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連載中【前書き・物語の概要と前半主要登場人物】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)
小説「狩野岑信 元禄二刀流絵巻」前書き
◆ 連載開始: 令和五年十二月十五日
◆ 物語の概要
狩野岑信は、江戸中期の幕府御用絵師である。竹川町狩野家の次男に生まれながら、特に分家を許され、さらに、父や兄を差し置いて、御用絵師総上席、狩野派最初の奥絵師となった。
特筆すべき代表作もないことから、従来、時の将軍に気に入られて出世しただけの男と見られてきた。しかし、彼は、主君が将軍になったそ
【第39章・大月宿のかまいたち】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)
第三十九章 大月宿のかまいたち
川越藩江戸家老・穴山重蔵の命を受け、同藩の甲斐潜入部隊が江戸を発ったのは元禄十二年(一六九九年)四月十七日。狩野吉之助たち甲府藩一行が出発した三日前のことである。
潜入部隊は二隊編成。新見典膳が指揮する一番隊は、武田の隠し金山の探索を主任務とする。江戸を各個に発ち、甲州街道の大月宿で集結。以降、山道伝いに塩山方面に出るべく行動中。
一方、徒目付・貢川保
【第38章・甲州街道関野宿】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)
第三十八章 甲州街道関野宿
狩野吉之助が、相棒の島田竜之進、用人・間部詮房らと共に甲斐に向けて浜屋敷を出立したのは、元禄十二年(一六九九年)四月二十日の朝であった。
一行は、昼間の八つ半(ほぼ午後三時)には甲州街道の府中宿に入った。府中は甲州街道を歩き始めた旅人が最初に泊まる宿場である。八王子まで行ける者でも旅の初日は無理をしないことが多く、府中宿は江戸期を通じて大いに栄えた。
吉之
【第37章・はぐれ新陰流】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)
第三十七章 はぐれ新陰流
元禄十二年(一六九九年)四月上旬、浜屋敷の庭園を散り桜が覆う。潮入の池も水面が桃色に染まり、風流この上ない。そんなある日、狩野吉之助と島田竜之進は、用人・間部詮房から呼び出された。
「甲府の藩庁から報告が届きました。受け入れ準備が整ったと」
「では、我らも甲府へ?」
「はい。御成書院へ参りましょう。殿の御前にて皆様と協議いたします」
甲府二十五万石の主、正三位権
【第36章・武田の隠し金山】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)
第三十六章 武田の隠し金山
間部が居住まいを正す。無表情を一段レベルアップさせ、変な凄みを出してきた。
「いいでしょう。今後のこともあるので、お二人には話しておきましょう。まず、殿の出自に関する讒訴事件についてです。事件のことはご存知ですね」
「はい」
「結構。あの件については、用人職拝命後、私なりに再調査しました。何せ、殿のお立場を根底から覆しかねない問題ですから。幸い、殿の不利益になるよ