【降灰記file.09】水紋はひとさしゆびに吸いこまれ薄明かりの絵画botの停止(平岡直子)
短歌をする人には好きなモチーフがある(こともある)。たとえば、雪、光、火、そして水、などである。以前所属していた学生短歌会ではそれぞれの偏愛の傾向を指して「〇属性」と言ったこともあった。そうした好きなエレメントを起点に歌をつくることもあるだろう。
平岡直子「歯車」では歌がすべて「水」から始まっている。仕掛けとしては、初句が全部「たのしみは」から始まる橘曙覧「独楽吟」を思わせるけど、「歯車」では「水」というエレメントの意外な可動域の広さを見せている。たとえば、「水族館」「水