第12回 三井洋子さん(文教堂書店赤羽店)
アイスティーの上澄みに似た空を見て初めて君に気持ち伝える 『タルト・タタンと炭酸水』竹内亮
彼、若しくは彼女が見た空はどの空だろう。
例えば「今日、告白をする」と心に決めていて、デートの途中に入った喫茶店で二人きり。どう切り出せばいいのか考え倦ねている中。アイスティーのグラスに浮いた雫が滴り落ちてゆくのを、ぼんやり見つめていた視線を上げた時に「君」の後ろにある窓から見えた空。それとも一歩踏み出せないままに喫茶店を出てから、ふと深呼吸の合間に仰いだ空。
いや、或いは「君」に対する気持ちが何なのか解らないまま今日も一緒に過ごしていたけど、空を見た瞬間に「好き」だと気づいて思わず伝えたのかもしれない。
そんな事を考えながら甘酸っぱい余韻に浸った。
歌集『タルト・タタンと炭酸水』はタイトルの印象を裏切らない甘さと爽快さが色鮮やかにそこにある。通して読むともっと味わい深いので、ぜひ御賞味いただきたい。
(「ほんのひとさじ」vol.11より)
三井洋子(文教堂書店赤羽店)
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