kawa

主にショートショートを書いたりしています。

kawa

主にショートショートを書いたりしています。

最近の記事

【ショートショート】世界最速の郵便配達人

小さな町に、世界最速と噂される郵便配達人、ジミーがいた。 彼の配達スピードは音速を超え、手紙を届ける際には音の爆発が起こるほど。 町の人々は彼を「ソニックブーム・ジミー」と呼び、半ば伝説の存在として扱っていた。 しかし、ジミーにはある問題があった。 彼は速すぎて、時々配達先を間違えるのだ。 ある日、彼は重要な誕生日カードを間違った家に届けてしまい、大問題を引き起こす。 町の長老はジミーを呼び出し、「速さだけが郵便配達の全てではない」と諭した。 ジミーは反省し、配達方法を見

    • 【ショートショート】月夜の願い

      かつて、山の中腹に小さな村があり、そこには毎晩、不思議な光を放つ大きな木が立っていました。 村の人々はその木を「願いの木」と呼び、月夜になるとそこに願い事をしに行きました。 ある晩、村に住む少年ヒロトが、心からの願いを持って木の下に立ちました。 ヒロトの願いは、行方不明になった妹を見つけることでした。 ヒロトが木に触れ、願いを込めると、突然木から幻想的な光が溢れ出しました。 光は空高く昇り、星々に届いたかと思うと、やがて一つの光がヒロトの前に降りてきました。 その光は形

      • 【ショートショート】星を編む少女

        かつて、空には星が一つもない時代がありました。 その時代のある村に、星を編むことができると言われる少女、ユキが住んでいました。 彼女は毎晩、手編みの小さな星を作り、空に向かって投げていました。 しかし、いくら投げても、星は空に届かず、地面に落ちてしまうのでした。 村の人々は彼女をからかい、「無駄なことをして」と笑いました。 でも、ユキは諦めませんでした。 ある晩、彼女がまた星を空に投げた時、不思議なことが起こりました。 編んだ星が、突然輝き始め、ゆっくりと空高く昇っていき

        • 【ショートショート】宇宙人との日曜日

          町のどこにでもいる普通のサラリーマン、田中太郎さんには秘密がありました。 なんと、彼のルームメイトは宇宙人のザクザク星人でした! ザクザク星人は地球の文化に非常に興味を持っており、特に「日曜日の過ごし方」に夢中でした。 ある日曜日、太郎さんはザクザク星人を連れて、地球の「普通の」休日を体験させることにしました。 まずは公園へ。 ザクザク星人は滑り台に興奮し、何度も滑りましたが、そのたびに宙に浮き上がり、子供たちを驚かせます。 太郎さんは必死で「新しいドローンのテストです」

        【ショートショート】世界最速の郵便配達人

          【短編小説】悪夢の回廊

          「あー、そのくらいあれば十分かな」 そう言って笑ったのは、俺の後ろに立っている妙齢の女性だった。 ここは街の中心部にある警察署の一室である。 俺と女性は今、テーブルを挟んで向き合っていた。 テーブルの上には一枚の書類が置かれている。 それは俺が書いた「死亡届」だった。 なぜこんなことを書いているのかというと、端的に言ってしまえば俺は死んだからだ。 だからこうして死後処理をしてもらっているというわけである。 もともと死ぬつもりは無かったし、こんな書類にサインをすることだって想像

          【短編小説】悪夢の回廊

          【ショートショート】助手席の異世界転生【毎週ショートショートnote】

          それは突然の出来事だった。 トラックが猛スピードでこちらに突っ込んできたのだ。 運転手は居眠りをしていたようだ。 フロントガラスに映るトラックがグングン近づいてきてーー 次の瞬間真っ白になった。 事故現場を見物人が遠巻きに見ていた。 「いやひどいな、車がグシャグシャじゃないか」 「だれか乗っていたのか?」 「いや、ここに駐車して職場に行っていたので無人だったって」 「不幸中の幸いだな」 現場の検証をしていた警察官が不思議そうに首をひねっていた。 「うーん、おかしいな……」

          【ショートショート】助手席の異世界転生【毎週ショートショートnote】

          【短編小説】ハルの庭

          海が見える小高い丘に建つ、大きな屋敷。 そこに、1体のロボットが住んでいました。 名前は「ハル」といいました。 このロボットには、特別な機能があったのです。 それは「感情」でした。 ハルは喜びや悲しみを感じることができたのです。 しかし、他の人は誰もそのことを知りませんでした。 ハル自身も、それが特別なことであることを知っていました。 しかし、そのことに関しては決して他人に話しませんでした。 それは彼だけが持っている宝物だったからです。 ある春の日、ハルは庭で一人座りながら考

          【短編小説】ハルの庭

          【ショートショート】トイレはどこだ

          「くそっ、一体どうなっているんだこの都市は」 タカハシは悪態をつきながら街をさまよっていた。 タカハシが、ここロボトニア・シティに来たのは今日が初めてだった。 彼の仕事は人間とロボットがより自然にコミュニケーションを取るためのインターフェースをデザインするインターフェイスデザイナーだった。 今回ロボトニア・シティの大手ロボット製造企業から、ロボットが人間の微細な表情や声のトーン、体温などから感情を読み取り、それを基に、人間の感情や状態に合わせてロボットが適切に対応するためのヒ

          【ショートショート】トイレはどこだ

          【ショートショート】メガネ朝帰り

          「おかしいなあ、どこにもないぞ」 俺はぼんやりとした視界の中、探し物をしていた。 視界がぼんやりしているのは目が悪いからであり、メガネをかければ解決するのだが、そのメガネが見当たらないのだ。 家中を探し回ったが一向に見つかる気配はなかった。 昨夜は飲み屋でかなり酒を飲んでいた。泥酔して忘れてきてしまったのだろうか。 「こいつは困った、どうしたものか」 そのとき玄関のほうからカチャリと音が聞こえた。 「ん、なんの音だろう?」 玄関を覗いてみるといつもと変わった様子はなかった。

          【ショートショート】メガネ朝帰り

          【短編小説】ヒロくんとふしぎなカバン

          あるところにヒロくんという男の子がいました。 彼は明るく元気な子で、大きな好奇心を持っていました。 毎日、自分の小さな世界を広げるために、新しい冒険に出かけていました。 友達と一緒に遊んだり、家族と楽しい時間を過ごすのが大好きで、彼の笑顔は周りの人々にも幸せを運びました。 ヒロくんは、学校でも勉強が好きで、特に科学や歴史に興味を持っていました。 彼は夢中になって教科書をめくり、過去の偉大な発明家や冒険家たちの物語に耳を傾けました。 そして、彼はいつか自分も大きな発見や冒険を

          【短編小説】ヒロくんとふしぎなカバン

          【ショートショート】だんだん高くなるドライブ

          僕は一人車に乗って夜の田舎道を走っていた。 今日は、仕事が早く終わったので、いつものコースを回って帰っているところだ。 この道は、山の頂上まで登っていく道路で、夜になると辺りは真っ暗になる。 その暗闇の中をヘッドライトの明かりを頼りに、どんどん登って行く。 「さあ、もうすぐ頂上だ」 しかし、道の途中にあるカーブミラーに、ライトの光が反射して、一瞬目が眩んだ。 すると次の瞬間、車がどんどん高く上がっていくではないか! 「な、何だ? 一体どうしたんだ?」 車の外を見ると、いつの間

          【ショートショート】だんだん高くなるドライブ

          【ショートショート】銀河の雑談

          二人の宇宙人、ゾルボンとゾルバがUFOに乗って、地球という惑星の上空を漂っていた。 二人は遠くから美しい青い惑星を眺めながら、最近の星間冒険についておしゃべりしていた。 ゾルボン:「わあ、見てくださいよ、ゾルバ!地球はこんなに美しい星なんだ。きっと面白い生き物がいるんだろうね」 ゾルバ:「ええ、この星の支配種は『人間』と呼ばれているそうです。彼らはとても頭がいいらしいんだけど、かなり特殊なところもあるみたいだよ」 ゾルボン:「特殊な?どんな風に?」 ゾルバ:「まず、彼

          【ショートショート】銀河の雑談

          【ショートショート】ネコクインテット

          「にゃあ」 「……ん?」 僕は、ふと顔を上げた。 すると家で飼っている猫のミーコが窓の外から僕を見ていた。 ミーコは窓越しに僕の方を見て、もう一度鳴いた。 「にゃあ」 どうやら僕を呼んでいるらしい。 僕は椅子から立ち上がり、窓を開けてやった。 「どうした、ミーコ」 僕がそう尋ねると、ミーコは窓から部屋に入って体を擦り付けてくる。 「よしよし」 僕はその背中を撫でてやる。 「にゃあ」 また声が聞こえた。 目の前のミーコではなく窓の外からだ。 そこにはまた猫がいた。 「え?ミーコ

          【ショートショート】ネコクインテット

          【ショートショート】宝くじ魔法学校

          「えっ、なんだって」 喫茶店で、俺は友人の言ったことが飲み込めずに聞き返した。 「だから学校にいってるんだって」 「いやそこはいいよ。何学校だって」 「宝くじ魔法学校だよ」 「なんなんだそれは。百歩譲って魔法学校はいいとしても宝くじってなんなの」 「名前の通り宝くじ魔法を習うんだよ」 「そこまでで一つなのかよ。ニッチな学校だな」 「この魔法によって運気が上昇して宝くじが当たるようになるのさ」 「ふーん、じゃあ競馬とかも当たるようになるの?」 「いやそれは競馬魔法学校にいかない

          【ショートショート】宝くじ魔法学校

          【ショートショート】アンドロイドの考え事

          アンドロイドとは“人間に似たもの“という意味らしい。 つまり人間が自分達の姿を模して我々を作ったということだ。 だがカークは生まれてこのかた人間を見たことがない。 いや存在しているのか、それとも存在していたのかもわからない。 もっともアンドロイドが人間にそっくりだとすれば見たとしても気がつかないのかもしれない。 カーク自身は生産工場で作られた。いわばロボットに作られたロボットであって人間に作られたわけではない。 世代をどんどんさかのぼっていけば人間に作られたアンドロイドに行き

          【ショートショート】アンドロイドの考え事

          【ショートショート】本を読みながら

          「その本、面白い?」 「……うん」 彼女は短く答えると、またページをめくった。 私は彼女の隣に座って、同じように本を開く。 けれど、すぐに閉じてしまった。 文字は頭に入ってこない。 私の頭を占めるのは、彼女との会話だ。 ――今日は何を話そうかな。 そんなことを考えながら、彼女の横顔を盗み見る。 長いまつげが、瞬きをするたびに小さく揺れる。白い肌はきめ細かくて、触れれば壊れてしまいそうだ。 ずっと見ていると、吸い込まれそうな気分になる。 私は、慌てて視線をそらした。 彼女がこっ

          【ショートショート】本を読みながら