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薔薇の香りが苦手だった。

ざっくり20年ちょっと前。

入浴剤、石鹸、キャンドル、コスメといった、わりと日常的に使うもので、贈り物にもなりそうなちょっぴり高価なラインには、薔薇の香りが多かった気がする。

香水のように香りそのものを扱う製品ではなく、本来無臭でも使えるもの。

薔薇の香りは、というか薔薇という花そのものが、昔も今も高貴でロマンティックな存在であることは、義務教育で特別習わなくてもなんとなく知っていた。

でも、子供の頃の私はその香りがたまらなく苦手で、ある日トイレの芳香剤として登場した日には具合が悪くなるほどだった。

そう。母や祖母は、薔薇の香りが好きだった。

というか、今でも薔薇の香りがあちこちで使われているのだから、好きな人の方が圧倒的に多いのだと思う。

電車で乗り合わせたマダムからはしばしばパウダリーな薔薇の香りが漂い、デパートのトイレで使ったハンドソープが薔薇の香りの時はげんなりした。

苦手、だからこそ敏感だった。

加えて、薔薇という花の魅力もわからなかった。

野山を駆け回って育ったような私にとって、薔薇の花は華美すぎたし、どうにも気取った感じがしてあまり親しみが持てなかった。

だから、野ばらという言葉を知った時は、それがどういうものかも知らないうちに、「野」という字がついてるだけで「お前いいやつだな!」くらいの親近感を持つほど、好意的に感じられた。あほ可愛い。

一方で、香水やキャンドルといった香りものは好きだった。

子どもながらも幼稚園の名札の裏に忍ばせていた匂い玉と呼んだ香りつきのビーズや、色によって違う香りのするペンが、とっても好きだった。

中学生になる頃には香水に目覚め、今でも周りに配慮しながら好きな香りを楽しんでいる。

でも、香りの説明に「○○ローズ」とか「バラの香りが広がり」とか書いてあると、(これは合わないな)と思ってずっと避けてきていた。

たまにバラの香りのハンドクリームやコスメ(どれもええヤツ。ありがたい。)を頂くことがあったけど、申し訳なくこっそり友人や家族にあげていた。

ところが、ここ数年。

そんなに薔薇の香りが苦手じゃなくなってることに気付いた。

もちろん、アロマ業界?も進歩して、よりナチュラルで心地よい香り方というような工夫もあるのだろうと思う。

それを加味しても、好みはあるにせよ、昔ほど苦手じゃない。確実に。

あまりにも不思議で、そんなことあるもんかと調べてみると、どうやらバラの精油には、女性につきものな月経や更年期の不快な症状を緩和し、肌を整える作用があると昔から伝えられていたらしい。
女性ホルモンにも良い影響を与えるとの話もあった。

ははあ。

私の体が薔薇の力を求め出したんか。30代を過ごすうちに。

薔薇の香りに、私の体が癒され始めているのか。
あんなに苦手だったのに!!!!!

こりゃあ……すごいね!!!

よくラベンダーには安眠効果とか、カモミールには鎮静効果とか言うけど、そういうの好きだけど、正直めちゃくちゃ体感することってあまりなかった。
(いい香りにリラックス~とかはわかるけど)

でも、植物の力ってあるね。
苦手なものを求め(受け入れ)始めるんだから。

そういえば昔より花も好きになった。薔薇に限らず。

こういうのもきっと関係しているんだろうな。

生きてみるもんだ。

「薔薇の香りが好きになりました。」なんて、人生のトピックとしては弱すぎるけど、それでも私にとっては、面白いな~楽しいな~と思える出来事の1つになった。

生きてみるもんだ。

私はまだまだ私のこと、なんもわかっちゃいないのだから。


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