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チームワークとは一体何なのでしょうか【#全文公開『スポーツで役立つ チームワークの強化書』 はじめに を先行公開!】

はじめにを全文公開

チームスポーツにおいて組織力を強化するための教科書とも呼べる一冊!

『スポーツで役立つ チームワークの強化書 「個」を生かすチームビルディング』が7月5日より順次書店に並びはじめます。

本書より「はじめに」を発売に先駆けて全文公開です。

書影はAmazonへリンクします

『スポーツで役立つ チームワークの強化書
「個」を生かすチームビルディング』
著者 福富信也
ISBN 978-4-86255-639-4
ページ数 160
判型 A5判
定価 1650円 税込
出版社 カンゼン
発売日 2022年7月5日

日常に隠れた“成長の種"を見逃さない!
一体感は“背後のチーム"が鍵を握っている
心の安全を担保し“偽りの平和"から脱却する
ストーミング(混乱期)はチームの成長痛
etc……
チームづくりの着眼点を知り状況に応じた解決策を生み出すことができる!
スポーツ版チームビルディングの教科書。

はじめに

 このたびは、本書を手に取ってくださり本当にありがとうございます。読者の皆さんの多くは、「チームワークの強化書」というタイトルに関心を持ってくださったのではないかと思います。チームワークという得体の知れないモノ。大切なのはわかるけれど、いまひとつ実態が掴めない。どうやって構築したらよいかもわからない。経験に頼らざるを得ない。というのが正直なところだと思います。チームワークとは一体何なのでしょうか。漠然としている言葉だけれど、その曖昧さが逆に使い勝手の良さにつながっている気がします。私はサッカーJリーグ監督必須の指導者資格であるS級ライセンス講習会で毎年10時間前後「チームビルディング」の実技・講義を担当しています。7~8年前のその講習会で、元日本代表選手から言われた言葉がとても印象的でした。
「チームワークって天気みたいなもので、良い時もあれば悪い時もある。悪い時はじっと我慢して、良くなるのを待つしかないと思っていた。だけど、自分たちである程度コントロールできるってことがわかりました」
日本のトップで活躍していた元サッカー日本代表選手のその言葉に、嬉しさと驚きが入り混じった複雑な気持ちになったことを今でも覚えています。ワールドカップを戦った選手たちでさえも、チームワークというモノに振りまわされていたのか……。漠然としたチームワークというものをきちんと言語化し、チームワークに関心を持ってくれる人を増やさなければ、という想いを強くした出来事でした。

 本書には「チームとは、単に技術の集合体ではなく、感情をもった人間の集合体である」という文章が何度かでてきます。人は正論だけでは動きません。正論を知っていてもそれが行動に結びつかないのは、そこに感情面の問題が横たわっているからです。また、本書では「1試合でチームは4つに分裂する」ということについても触れています。先発出場、途中出場、出番なし、登録外。チームが勝とうが負けようが、常に複雑に変化する感情をもった生身の人間たちが1つのチームに同居しているのです。その他にも、メンバー同士の考え方の違いが表面化したとき、「黙り込むのか」「否定し合うのか」「両者納得の第3案を生み出すのか」で、その後のチームパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。そんな多様な感情や価値観を統率するうえで、スポーツ界では長きにわたり「決定事項に忠実に従うことこそがチームワークだ」という考え方が主流でした。しかし、不確実で劇的な変化が連続し、唯一絶対の正解のないスポーツにおいて、コーチの決定に従っているだけでは限界があることはすでに多くの方が気づいているはずです。

 コーチの力だけではチームの目標は達成できません。スポーツは基本的にコーチが試合に出ることはないため、選手の納得と協力を得なければなりません。コーチと選手は「上下・優劣・主従の関係」ではありません。役割こそ違えど、お互いに目標を達成したいと願っているという点では「対等・協力・同志の関係」と捉えることができます。コーチの好みに合わせて都合よく動いてくれるコマなど存在しません。コーチが威嚇や権力でチームを統率しようとして選手が反発(もしくは委縮)すれば、チームのパフォーマンスが下がり、結果的にコーチ自身の目標も遠ざかるのは自明の理です。優秀なコーチはすでにそのことに気づいていて、心からリスペクトして選手と向き合っています。コーチと選手がお互いに尊重し合い、円滑な共同作業があってこそ、目標達成が可能なのです。

 本書はチームワーク強化をテーマとしており、チームのパフォーマンス向上を4段階のプロセスで説明しました。また、コーチのマインドセットやチームづくりのヒントとなる過去のスポーツ事例、チームワーク構築に有効なメニュー集を加えました。唯一絶対の正解のないスポーツの世界ですから、このメニューどおりに実践してもうまくいかないかもしれません。私は、常々「優秀なコーチはアーティストだ」と言っています。同じ練習メニューを実践しても、その人にしか出せない成果があると思いませんか。選手に対する鋭い洞察力、練習メニューへの深い理解、細かいニュアンスの伝え方、チームの導き方、話すときの独特な間合いやトーンの変化、表情や視線など、コーチによる有形無形すべての発信が選手たちに影響を与えているからです。「この本のとおりに実践してもうまくいかなかった」という感想はできれば受け付けたくない、というのが正直な想いです。コーチが五感をフル稼働させてチームを観察し、アーティスティックなさじ加減でアレンジしてこそ、本書が生きてくると思っています。本書がわずかでも、オリジナルなコーチングを追求するみなさんの参考になることを願っています。そして、チームも個人も大切にされる豊かなスポーツ文化醸成の一助になれば幸いです。

                      福富信也

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