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大臺 序乃壱

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此のお話は日本が嫌いな日本人へ…。  日本を愚かと思う日本人へ…。  日本が貧しい国であったと思う日本人へ…。  日本人として誇りを持てぬ日本人へ届ける物語。  此れは我等が…
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大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 23

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 23

 実儺瀨(みなせ)達が八重国でファイトしている頃、賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) は国を千佳江(ちかえ)に任せ狸島に来ていた。勿論賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) が此の島に来ているのは狸を食べる為でも観光の為でも無い。賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) が従える千の娘達と砦と馬鹿でかい葦船を作る為である。と、言っても砦を作っているのは奴婢達である。
 さて、此の奴婢は何処で調達して来たのか ? 勿論現地調達

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大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 22

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 22

 五瀨が大王への返事を書いたのは次の日であった。伝令兵はユックリ出来ると思っていたので実にナンジャラホイな感じではあったが文句は言えない。否、寧ろ有難いと言うべきである。伝令兵は書状を受け取るとテクテクと集落からバイバイキン。来た道を戻って行った。
 其れから一月が経とうとした頃、ア国に八重国の大将軍を務める宇沙都比古(ウサツヒコ)と其の妻が到着した。宇沙都比古(ウサツヒコ)は到着するなり迂駕耶(

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大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 21

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 21

王后が五瀨の国を出て三日が過ぎた頃、巡回中の船が大きな葦船を発見した。此の大きな葦船は八重国に攻め入る様な素振りは見せていなかったが直ぐに五瀨に報告された。此の報告を受け五瀨は警戒を強めた。何せ、元正妻の事があって直ぐの事なのだから当然である。否、其れを見越して船を出していたのだ。
 王后が何も言わず帰ってから五瀨はずっと考えていた。だが、如何にも答えを見出せない。だから、念の為にと巡回させていた

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大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 20

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 20

 一月が経ち…。三人は何とかア国に帰って来た。ア国に戻った三人を見やり国中の人々は騒ついた。
 国中の人々が騒つくの当然である。出立の時は王后、将軍含め百五十二人いた人が三人しか帰って来ていないのだ。これが戦ならまだしま、王后は娘に会いに行っただけである。しかも其処には王后も将軍もおらず、居るのはただの兵士と侍女である。如何に旅が困難であっても此れは無い。だから、此れはただ事でない事は容易に想像出

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大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病2

大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病2

 項蕉(こうしょう)と三佳貞は伊国の都をブラブラと散策していた。都の中は秦の民と倭の民が多く生活を営み始めている。多くと言っても其の殆どは倭人である。秦兵と秦の民は其の多くが新たな都の建設に駆り出されていたのだ。
 項蕉(こうしょう)は四人での話し合いが終わった後、三佳貞に都の案内を頼んだのだ。三佳貞はナンジャラホイと思いながらも承諾したので、都馬狸(とばり)はもう暫く項雲(こううん)と話をする事

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大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走10

大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走10

 気長足姫(おきながたらしひめ)は葉流絵と樹沙桂が起きる迄待ってやりたかったがそう言う訳にも行かなかった。都が陥落しようが海戦組の兵は未だ健在なのだ。さっさと此処を出て合図を送らねば海戦組が都に攻めいる可能性があった。だから、気長足姫(おきながたらしひめ)は葉流絵達を起こし道案内を頼んだ。
 葉流絵を三池国の神がおぶり、樹沙桂を娘がおぶった。朦朧とする意識の中で葉流絵は懸命に道案内をした。進めば進

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大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走9

大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走9

 亜樹緒は銅鐸を鳴らし娘を集めた。事はせいている。急がねば全滅である。亜樹緒は娘達に内容を告げると直ぐに行動に移らせた。気長足姫(おきながたらしひめ)は王太子をおぶり葉流絵達と共に秘密の通路に向かった。
「亜樹緒達はどうするんじゃ ?」
 樹沙桂が問う。
「敵の目を此方に向けねばいけん。我等は大門に向かいよる。」
「分かりよった。」
 と、樹沙桂も大岩に向かって行った。
 そして、亜樹緒が銅鐸を鳴

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大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走8

大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走8

 何とも言えぬ温くベットリとした感触が顔を撫でる。葉流絵は何度か払い除けるが其れはペロペロとひつこく顔を舐めて来る。
「誰じゃ…其方は ?」
 と、葉流絵は意識を取り戻した。そして顔を舐める獣を見やり死んだ振りをした。

 ヤバイ…。
 熊じゃか。

 と、ドキドキし乍葉流絵は必死に死んだ振りをした。熊は葉流絵が死んだ振りをしたので横で気を失っている樹沙桂の顔をペロペロと舐め始めた。樹沙桂も意識を

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大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦3

大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦3

 戦場には多くの死体が転がっていた。其の多くは八重兵と娘達である。本来なら其れ以外の死体があってはならなかった。だが、戦場には倭兵の死体も数多く転がっている。高天原(たかまのはら)での戦は言わばゲリラ戦であった。不意をつかれ、罠に掛かり少なからずの倭兵を失った。此の損失は策によるものである。だが、此の戦は違う。ガチンコの殺し合いである。
 なら…。
 倭人が殺される可能性はゼロであっても不思議では

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大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦2

大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦2

「向かえ打て !」
 水豆菜(みずな)が鐘を鳴らし叫ぶ。娘達は城壁の上から矢を放ち、八重兵は城壁の上で五枚重ねにした盾を構え飛来する矢を防ぐ。
「狙うは弓兵だ !」
 水豆菜(みずな)が指示をだす。伊都瀬(いとせ)は黙ったまま敵を見やっている。
 此方の弓兵は城壁の上からであれば隙間を狙い射抜く事が出来る。と、言っても流石に砦から敵船迄は遠い。確実に射抜くにはかなりの技術がいる。だが、届かぬ訳では

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大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦1

大壹神楽闇夜 1章 倭 5決戦1

 迂駕耶(うがや)から赤粉が上がる。真っ赤な狼煙はモクモクと…。蘭泓穎(らんおうえい)は其れを見やり少し残念であった。油芽果(ゆめか)との事が大きく残っているのかも知れない。だが、油芽果(ゆめか)は裏切った。否、元々其の様な気は無かったのかも知れない。間者として潜り混んでいたのだから間違いはない。だが、泓穎(おうえい)にとって楽しい時間であったのは確かである。
 だからこその強い怨み。
 憎しみ。

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大壹神楽闇夜 1章 倭 4灯りの消えた日5

大壹神楽闇夜 1章 倭 4灯りの消えた日5

 油芽果(ゆめか)と薙刀(なぎな)が無事潜入を果たしてからの話は良く分からない。ただ二人が潜入初日から七日間は身体中が腫れて寝込んでいた事、八重国の間者である事がバレてしまったと言う事は間違い無いようだった。
 間者である事がバレても処罰される事なく、逆に蘭泓穎(らんおうえい)は油芽果(ゆめか)を優遇していたらしい。後は今日は何を食べたとか、何が美味しかったとか詰まらぬ連絡が来る程度であった。
 

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大壹神楽闇夜 1章 倭 4灯りの消えた日4

大壹神楽闇夜 1章 倭 4灯りの消えた日4

 咸陽を出発して三日…。五人は西南に到着していた。咸陽と違い西南は華やかである。民衆は生き生きとし乞食なんて者はいない。しっかりと税や朝貢をさせているだけあって町は非常に豊かで綺麗である。五人は取り敢えず指定された宿屋に向かった。
「此処が西南じゃか…。」
 甘辛く焼いた串焼き肉を食べながら油芽果(ゆめか)が言った。
「咸陽とは大違いじゃか。」
 鶏の腹に米を入れて蒸した料理を食べながら薙刀(なぎ

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大臺神楽闇夜 1章 倭 4灯の消えた日2

大臺神楽闇夜 1章 倭 4灯の消えた日2

「しかし…。良く食うのぅ。」
 ガツガツとむさぼり食べる二人を見やり李禹は懐具合が気になっていた。二人を引き止め先ずは友好の印と食事をご馳走しているのだが、驚く程良く食べる。李禹は秦王政から貰ったお金の半分を着服してやろうと考えていたのだが、油芽果と薙刀が馬鹿みたいに食べるのでその作戦が危うくなって来たのだ。
 ガツガツと二人は無心で食べている。鯉に鶏に団子、麺にあれにこれと…。何と言うか遠慮と言

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