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精神科医が教える、新社会人のためのメンブレ対策十ヶ条

この春卒業した学生の皆様、卒業おめでとうございます!3月も残すところ、あと4日…。きっと、新社会人となるための準備で、慌ただしい日々を過ごされていることでしょう。

中には、「新しい環境で、うまくやっていけるのだろうか...。」と不安になっている方もいると思います。

そんな新社会人の皆様に、是非お伝えしたいことがあります。

 私はこれまでに精神科医として、メンタル不調、いわゆる「メンブレ(メンタルブレイク)*」に陥った新社会人を数多く診察してきました。
一度メンブレに陥ると、なかなか回復せず、そのまま退職してしまう新社会人もおります...。したがって、メンブレ対策はとても大切です。

*この記事では、“メンブレ”という言葉を使っていますが、専門用語ではありません。

こんなことを書くと、「不安にさせないで!」とか「縁起でもない!」などと、怒られるかもしれません。

しかし、メンブレ対策は社会人として身につけるべき知識...。

エラスムスの格言に「予防に勝る治療なし」という言葉がありますが、まさにその通りなのです!

そこで今回の記事では、新社会人のための「メンブレ対策十ヶ条」を紹介したいと思います。

【一.不安なのは皆同じと思うべし】

新社会人の多くの方が、不安を抱いています。

「会社になじめるかな?」「仕事できるかな?」「上司・先輩とうまくやって行けるかな?」なんて思っているのではないでしょうか。

しかし、それは上司・先輩も同じです。

「(新入社員は)会社になじめるかな?」「(新入社員は)仕事できるかな?」「新入社員とうまくやって行けるかな?」

この時期の不安はお互い様。

時間が経てば不安は解消するので、しばらくはその不安を受け入れ、緊張感を楽しみましょう。

【二.分からないことは質問しよう】

分からないことを上司・先輩に聞くのは、新社会人の特権です。

分からないことがあれば、どんどん質問しましょう。

しかし、上司・先輩の中には余裕のない人、意地悪な人がいて、質問しても答えてくれない時もあります。

これはあなたのせいではありません。

「新人指導」という仕事ができない、上司・先輩の問題なのです。

だから、自分を決して責めないでください。自分を責めることは、メンブレにつながります。

ただし、何度も同じことを聞くのはNG。習ったことはちゃんとメモして、次に生かしましょう。

【三.挨拶をしよう】

挨拶はされると気持ちがいいものです。

特にフレッシュな新社会人から挨拶されると、その初々しい姿に「あぁ、自分にもこんな時代があったな…。」、と初心を思い出す上司・先輩も多いと思います。

また同期に挨拶をすれば連帯感が生まれ、何かあったときにお互い助け合いやすくなるでしょう。

挨拶は人間関係の潤滑油。そして、人間関係さえ上手くいけば、メンブレは起きにくいのです。

朝の「おはようございます!」ぐらいは、必ず言いましょう。

【四.日記をつける】

みなさんは日記をつけていますか?

日記とは自分の行動や気持ちを記録することですが、最近の研究によると、日記をつけることがメンタルヘルス維持に有効だそうです。

“日記”と聞くと、面倒と思われるかもしれませんが、3行日記でもOK

特に「嬉しかったこと」「楽しかったこと」「感謝したこと(されたこと)」などを中心に書くことをおすすめいたします。

【五.寝る】

睡眠時間の確保は大切です。なぜなら…、

睡眠不足 => 疲労が溜まる => 集中力の低下 => 仕事でミス =>叱られる => 自信喪失 => メンブレ…。

このように、睡眠不足はピタゴラスイッチのように、メンタルブレイクにつながっていくのです。

メンブレのピタゴラスイッチに陥らないよう、睡眠はしっかりとりましょう。

【六.食べる】

多忙な時は、ついつい食事を抜くことがありますが、これはいけません。

低栄養はうつ病のリスクを高めます。

うつ病のメカニズムとして“セロトニン”の低下が関係すると言われておりますが、このセロトニンは、食事によって補充できます。

セロトニンの原料となるトリプトファンとビタミンB6は、そば、乳製品、バナナ、大豆製品、卵、マグロ・カツオなどにに含まれています。

忙しい時には、バナナと牛乳はいかがでしょうか?

手軽に摂取でき、消化にも良いので、おすすめです。

【七.相談する】

仕事上なにか問題(トラブル)が生じた場合、まずは上司や先輩に相談しましょう。

一見簡単な問題であっても、未経験者が何かを行うのは、想像以上に困難なことがあります。

また、上司や先輩に相談しにくいことは、同期や社外の友人に相談しましょう。

“愚痴”になっても構いません。

悩みを聞いてもらうということは、メンタルヘルス上、とても良いことなのです。

【八.趣味を見つける】

没頭できる趣味をもつ人は、メンタルが強いです。

それは会社で嫌なことがあっても、趣味という逃げ場(=ストレス解消の場)があるからです。

趣味の好みは人それぞれ。

自分にあったストレス解消法を見つけましょう。

(精神科医がすすめるストレス解消法については、いつか別の記事で書きたいと思います)

【九.適度な運動をする】

運動はストレスを軽減する働きがあります。

運動の抗ストレス効果は、科学的に証明されており、運動によってうつ症状が軽減することが、多くの研究で明らかにされております。

先ほど紹介した、セロトニンという神経伝達物質(うつ病では低下する物質)の原料であるトリプトファンは、有酸素運動によって脳に取り込まれやすくなります。

さあ、運動によって脳のセロトニンレベルを高めましょう!

【十.休む**】

いろいろなメンタルヘルス対策をしても、メンブレに陥ることがあります。

「もう、無理…。」と思う場合は、上司と相談の上で休みましょう。

また、メンブレで長期間休む時は、診断書の提出が必要です。

その場合、近くの精神科や心療内科に相談しましょう。

**(有給休暇は、入職半年後からもらえる会社が多いので、この点は注意が必要です)


無理やり十ヶ条にした感はありますが、ここに挙げたことを実践すれば、そう簡単にはメンタルブレイクを起こすことはないでしょう。みなさまの参考になれば幸いです。

【この春卒業した学生の皆様へ】

最後に、この春卒業した学生の皆様にお伝えしたいことがあります。

皆様は、コロナ禍で辛い学生時代を過ごされた思います。

しかし、これは“コロナ禍という苦境に耐え抜いた”という、得難い経験でもあります。

苦境は人間の“底力(そこぢから)”を培います。

社会に出て、うまく行かないこともありましょうが、きっと大丈夫。

皆様には、底力がありますから!

【まとめ】

・新社会人のためのメンタルブレイク対策十ヶ条を紹介しました。
・コロナ禍を経験した皆さんには、底力があります。きっと、大丈夫!

【参考資料】

カロリーメイトCM 「見えないもの」篇 フルバージョン 森山直太郎-さくら(二○二○合唱)

https://www.youtube.com/watch?v=gX2YMXVxkhI

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