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初めて投稿した短編小説です。
【あらすじ】
地元の高校に通う高校1年生の中村キコは、同じクラスで同じ委員会になった男子生徒から、突然「大っ嫌い」と言われる。しかし、なぜそう言われ…
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#青春小説
【短編小説】私と僕と夏休み、それから。(第5話/全12話)
夏休み前で小学校が早く終わった日のことだった。学校が終わるやいなや帰宅し、けん玉を掴むと、自転車に乗って急いで神社へ向かった。
拝殿前の段に座って涼みながらけん玉を見つめていると、祖父との思い出が次々とよみがえってきた。
優しかった祖父のことを思い出すと、涙がぼとぼとと落ちてきた。キコは無意識に「家族の前では泣いちゃいけない」としていた。その時は「泣いちゃいけない」とは、一切考えなかった。涙が落ち
【短編小説】私と僕と夏休み、それから。(第2話/全12話)
6月に入った。衣替えで夏制服になる以外に変化はないように思えたが、朝のホームルームで予告なしの席替えがあり、キコとシオンは窓側の一番後ろの席で隣同士になった。
あれから一週間、朝の挨拶以外は特に接点はなかった。
「大っ嫌い」の意味はよく分からないが、やっぱり気になってもやもやしていた。週1のごみ置き場掃除と月1の会議さえ乗り切ればいいと思っていたのに、これから毎日隣にいることになってしまった。
【短編小説】私と僕と夏休み、それから。(第1話/全12話)
「大っ嫌い」
時は5月後半のよく晴れた日の放課後、2回目の美化委員会の全体会議の帰り。場所はもうすぐ教室の目の前の廊下。
渡辺シオンは突然立ち止まり、同じクラスで同じ美化委員会に所属する女子生徒の中村キコに、そう言い放った。
それまで二人は無言で教室に向かっていた。いきなりの発言にキコは自分の左を歩いていたシオンの方を向く。すると、シオンはいつものニコニコとした表情をしていた。
いわゆる満面の笑