見出し画像

【ショートショート】月夜の願い

かつて、山の中腹に小さな村があり、そこには毎晩、不思議な光を放つ大きな木が立っていました。
村の人々はその木を「願いの木」と呼び、月夜になるとそこに願い事をしに行きました。

ある晩、村に住む少年ヒロトが、心からの願いを持って木の下に立ちました。
ヒロトの願いは、行方不明になった妹を見つけることでした。

ヒロトが木に触れ、願いを込めると、突然木から幻想的な光が溢れ出しました。
光は空高く昇り、星々に届いたかと思うと、やがて一つの光がヒロトの前に降りてきました。

その光は形を変え、ヒロトの妹の姿になりました。
ヒロトは驚きと喜びで妹を抱きしめました。
しかし、妹は「私はもうこの世のものではない」と言いました。
「でも、願いの木が私に最後の別れを告げる機会をくれたの。」

妹はヒロトに、彼女が事故で亡くなったこと、そして今は星の国から彼を見守っていることを告げました。
そして、「いつかまた会いましょう」と言い残し、再び光となって空へと昇っていきました。

ヒロトは悲しみながらも、妹との再会に感謝しました。
そして、願いの木が村の人々に希望と慰めを与え続けることを知り、心から木に感謝しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?