変わっていく自分|第7話
久高島の御嶽で「神様の言葉がわかるようにならないとね」と言われ、呆然とする私(第6話)
不思議なツアーから始まった濃密な1日を終え、ふらふらと島の食堂に出かけた。昨晩食べておいしかった、もずくと白身魚の天ぷらを頼む。
すると、今日は白身魚を切らしているらしく、鶏肉の天ぷらが出てきた。何の気なしに口に運ぶ。
だが、次の瞬間、気持ち悪くて吐いてしまった。
お昼に豚の角煮を食べた時は、こんなことはなかったのに。疲れているのだろうか。不思議に思いながら、食堂を後にした。
だが、翌日になっても、肉のにおいが気持ち悪くて仕方がない。自分の嗅覚が変わってしまったような感覚のまま、最終日を迎えた。
歩いていると、島の方に声をかけられた。久高島は初めてで、3泊4日して帰るところだと告げる。
「それは、これからも久高島に通うことになるね」
彼らは驚きの表情で言った。久高島は、神様に呼ばれた人だけが訪れることが出来ると言われる。初訪問で何泊もする人は珍しいのだという。
そんな言葉を背に、私は久高島を後にした。
東京に戻っても、肉のにおいを強く感じる状態は続いた。人も飲食店も多い分、余計につらい。
通りすがりの人が肉くさくて、気持ち悪くなってしまうこともあった。スーパーの肉売り場や、豚骨ラーメン屋に遭遇すると、走って逃げる。
私はどうなってしまったんだろう。変わっていく自分に戸惑う日々を過ごした。
思えば、久高島へは、自分が会社を辞めることになった理由が知りたくて行った。そうしないと前に進めないと思ったのだ。
その答えは、不思議な体験を通して知らされた。だが、私の想像をはるかに超える内容だった。
「神様事を伝えて、困っている方を助ける」「そのために、神様の言葉がわかるようになる」
この言葉を胸に、一体どう生きていけば良いというのだろう。望んだこととはいえ、何をすれば良いのか、皆目見当がつかない。
前に進むつもりが、足踏みをしている感覚。ひどく苦しかった。
混乱した私は、再び那須へ向かった。以前、インド瞑想3週間の旅に誘われた宿である。静かな環境で気持ちを落ち着かせたかった。
だが、そこでも自分の変化を知ることになる。
ある日。自分の部屋を出ようとしたら、入り口の照明がちかちかと瞬いた。
その時は、電池切れなのかと思い、気に留めずにいた。
ところが、皆がいる部屋へ移動し座ると、部屋中の電気がものすごい勢いで一斉に瞬き出した。驚きのあまり、立ち上がりそうなほどだ。
だが、誰ひとり気づいている人はいなかった。皆、平気な顔をして座っている。
変わっていく自分を受け止めきれないまま、最終日を迎えた。近くの神社へ散歩に出かける。いつもは誰もいないが、この日はにぎわっていた。
年に一度の太々神楽だ。以前は青年達が40日間、毎日冷水で身を清めて稽古に励み、奉納したと言われる神事。
その様子を写真に撮ってSNSに投稿すると、山伏・佐藤さんからコメントがあった。
「御印(おしるし)が来てるね!」「間違いない」と明るく書いてある。御印とは、神に指名された兆候のことだ。
久高島のことは話していない。それに太々神楽を偶然観たのは私だけではない。不思議に思った。
だが、神様に呼ばれた体験を持つ彼女に洗いざらい話を聞いてもらえば、少しは楽になるかもしれない。私はそう思った。
那須から戻った翌々日、佐藤さんのお宅に伺うことになった。そこで、さらに思いがけないことを言われるのである。
つづく
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