川崎英樹(Hideki Kawasaki)

【職業】 経営コンサルタント(中小企業診断士 MBA) 商いジャーナリスト 【キャラ】…

川崎英樹(Hideki Kawasaki)

【職業】 経営コンサルタント(中小企業診断士 MBA) 商いジャーナリスト 【キャラ】 超がつくポジティブ人間  【仕事観】 愉しくなければ仕事じゃない  【好きな作家】 北方謙三 司馬遼太郎 etc. HP http://www.eichi-con.com

マガジン

  • 逆転の旗を掲げ

    「人生は逆転できる!」親友が言った…。 高度成長期の九州熊本、大阪が舞台。心に傷を持つ少年が、信じる気持ちを育みながら、大人として成長していく姿を描く。友情とは…?恩師とは…?家族とは…?支え支えられてでっかく生きる男の物語。

  • 彼方なる南十字星

    舞台は高度成長期の九州熊本。3人のしがない高校生が、夢を誕生させ、夢を育み、夢を実現させて、大人として大きく成長していく。3人で叶える「自作ヨットで太平洋を渡り、南十字星を見にいく!」夢。壮大な夢を命がけて叶える、元気と勇気をもらう実話にもとづく物語です。

最近の記事

一匹狼  『逆転の旗を掲げ』

 得物は、トンファーだった。  この武具は、拳から肘までをガードできる。そして、攻撃にも使える代物だ。 よほどのことがない限り、南野悠太はこちらから仕掛けることはしない。ただ、売られた喧嘩は必ず買う。相手が卑怯な手を使ったときは、また別だ。今回もそうだった。 「案の定だな……」悠太は呟いた。 タイマンだと言って吹っかけてきやがったくせに、5人だと……。 「先輩……。一対一の勝負だと言ったじゃないですか……?」悠太が言っても、向こうはなしのつぶてだ。 あいつが高山だな。

    • プロローグ  『逆転の旗を掲げ』

       羽田空港に降り立った。ハワイからだ。  1980年10月である。  常夏のハワイと違って、日本は肌寒い季節に入っていた。  南野悠太は、擦り切れたジーンズに上着はジャージという服装だった。荷物といえば、ダークブラウン色のスウェードボンサック。同じ便で降り立ったアメリカ人が、異様な目で悠太を見る。髭だらけの顔にそんな服装なら無理も無い。 「そんな目で見るなよな……」悠太は怪訝そうにそのアメリカ人を見返した。一度到着口を出て、すぐに大阪伊丹行きの搭乗口に向かう。 「イ

      • エピローグ 『彼方なる南十字星』

        湯島に向かうドルフィン二世号の舵輪を握りながら、私はトニーのことを想っていた。 数日前のことだ。トニーのお姉さんのエミリーとSNSで繋がった。便利な世の中になったものだ。 そこで、私は悲しい事実を知った。 20年前に、トニーが亡くなっていたということだった。癌だったらしい。 トニーとの手紙のやり取りは、いつの間にか途絶えていた。 トニーは最後まで、南太平洋の航海に誇りを持ち、もう一度ヨットで大海原を駆け回りたいと話していたそうだ。 亡くなったのは45歳。まだ若くし

        • プロローグ 『彼方なる南十字星』

          早朝6時、夜明け前。 ドルフィン二世号のエンジンをスタートさせる。 およそ40年前に造船された船にしては、まだまだ現役で波を切ってくれる相棒だ。 30フィート、12人乗りのロートルヨットが、私の親友である。舫をとき舳先に飛び乗った。 今年で65歳を数える私でも、ヨットに乗る時は若々しい血潮が漲るものだ。 シフトをバックに入れて、静かに動き出す。最近の11月上旬の朝は、以前ほど寒くはない。 私が、冒険者だったころは11月に入ると霜が降り、吐く息も真っ白になるほどの気

        一匹狼  『逆転の旗を掲げ』

        マガジン

        • 逆転の旗を掲げ
          2本
        • 彼方なる南十字星
          55本

        記事

          【最終話】夢のあと  『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。最終回*** 太平洋周航の旅から7年が経った。僕は33歳になっていた。 昨日、3人目の子供が生まれた。女の子だ。僕は5年前に結婚し、家庭を持った。 この7年間は必死に働いた。必死だったが充実した毎日だった。 だが、ヨットに乗る暇など全くなかった。 河合百合子が亡くなったと聞いたのは、旅から戻った1年後だった。乳がんということだった。発見されたときは、すで

          【最終話】夢のあと  『彼方なる南十字星』

          【第52話】夢は叶う…  『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** 6月上旬。航海は終わりに近づいていた。ホライズン号は、グアムを抜けて沖縄を目指している。 当初は、熊本の三角港に帰国する予定だったが、僕にはどうしても沖縄に行きたい理由があった。 翔一に無理を言い、トニーに訳を話した。 「沖縄戦の慰霊をしたいんだ。」 「そうか、いいと思うよ。こういう機会だからこそ、行くべきなのだろう。」翔一は相変わらず、僕の理解者

          【第52話】夢は叶う…  『彼方なる南十字星』

          【第51話】Our Turning Point!  『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** フィジーは素敵な国だった。中国系の移民とインド系の移民が多い。 そのため、多くの飲食店も中華料理やカレーのような食べ物を出してくれる。 僕たちは、カレー料理や本格中華を味わうことができた。 何よりも綺麗なビーチ。シュノーケリングを愉しみ、落ちているヤシの実を割り、天然のココナッツジュースで喉を潤す。 まさに楽園だ。現地の人も優しかった。有名なカバの

          【第51話】Our Turning Point!  『彼方なる南十字星』

          【第50話】Big geme!トニー  『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** サモアを後にした。次の目的地はフィジーである。 フィジーに向かう途中で、1月21日になった。誕生日を迎えたのである。僕は26歳になった。 夢の誕生から10年以上経過したことになる。 僕はこうして夢を叶え、南太平洋を航海している。 「英希。誕生日おめでとう。夢を叶えて誕生日を迎えるとは、お前らしいな。」翔一が言う。 「ハッピーバースデー!」トニーか

          【第50話】Big geme!トニー  『彼方なる南十字星』

          【第49話】肩車…そして、サザンクロス  『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** この頃には、僕たちの天測の腕も上がってきた。かなり正確に、ホライズン号の位置を割り出すことができる。 通常は正午と午後2時に天則し、現在地を割り出す。 目的地が近くなると夕方だ。まだ水平線が見える頃、星を3点計り、海図上に三角形を描く。その中心点が船位置なのだ。 南半球に入ってから、曇り空が続いていた。時折遭遇するスコールはありがたかったが、カラッと

          【第49話】肩車…そして、サザンクロス  『彼方なる南十字星』

          【第48話】神の島と夢のかけら  『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** エンジンの音と振動が不快だ。それに暑い。キャビン内の温度計は、37度を指している。 とても暑いが、機走で少しでも走っているため、いくぶん風を受ける。だが体温に近く、心地いいとは言えない。 丸2日。ひたすら南下した。どれだけ走っただろう。いつまでたっても、風は吹かない。 機械的な動力がなかった大航海時代、この辺りは地獄だったに違いない。 燃料が持つ

          【第48話】神の島と夢のかけら  『彼方なる南十字星』

          【第47話】赤道無風帯を突っ切れ! 『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** 新たな3人でハワイを出港した。目的地はサモアだ。この航路で、南半球を超えることになる。 いよいよこの目に、南十字星を焼き付ける瞬間が訪れるのだ。 僕の高揚感は半端なかった。 10年以来の夢の実現に肉薄している。そういう自分に気付いていたからだ。 サモアには二つの島がある。西サモアと東サモアだ。東サモアは当時も今もアメリカ領である。 違う文化に少し

          【第47話】赤道無風帯を突っ切れ! 『彼方なる南十字星』

          【第46話】人間とやさしさと… 『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** 僕たちは、南太平洋に向けた出港日を3日後に決めた。10月5日だ。 食糧の積み込みをしていた時だ。トニーがホライズン号にやってきた。 「やあ、トニー。」 「……。」返事がない。いつもの陽気なトニーと少し違う。 「元気ないな。どうしたんだい?」翔一が言う。 「二人に聞いて欲しいことがあるんだ。」 「何だい?あらたまって。」僕は、努めて明るく振る舞

          【第46話】人間とやさしさと… 『彼方なる南十字星』

          【第45話】友…Catch you later. 『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** アラワイ・ヨットハーバーのホライズン号に戻った。裕太も翔一も、笑顔で迎えてくれた。 「大変だったな。だが治って良かった。」翔一の言葉に救われた。 裕太も喜んでくれたが、何か様子がおかしいことに気づかない僕ではなかった。 「話があるんだ。」裕太が、荷物を整理している僕に声をかけて来たのは、翌日のことだった。 曇り空で、ハワイ特有の青い空が見えない。

          【第45話】友…Catch you later. 『彼方なる南十字星』

          【第44話】祖国、故郷、かけがえのない人 『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** 時間の経過がすこぶる遅い。やっと少しずつ痛みが引いてきた。 僕は、東子が綴ってくれた治療ノートを開いた。 「腹痛。腹痛は場所によって症状が違う。鳩尾は胃痛。臍の下は下痢。臍の下右側あたりは虫垂炎。つまり盲腸ですね♡」と記されている。 僕は自分の腹部を触診してみた。臍の右側あたりを押すと、痛みがある。 「盲腸かな?」そう呟いた。「医者に診せるしかない

          【第44話】祖国、故郷、かけがえのない人 『彼方なる南十字星』

          【第43話】グリーンフラッシュを見たかい 『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** トニーはハワイ大学の3年生だった。建築工学を専攻しているという。ホライズン号を見て、「Fantastic!」と叫んだ。 ハンドメイドでホライズン号を作った僕たちに、トニーはとてつもない親近感を抱いてくれたようだ。 キャビンに入り、コーヒーを入れた。トニーは、ホライズン号が僕たちの自作ヨットだということに、とても驚愕している様子だ。 製造方法や工程、か

          【第43話】グリーンフラッシュを見たかい 『彼方なる南十字星』

          【第42話】貿易風を捉えて 『彼方なる南十字星』

          日本の高度成長期。自作ヨットを操り、命がけで太平洋を渡り、南十字星を見に行った3人の若者の実話にもとづく冒険物語。*** 第4章 ⚓️夢の約束⚓️ 季節は8月下旬になっていた。 僕たちはロサンゼルスを後にした。いよいよ憧れのハワイ航路だ。 ホライズン号は、ロスから少し南下しながら、一路ハワイを目指す。 貿易風帯を快適にセーリングするためだ。 貿易風帯。赤道付近より高い緯度を、東寄りに吹き込む風の帯である。太古から、貿易商をはじめとした船乗りが、帆船を操ってこの風帯を利

          【第42話】貿易風を捉えて 『彼方なる南十字星』