歌集の棚から_バナーヨコ

第16回 花田菜々子さん(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

ひとりでも生きていけるという旨のツイートをしてリプを待つ顔 『サイレンと犀』岡野大嗣

 ひとりでいたい。誰かとつながりたい。両方とも本当の気持ちだ。
 この歌は一見、「ひとりでも生きていける」とい うツイートは強がりで、誰かに早くかまってほしくてソワソワしている滑稽な姿を自虐的に、ちょっと笑えるように詠んだようにも取れる。だがしかし、待つ顔はそんなに単純ではない。
 漫画に出てくるような美少女が「そんなこと言わないで、私は岡野くんと生きていたいよ」とリプしてくれたら丸く収まるような夢の世界に私たちは住んでいないからだ。誰かといても孤独は埋まらないどころかますます深まる場合さえある。
 人に依存せず生きる人の姿は美しい。自分もそうありたいと心から思う。だからリプを待つくらいは許してくれないか。ただひとりで生きるというだけで、なんだかとても大変なのだから。
(「ほんのひとさじ」vol.7より)

花田菜々子(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

サイレンと犀書影

歌集の棚から 過去の記事

第1回 吉村まどかさん(くまざわ書店サンリブもりつね店)

第2回 竹田信弥さん(双子のライオン堂)

第3回 吉田慎司さん(がたんごとん)

第4回 中村勇亮さん(本屋ルヌガンガ)

第5回 鎌田裕樹さん(恵文社一乗寺店)

第6回 永山裕美さん(梅田 蔦屋書店)

第7回 小谷裕香さん(本の学校今井ブックセンター)

第8回 城下康明さん(ひとやすみ書店)

第9回 新井見枝香さん(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

第10回 磯上竜也さん(toi books)

第11回 砂川昌広さん(とほん)

第12回 三井洋子さん(文教堂書店赤羽店)

第13回 関口竜平さん(本屋 lighthouse)

第14回 樽井将太さん(古本屋 百年)

第15回 波多野つくしさん(オリオン書房ノルテ店)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?