記事一覧
【短編小説】悪夢の回廊
「あー、そのくらいあれば十分かな」
そう言って笑ったのは、俺の後ろに立っている妙齢の女性だった。
ここは街の中心部にある警察署の一室である。
俺と女性は今、テーブルを挟んで向き合っていた。
テーブルの上には一枚の書類が置かれている。
それは俺が書いた「死亡届」だった。
なぜこんなことを書いているのかというと、端的に言ってしまえば俺は死んだからだ。
だからこうして死後処理をしてもらっているというわけ
【ショートショート】助手席の異世界転生【毎週ショートショートnote】
それは突然の出来事だった。
トラックが猛スピードでこちらに突っ込んできたのだ。
運転手は居眠りをしていたようだ。
フロントガラスに映るトラックがグングン近づいてきてーー
次の瞬間真っ白になった。
事故現場を見物人が遠巻きに見ていた。
「いやひどいな、車がグシャグシャじゃないか」
「だれか乗っていたのか?」
「いや、ここに駐車して職場に行っていたので無人だったって」
「不幸中の幸いだな」
現場の検
【ショートショート】トイレはどこだ
「くそっ、一体どうなっているんだこの都市は」
タカハシは悪態をつきながら街をさまよっていた。
タカハシが、ここロボトニア・シティに来たのは今日が初めてだった。
彼の仕事は人間とロボットがより自然にコミュニケーションを取るためのインターフェースをデザインするインターフェイスデザイナーだった。
今回ロボトニア・シティの大手ロボット製造企業から、ロボットが人間の微細な表情や声のトーン、体温などから感情を
【ショートショート】メガネ朝帰り
「おかしいなあ、どこにもないぞ」
俺はぼんやりとした視界の中、探し物をしていた。
視界がぼんやりしているのは目が悪いからであり、メガネをかければ解決するのだが、そのメガネが見当たらないのだ。
家中を探し回ったが一向に見つかる気配はなかった。
昨夜は飲み屋でかなり酒を飲んでいた。泥酔して忘れてきてしまったのだろうか。
「こいつは困った、どうしたものか」
そのとき玄関のほうからカチャリと音が聞こえた。
【短編小説】ヒロくんとふしぎなカバン
あるところにヒロくんという男の子がいました。
彼は明るく元気な子で、大きな好奇心を持っていました。
毎日、自分の小さな世界を広げるために、新しい冒険に出かけていました。
友達と一緒に遊んだり、家族と楽しい時間を過ごすのが大好きで、彼の笑顔は周りの人々にも幸せを運びました。
ヒロくんは、学校でも勉強が好きで、特に科学や歴史に興味を持っていました。
彼は夢中になって教科書をめくり、過去の偉大な発明家
【ショートショート】だんだん高くなるドライブ
僕は一人車に乗って夜の田舎道を走っていた。
今日は、仕事が早く終わったので、いつものコースを回って帰っているところだ。
この道は、山の頂上まで登っていく道路で、夜になると辺りは真っ暗になる。
その暗闇の中をヘッドライトの明かりを頼りに、どんどん登って行く。
「さあ、もうすぐ頂上だ」
しかし、道の途中にあるカーブミラーに、ライトの光が反射して、一瞬目が眩んだ。
すると次の瞬間、車がどんどん高く上がっ
【ショートショート】銀河の雑談
二人の宇宙人、ゾルボンとゾルバがUFOに乗って、地球という惑星の上空を漂っていた。
二人は遠くから美しい青い惑星を眺めながら、最近の星間冒険についておしゃべりしていた。
ゾルボン:「わあ、見てくださいよ、ゾルバ!地球はこんなに美しい星なんだ。きっと面白い生き物がいるんだろうね」
ゾルバ:「ええ、この星の支配種は『人間』と呼ばれているそうです。彼らはとても頭がいいらしいんだけど、かなり特殊なとこ
【ショートショート】ネコクインテット
「にゃあ」
「……ん?」
僕は、ふと顔を上げた。
すると家で飼っている猫のミーコが窓の外から僕を見ていた。
ミーコは窓越しに僕の方を見て、もう一度鳴いた。
「にゃあ」
どうやら僕を呼んでいるらしい。
僕は椅子から立ち上がり、窓を開けてやった。
「どうした、ミーコ」
僕がそう尋ねると、ミーコは窓から部屋に入って体を擦り付けてくる。
「よしよし」
僕はその背中を撫でてやる。
「にゃあ」
また声が聞こえ
【ショートショート】宝くじ魔法学校
「えっ、なんだって」
喫茶店で、俺は友人の言ったことが飲み込めずに聞き返した。
「だから学校にいってるんだって」
「いやそこはいいよ。何学校だって」
「宝くじ魔法学校だよ」
「なんなんだそれは。百歩譲って魔法学校はいいとしても宝くじってなんなの」
「名前の通り宝くじ魔法を習うんだよ」
「そこまでで一つなのかよ。ニッチな学校だな」
「この魔法によって運気が上昇して宝くじが当たるようになるのさ」
「ふ