第8回 城下康明さん(ひとやすみ書店)
花束を抱えて乗ってきた人のためにみんなでつくる空間 『つむじ風、ここにあります』木下龍也
25文字でこんなことが出来るんだって考えたら、この原稿は300字程度でって言われているのだけど、怯みます。この短歌の12倍の文字数を使って何が書けるというのか。いっそ、さらに12首を選んでただただ羅列したい句読点もなしだ。
花束や人々、空気循環、物的な動きが見えます。花束を抱えた人、空間(きっと円)をこさえた人たち、少し離れて眺めている人たちの心理的な動きが見えます。この出来事に端を発する時間的な動きが見えます。見えますと言っても僕とあなたと、見えるものは違うでしょう。物語。真っ白の大きなかすみ草の花束が見えたのですが、あなたに見えた花のことも聞いてみたい。
彼の短歌はさっぱりとしていながら情愛底深い。諧謔の陰に悲哀が潜む。加えて時代の感受性のようなものを内包している。いつか懐かしむように読まれ、いつか歴史風土に思い馳せるかのように読まれる歌人だと思う。
(「ほんのひとさじ」vol.11より)
城下康明(ひとやすみ書店)
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