第1回 吉村まどかさん(くまざわ書店サンリブもりつね店)
あなたさえ良ければ冬の図書館でわたしはひとり読点になる 『オーロラのお針子』藤本玲未
図書館は、昔から大好きな場所だ。
黙っていれば優等生な文学少女だった私にとって、図書館は好きなだけ本が読める至福の場所であり、煩わしい現実から逃げこめるシェルターだった。学生時代の図書室も、今でもお世話になっている公共図書館も、司書として働いた図書館も。私のすべての瞬間で、図書館はそっと傍らに寄りそってくれた。
「あなたさえ良ければ」、そんな謙虚さで始まるこの歌を、大好きな図書館で呟いてみる。今日もまたひとり書架を巡り、活字で心を満たし、一息ついて書店の喧騒へ戻るのだ。
なぜ図書館が好きなのか、そう問われればこの歌を返したい。
思い返せば、私が歌集というものに出会ったのも、また図書館だった。
(「ほんのひとさじ」vol.9より)
吉村まどか(くまざわ書店サンリブもりつね店)
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