第9回 新井見枝香さん(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
やすらぎは死んだあとでじゅうぶんといい君は私を妻と定めた 『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』雪舟えま
どう足搔いてもできなかったことが上手にできる人にどうしようもなく惹かれた。
歌が下手だったから。物語が書けなかったから。そんな風に生きられなかったから。
近付くほどに膨らむ気持ちは、美しくも優しくもなかった。苦し紛れに抱き締めてみても、もっと苦しくなるだけだった。
君が輝く限り、僕はずっと息苦しいのだろう。君の幸せと僕の幸せは同じじゃない。同じなわけないだろう。それでもどうか、僕と結婚してください。あったかいベッドに飛び込むくらい死ぬのが待ち遠しくなるほどに。もう、二度と目が覚めませんようにと願って心臓を止めるほどに。こてんぱんにやっつけてください。そういう意味で言ってます。
(「ほんのひとさじ」vol.9より)
新井見枝香(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
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