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建築塾の方の訪問 太田達と安藤忠雄 - 弘道館留学

しゃちょーの弘道館留学パート2

弘道館に出入りさせていただいていると、本当にさまざまな方がこの学問所であり、サロンに出入りされるのだなと感じております。この日は、京都鴨川建築塾の方々が20人ほど、弘道館に見学に訪問され、建物と庭の見学、及び、太田達先生の、建築空間と茶の湯の関わりなどのお話をされたのを、横で拝聴させて頂きました。

普段は、どっちかっていうと「建築塾」側に参加して、見学に来てそうなほうなので、迎え入れる側というのは少し新鮮でした。第1回で「庭の手入れ」をしていたのは、この方々を迎え入れるためだったのです。

冒頭の写真は、建築空間における床の間と掛け軸のお話をされている様子。鴨川建築塾の方々も、木造建築についての勉強会をされているので、よくご存じだと思いますが、太田先生や弘道館のみなさんの床の間の設えをみていますと、使う茶人側としては、床の間の可能性は本当に無限大。床の間ひとつが「ひとつの美術館」とも言えるし、この中で上下も最大につかってひとつの物語を込められる。しかも数百年の歴史を超えるようなストーリーを紡ぐことができるのです。ここまでを建築家側がわかっていることは多くないと思いますので、建築は「使う人次第」の部分が相当大きいなと思います。(これが、アーキテクトタイタンが建築デザインだけでなく、全領域を網羅しようとしている理由です)

さて、さすが太田先生という写真を1枚。敢えて画面がぼけた状態のものを掲載しましたが、建築家安藤忠雄さんの手がけた建築の中で行われている茶会。お客様は三宅一生さんというもの。太田先生曰く「安藤さんの建築は 茶室を感じる、とのこと」この様子を見られて、安藤さんも非常に感動されたらしく、その後、直島のタレルの展示されている寺など、いくつも茶会を開催されていきました。太田先生も安藤忠雄建築での茶会はその後もされたそうです。

国立新美術館で開催された安藤忠雄展のオーディオガイドは、安藤さん自らの声かつ、ぶっちゃけ満載という、非常に安藤さんらしいものでした。あのオーディオガイドが「展覧会」だったといっても過言ではありません(1/1スケールの光の教会とかがあったし、展示にかけられた手間暇もものすごいですが)

そのオーディオガイドの中で「代表作の住吉の長屋に自分が住むかといえば、住まない。大変やもん。お施主さんにも、がんばってや、っていうてる。自分の住まいはマンション。自分の建築に住むには、ものすごく覚悟と気合いがいる」っていうてるんですよね。つまり、快適とかそういうところとは別のところに、そもそもの価値をおいている。住まうことについての戦いや緊張感を前提にしている。これって、確かに茶室と共通する要素だと思います。

あと、大学の恩師で建築家の松岡拓公雄先生も、安藤さんとも三宅さんとも親交がある方ですが、松岡先生と同じく元アーキテクトファイブ共同主宰の建築家・城戸崎博孝さんは、自邸の設計を、安藤忠雄さんに依頼されています。展覧会にも模型(素晴らしい空間構成の豪邸です)と共に城戸崎さんのコメントもでていました。私は松岡先生を通じても聞いていましたが、「自分が設計すると家族で揉めるのもイヤだし、そして、何より安藤忠雄の作品、に住みたい」という言葉でした。

利休のひとつの象徴とされる、二畳敷きの「待庵」という茶室。これはミニマリズムとともに、緊張感と真剣勝負、という言葉に象徴されると思います。庭の花も全て摘み、葉っぱだけにしておき、茶室の中の花生けにのみ花を入れて際立たせたという話しも。

素晴らしい空間だし、とても尊い、貴い空間だけども、待庵に住むか?って言われたら、住みません(笑)しかし、修行とか、そこで工夫するのが楽しみと捉えれば、あり得るのだと思います。

ずっと安藤さんの建築(特に、小さな建築)において、そんな美学は、「戦う建築」として受け継がれていると思います。感じていましたが、茶人であり、その空間を使った太田達先生の言葉を聞いて、より認識を新たにしたところです。隈研吾さんが執筆された「負ける建築」と正反対の建築だなと思います。(とはいえ、隈さんの昔のデコンの顔は、また別の顔なのですが、その話しはずれるので今日はやめときます)

しゃちょーの弘道館留学は、新しい学びがあることはもちろん、これまでにやっていたことが、パズルのピースのように繋がっていくこともあります。刺激的な日々を送っています。

・第1回 社長の弘道館留学はじめました

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