんへの申し訳ない気持ちが、義理面談参加の主な動機でした。
人材業界での仮説検証開始
前職でやりたいことに取り組む中で、この手の綺麗事をサービスとして実装し、スケーラブルなビジネスにしていくには、会社そのもののミッションとシンクロさせる(会社ごとつくる)必要があると確信した私は、またまた同様のアーリーフェーズのスタートアップに絞って場探しを行いました。
その活動結果としてLiBを選んだということは冒頭に書いた通りなので、ここではLiBのいる「人材業界」を選んだ理由について少し補足します。
人材業界という業界には元々興味はありませんでしたが、
個人と企業、どちらの立場でサービス利用しても違和感を覚えた経験があるので、改善の余地が大きいのでは?
ヒトを扱うものづくりをしたい自分にとっては、うってつけの業界なのでは?
ということも決断の背景にありました。
また、LiBの「人材業界」✕「女性」というアプローチについても考えましたが、働く女性が負を抱えていること、日本のジェンダーギャップ問題が解消すべきものであることは明らかでした。
自分が「働く人を幸せにしたい」と本気で思っているのであれば、まずはここに顕在化しているニーズを満たすべきではないのか?ここに背を向けて「やりたいアプローチと違う」と他社を選ぶのは、本気でそう思っていないからではないのか?そういう自問自答をしたことを鮮明に覚えています。
以上を踏まえ、自分がやりたいことをLiB@人材業界バージョンに少し更新しました。当時の脳内はこちら↓。
とは言え、新参者がいきなり自分のやりたいことを押し付けるわけにはいかないので、上記はあくまで自分の脳内に留めつつ、適切な機会を見つけては、少しずつジャブを打つようなことをしていました。
当時のジャブの例↓。
逆走停止→再出発
2018年10月にジョインしたものの、その時点のLiBは明確に逆走(=成し遂げたいミッションとは反対方向に向かって走っている)状態だったので、ミッション実現に向かってまっすぐ進めるようになるまでに半年以上かかりました。
無理ゲー化していたIPO計画を断念し、ミッションも経営方針も経営メンバーも組織も事業も、あらゆるものを作り直す動きを開始したのが、2019年6月です。(このあたりは別記事で詳しく書いているので、興味がある方はぜひご一読お願いします。)
このタイミングで、「仕事におけるジェンダーギャップを減らす」手段として、世の中の人材系企業がやっているような転職/採用支援だけ(をより乏しいリソースで)をやっていてもダメではないか、という議論も堂々とできるようになりました。
ジェンダーギャップを減らすには、個人と企業の認識と行動を変えないとダメですよね
ただ、LiBのような小さなスタートアップが「変えろ」と叫ぶだけで変わるほど簡単な問題じゃないですよね
なので、LiBの主張に説得力を持たせるためには、ちゃんとデータを収集・蓄積・活用できるようにならないとダメですよね
・・・というロジックで、LiBがやりたいことに少し自分の思想を混ぜ込んでみました。具体的には↓な感じです。
新規事業のフリをした仕込み
こうして、松本を始めとする経営メンバーとは少しずつあるべき姿について議論ができるようになったものの、再出発を決めたLiBがまずやることは「これまで言ってきたことを正しく実行する」ことなので、会社全体としては従来通りのシステムで、従来通り「女性の転職/採用を支援する」活動を進めていました。
そのため、前述のような構想は、新規事業という体で、私の片手間&別働隊で仕込みを進めることになりました。もちろん、別働隊を作れるようなリソース的余力は全くなかったので、ほぼ社外の協力者(週3稼働や副業など)で構成されたチームでした。
表向きには新規事業を作っている風、一方でその狙いは前述の図、ひいては下図のような自分の構想をシステムに落とし込むという極めて難易度の高い作業でしたが、プロフェッショナルと呼べる方々に集まっていただけたおかげで着実に進めることができました。
作っているものの抽象度が極めて高かったため、当時は「いったい、LiBは何がやりたいんだろう・・・?」と思っていた方も多いと思うんですが、そんな不満をこぼすこともなく、都度私が出す開発方針を着実にモノにしてくださった皆様には心から感謝しています。
本当の再出発
2020年に入りコロナ禍スタート、それを受けてLiBも馬なりで進めていた改革を加速する決断をします。ただ生き延びるだけではなく、何のためにLiBが存在しているのか、そのために何をやるべきなのかを徹底的に議論して、経営方針をよりシャープにしました。
何となく再出発をしていたLiBが本当の意味で生まれ変わり、現在に繋がる経営方針や体制がちゃんとできあがったのは、この2020年6月です。
組織も縮小、採用も完全凍結し、社員は減る一方という苦しい時期が1年ほど続きましたが、新しい方針を信じて付いてきてくれた社員のおかげで、なんとか新生LiBの運営を軌道に乗せることができました。
新規事業のフリをして仕込んでいたシステムも、このタイミングで表舞台に登場させ、創業以来使い続けたシステムの全置き換えを敢行しました。このあたりでプロダクトチームには、
ではなく、
がLiBが目指すべき構造であることを理解してもらえるようになりました。
シンクロ率向上
そしていよいよ採用も再開できる状況になったんですが、ふと困ったことに気づきます。今のLiBの「旗」=LiBがやっていること&やりたいことに共感してくれる方がどれくらいいるのだろうか、と。
幸い、エージェント系職種に関しては「ジェンダーギャップ解消」「女性支援」という旗と「女性の転職/採用支援」というアプローチに共感してくださる方が一定数存在したため、そこまで問題にはなりませんでした。
一方で、それだけでは「よくある人材紹介業の女性特化版」であり、エンジニアやプロダクトマネージャーといったLiBに不足しているが今後の成長に欠かせない職種の方々の共感が得られるイメージが湧きませんでした。
スカウトに反応してくださった希少な人材を、自分自身が面談してアトラクトして、ようやく応募に漕ぎ着ける・・・という作業を繰り返す以上、自分が主語で堂々と語れるものにするしかない、と開き直り、以下のような資料を突貫で作って活動を開始しました。
本記事をここまで読んでくださった方には理解いただけると思いますが、もともと自分がやりたかったこととLiBがやりたいことのシンクロ率を上げた表現になっています。
これまで同様のフォーマットで構造化すると↓のようになります。
前述の資料は、私が勝手に作ったプロダクト人材向けの採用資料だけに存在していたものでしたが、その後LiBの会社紹介資料にも(より綺麗なデザインで)転用されました。
自分の主観で始めたものが、自然と採用された→社内でも客観的に「アリ」だと評価されたことで味をしめた私は、社内でもことあるごとに「客観視」というキーワードを使うようになります。
例えば↓は代表松本へのメッセージですが、LiBという会社自体が、自分のような新メンバーや、諦めずに残ってくれた社員からの客観視をきっかけとして生まれ変わってきた経験を共有しているため、ほぼツーカーで認識が揃うようになってきました。
現在LiBにいる理由
2021年10月、「女性のライフキャリアを豊かにする仕組みをつくる」というミッションが「一人の可能性をどこまでも活かせる仕事のカタチをつくっていく」というミッションに更新されました。
前述のやりたいこと構造図では、
の右端の矢印の部分に苦しさがあった(※)のですが、新ミッションになったことで下図のように綺麗に繋がるようになりました。
※:LiBの長年の活動において、「変化に対応する」目的が「ジェンダーギャップの解消」だけだと意欲的に取り組む企業が少ないことがわかっていた。
また、こうしてLiBの事業活動の目的が明確に定まったことで、手段としてコツコツ育ててきたことが自然と繋がっていきます。
転職/採用という活動は、個人/企業が否応なく客観評価に晒される機会であり、個人/企業の認識と行動をアップデートする機会としてうってつけである
個人の例:元々興味がなかった業界・テーマでも、熱意を持って取り組んでいる「中の人」と話すことで一気に興味が芽生えた
企業の例:幹部人材の採用競争に負ける機会が増えたため、リモートワークや副業などの制度充実を進めることにした
転職/採用活動の支援を通じて収集した個人/企業のデータを用いることで、個人/企業の認識と行動をアップデートすることができる
個人の例:地方移住を契機として転職した人が◯%増加しており、もはや特殊ケースとは言えなくなりつつある
企業の例:◯◯職の採用に成功している企業の◯%は、◯◯制度が充実しており、もはや常識的制度になりつつある
これを図で表現すると、↓のようにぴったりピースが埋まることがわかります。
脳内に↑の図の構造が明確に出来上がってから、会社説明時に「LiBは今は転職/採用サービスをやっている人材系企業なんですけど、将来的には・・・」という表現をすることを止めました。
LiBは、個人と企業を客観視し、その認識と行動をアップデートすることで、新しい仕事のカタチをつくっていくことを目指しています。
その認識と行動をアップデートする機会として、転職/採用という場をフル活用しています。
これを、「LiBがやりたいこと」としてではなく「自分がやりたいこと」として語れるようになったことが、現在LiBにいる最大の理由だと思います。
まとめ
会社として発信を再開するにあたり、まずは今後数年で変わらなそうな普遍的なことを書こうと思ったので、抽象的な表現が多くなってしまいました。
ただ、こういった「ヒト」「仕事」「働き方」といった領域に興味をお持ちの方であれば、いちいち具体的なことを書かなくても、理解・共感していただける部分があるのではないかと思っています。ピンと来た方はぜひ一度お話しましょう。本投稿に対するフィードバックも大歓迎です。
また、筆者へのインタビュー記事を併せて読んでいただくと、なぜこういう思想になるのか、どうやってこれを実現しようとしているのか、といった部分も少し垣間見えると思います。
今後新生LiBとして様々なサービスを世に届けていくことになりますが、それらの根底思想にはこういったものがあることを、頭の片隅に入れておいていただけると幸いです。
長文を読んでいただき、ありがとうございました!
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