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【ショートショート】ネコクインテット

「にゃあ」
「……ん?」
僕は、ふと顔を上げた。
すると家で飼っている猫のミーコが窓の外から僕を見ていた。
ミーコは窓越しに僕の方を見て、もう一度鳴いた。
「にゃあ」
どうやら僕を呼んでいるらしい。
僕は椅子から立ち上がり、窓を開けてやった。
「どうした、ミーコ」
僕がそう尋ねると、ミーコは窓から部屋に入って体を擦り付けてくる。
「よしよし」
僕はその背中を撫でてやる。
「にゃあ」
また声が聞こえた。
目の前のミーコではなく窓の外からだ。
そこにはまた猫がいた。
「え?ミーコ?」
その猫は窓から入ってくるとミーコの隣に座った。
「ミーコにそっくり……というかそのものだ……」
自分の飼い猫を見間違うはずはないが二匹の猫は寸分違わぬように見える。
「これは一体……」
「にゃあ」
また声がした。
おそるおそる窓のほうを見ると、はたしてそこにはまたもミーコがいた。
ミーコ(仮)が入ってくる。
「にゃあ」
また声がした。
「にゃあ」
また声がした。
僕の前には五匹のミーコが並んでいた。
「ミーコ」
「「「「「にゃあ!」」」」」
僕が呼びかけると五匹のクインテットが奏でられた。
ここで今僕がするべきことは……。
「よし、とりあえず名前をつけよう」
ということで、ヒーコ、フーコ、ミーコ、ヨーコ、ゴーコと名づけられた猫達は今も我が家で暮らしている。

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