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「介護booksセレクト」㉔『心の病気はどう治す?』

 いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。
 おかげで、こうして書き続けることができています。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/ 公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。


「介護books セレクト」

 当初は、いろいろな環境や、様々な状況にいらっしゃる方々に向けて、「介護books」として、毎回、書籍を複数冊、紹介させていただいていました。

 その後、自分の能力や情報力の不足を感じ、毎回、複数冊の書籍の紹介ができないと思い、いったんは終了しました。

 それでも、広く紹介したいと思える本を読んだりすることもあり、今後は、一冊でも紹介したい本がある時は、お伝えしようと思い、このシリーズを「介護booksセレクト」として、復活し、継続することにしました。

 今回は、一見、介護のこととは関係ないような書籍に思われるかもしれませんが、特に介護の専門家として、支援職として働かれている方には、知っておいた方がいいのではないか、と思い、紹介されてもらうことにしました。

精神科医

 介護に専念し、介護者にこそ心理的支援が必要と考え、自分でも支援に関わろうと思い、介護を続けながら、臨床心理士の資格を取るために大学院に入るまでは、精神科医のイメージはそれほど豊富ではありませんでした。

 母親の介護をしているとき、とても救われたと思う精神科医の人もいれば、母親の症状の変化によって言うことがかわる人がいて、なんだかぐったりしたこともあったし、完全に信頼できないけれど、不信感を抱くまでいかない医師もいました。

 もちろん、私は患者ではなく、母親が当事者であったので、患者の家族としての見方しかできませんでしたから、医師に関して、どこまでわかっていたのかは、自分でも不明でした。

 だけど、何かあって、自分自身が精神疾患になった時、診察してほしい、と思えるほどの医師には残念ながら会うことはできないまま、介護をしていました。

 その後、家族介護者にこそ心理的支援が必要と痛感するようになり、その支援に自分でも関わりたいと考え、介護を続けながら臨床心理士の資格を取得しようとして、大学院に入学しました。そこには講師として、もしくは、事例検討会のときにコメンテーターとして、精神科医の方々が教壇に立つことがありました。

「優しくなければ、この世界に入ってきてはいけない」。

 そんな言葉を、大きな声ではないけれど、確かに断言していた行動療法で著名な医師の方がいました。もう何十年ものキャリアがあるはずなのに、そうした言葉を真っ直ぐに話す姿を見て、この世界に入ろうとしていて、正解だと思いました。

 40歳を過ぎて学生になった人間ですから、多少、屈折してるとは思うのですが、そうした人間から見ても、初心を忘れていないし、言葉の端々から本当に患者のことを考えているのが伝わってきたからです。(学生としては生意気な言い方になってしまいますが)。

 こうした人が、「権威」のある人とも見られていたので、偉そうな言い方になってしまうのですが、臨床心理学の世界では、優れた精神科医の基準がしっかりしているように思え、だから、頑張って学ぼうと言うような気持ちになれました。


 医師であり、大学教授であり、研究者でもあるのに、講義の中では学生を相手に本気で議論をするような人もいました。とても誠実だと思えましたし、それだけ臨床の仕事は真摯に取り組む必要があることを、身をもって示してくれているように感じ、ありがたい気持ちになりました。


 毎回、レジュメが増えていき、個人的にはとても理解できないほどの圧倒的な情報量が注がれる講義をしてくれる医師がいました。質問に対しても、とても丁寧に答えてくれて、それは結果として、さらに情報量が増えることになるのですが、そこに真剣さを感じました。


 こうした精神科医の方々であれば、自分が臨床心理士の仕事を始め、もし、クライエントの方に通院を勧めた方がいい場合に、安心して紹介できるのに、と思っていました。

 ただ、その勤務場所が遠かったり、こうして講師として、もしくは研究者としての仕事もあると思われたので、臨床に割く時間も限られているでしょうし、診察までに時間がかかるということも考えられそうでした。

 それでも、自分の理解力が未熟とはいえ、学生時代に、信頼できる医師がいると思えたのは恵まれたことだと思います。

紹介

 2024年には、臨床心理士の資格を取得してから二回目の更新を迎えたので10年が経とうとしています。公認心理師は、2019年に資格取得をしたので、5年が過ぎようとしています。

 その間、前半の5年間は、自分も介護をしながら仕事をしていましたし、ここ4年はコロナ禍で持病を持つ家族がいることもあって感染しないことを目標に過ごしてもいましたので、仕事を増やすのがより困難な状況でした。

 さらには、クリニックや病院での勤務がなかったせいもあって、医師の方と知り合う機会も少なかったように思います。それでも、優れた精神科医の方々がいることを知ったのですが、やはり遠方であったり、児童や高齢者などの専門医の方がほとんどでした。

 ですので、自分の勉強不足や経験の足りなさもあるのですが、精神科医を紹介したり、案内したりするような場面があったときに、どうすればいいのか、はっきりとわからないこともありました。

 それでもいろいろと調べたり、人に聞いたりはしているのですが、自分が直接存じ上げている精神科医は少ないので、本当に自信をもっておすすめすることも難しかったかもしれません。

 10年経って、そんな状況であることは、やはり少し恥ずかしいことでもあると思っています。

『心の病気はどう治す?』  佐藤光展 

 そういうときに、「精神医療界のオールスター」という謳い文句で書籍が出されることをラジオを聞いていて知り、やはり気になって読んでみました。

 その冒頭部分で、医療ジャーナリストの著者が、おそらく多くの精神科医を知った上で書いている内容を読んで、やはり、どの分野も同じなのですが、とても優秀な医師がそれほど多くはないことを知り、また、個々人の能力や工夫や努力とは別に、構造的にも精神医療界が厳しい状況にあるのを、改めて感じました。

 仕事をしていて、それでもいろいろな方と知り合う機会はあって、そういう中で思っていたことと、一致するような課題が書かれていたので、やはり、病院やクリニックを紹介するときに、自分自身の経験不足だけではなく、戸惑うのも当然かもしれない、とも思いました。

 ただ、こうして、さまざまな医師の話を改めて読む機会があると、学生時代や、これまでに知り合った、誠実で有能と思われる医師と似たものを感じました。それは、支援職にも通じることが多いように思います。

 この書籍に登場する医師の方々の言葉に接すると、必要な場合は、ここにあるクリニックや病院を紹介したい思いにもなります。

 例えば、依存症の専門でもある松本俊彦医師が、患者に接するときには、「困った人」ではなく、さまざまな状況によって「困っている人」と見るようにしている話や、六番町クリニックが、病院の組織から再考することによって、長い診察時間を確保していることを知ると、自分自身は医師ではありませんが、心理的支援をする際に、まだ工夫の余地や、もっと考えることがあるのではないか、という思いになれます。

 精神科医について、もっと知りたいと思っている方や、人を支援することに対しても、改めて考えられる内容のように思います。


 今回は、介護と直接関係ないようにも感じますが、認知症というのは、精神疾患の部分もあるわけですから、精神科医療のことを少しでも知るためにも、おすすめできるように思います。

 今回は、以上です。


(結果として、文中に他にも推薦図書が並びましが、興味があれば、読んでいただければ、とも思っています)。



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