歌集の棚から_バナーヨコ

第15回 波多野つくしさん(オリオン書房ノルテ店)

最初から靴紐がほどけていたし君なら大丈夫だと思った 『アーのようなカー』寺井奈緒美

 きちんとした人を見ると緊張する。
 教習所の教官なんか本当に怖くて、その目はいつもわたしを咎めているようで、ハンドルを握る手がどうしたって震えてしまう。いや、きちんとした人は、良い。必要だ。きちんとした世の中にはきちんとした人がいなくてはならない。
 だけど、なんかこの人といるとほっとするなと思うのは、きちんとしてない人。きちんとしてない部分のある人。例えば、靴紐がほどけている人。
 もし助手席に座った教官の靴紐がほどけていたら……うん……手は震えないけど、やっぱりちょっと不安だから結び直してもらって、あとで一緒にアイスクリームでも食べたい。
(「ほんのひとさじ」vol.12より)

波多野つくし(オリオン書房ノルテ店)

46アーのようなカー書影

歌集の棚から 過去の記事

第1回 吉村まどかさん(くまざわ書店サンリブもりつね店)

第2回 竹田信弥さん(双子のライオン堂)

第3回 吉田慎司さん(がたんごとん)

第4回 中村勇亮さん(本屋ルヌガンガ)

第5回 鎌田裕樹さん(恵文社一乗寺店)

第6回 永山裕美さん(梅田 蔦屋書店)

第7回 小谷裕香さん(本の学校今井ブックセンター)

第8回 城下康明さん(ひとやすみ書店)

第9回 新井見枝香さん(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

第10回 磯上竜也さん(toi books)

第11回 砂川昌広さん(とほん)

第12回 三井洋子さん(文教堂書店赤羽店)

第13回 関口竜平さん(本屋 lighthouse)

第14回 樽井将太さん(古本屋 百年)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?