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湖嶋いてら
2020年6月10日 22:47
彼女は、重厚な一冊を差し出した。黒い表紙に題名は無い。そして、こんなのでゴメンね…と涙をこぼした。あんなに綺麗な雫を見たことはなかった。見惚れる私を前に、街灯が反射してきらりと光るそれを、彼女は服の袖で慌てて拭った。アメリカ留学・ノンフィクション──親友との別れ編 ∇∇∇彼女は、中学、高校と一緒に登下校してきた一番の存在だった。私は、彼女の前ではよく笑った。