メンタルヘルス不調者は120%の状態で戻ってくる!
以前書いた記事で、私はメンタルヘルス不調になった人は120%の状態で戻ってくると信じているという話をした。前回の記事でははっきりと触れなかったが、私はメンタルヘルス不調に関わるすべての人に私と同じように、メンタルヘルス不調になった人の120%の活躍を信じてほしいと考えている。今回はその理由について触れたい。
誰か一人でもあきらめなかったら・・・
メンタルヘルス不調者は、再発が多く、療養期間が長期にわたることも少なくない。本人も周りも「今度こそは」と思って挑戦しても上手くいかず、悔しい思いを繰り返して、その可能性を信じるなんて到底無理なんじゃないかと考える人も少なくないかもしれない。さらに、期待されること自体も負担に感じるかもしれない。しかし、もし今までできなかったものが、できる状況だったとしたら、どうだろうか。上記の記事で触れたが、誰もがあきらめている状況だったら、できるものもできない。でも、誰か一人でもあきらめずに、その人の可能性を信じたら、できなかったことも、できる可能性は見えてくる。だから、メンタルヘルス不調者に関わる人にはすべて、メンタルヘルス不調者になった人の120%の活躍を信じてほしい。
信用と信頼
「今までの結果からみて、到底しんじられない」ということもよく聴くが、「信じる」という言葉は、大きく二通りの使い方がある。「信用」と「信頼」だ。どちらも、信じるという文字を使っているが、その前提が違う。信用は、信用取引などというように取引やビジネスで使わる言葉で金銭や過去の情報など、何らかの条件に基づき信じるときに使われる。一方で信頼は、無条件で相手を信じることである。職場においては、信用を使うのが当たり前になっており、何かの前提をもって相手を信じることは、ビジネスにおいては不可欠であることは否定しない。しかし、良好なコミュニケーションについて話題になるときに、使われるのは信頼であり、職場のマネジメントで必須なのは、信頼である。つまり、信用と信頼を使い分けることが重要である。同じ部下を相手にするにしても、その人の仕事の成果に対する評価は、当然ながら成果物や実績など、何かしら根拠をもって行うべきだが、一方で、目の前に相手がどれだけの可能性を持っているのか、その人の能力などについては、まず信頼することで、飛躍的に伸ばすことができる。「あなたの成果から、今はこの評価だけど、私はあなたはもっとできると思う、だから一緒に考えていこう」というような関わり方だ。
信じることの具体的な意味
メンタルヘルス不調者において、その人の可能性を120%信じることは、具体的にどんな意味があるのか。私は、一番のポイントはゴール設定が変わってくることだと考える。メンタルヘルス不調者対応において、体制を構築したり、仕組みを作ったりして、対応することをこれまでも提案してきたが、その前提として、どこまで回復するかの関係者の理解の状況で大きく変わってくる。「どうせ、うまくいかない」という前提で対応すれば、職場や会社への影響を最小限にしながら、本人や関係者に納得してもらうためにどうするかを考えるし、本人としても、その時間をどう過ごすかとか、どうしがみつくかという考えてに陥ってしまいやすくなる。
一方で、「活躍できる状態でもどってくる」という前提なら、受け入れる職場は、そのタイミングは意識しながら、それまでどうつなぐか、とか、どうやったら本人をそこまでもっていけるかを考える。そして本人としても、その状態になるための手段を探したり、早く改善するためにどうするか考えるのではないだろうか。
私は、活躍支援型メンタルヘルス対策を提唱しているが、どうやるかの前に、関係者がどんな思いでこの対策をやるかが重要だと考えている。実際の手段はあり、その実績は少しづつだが確実に積み重ねられている。だからこそ、メンタルヘルス不調者に関わる皆さんには、まず「120%の状態で戻ってくる」と信じていただきたい。
合同会社活躍研究所では、企業向けに活躍型メンタルヘルス対策の導入支援を行っております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
<著者について>
野﨑卓朗(Nozaki Takuro)
日本産業衛生学会 専門医・指導医
労働衛生コンサルタント(保健衛生)
産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 非常勤助教
日本産業ストレス学会理事
日本産業精神保健学会編集委員
厚生労働省委託事業「働く人のメンタルヘルスポータルサイト『こころの
耳』」作業部会委員長
「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」
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