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降灰記

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短歌がわからなくなって始めた短歌の一首評です。
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記事一覧

【降灰記file.15】鍋のレシピを書いていた背中から抱きしめられて いるか と書きぬ…

 自分でもそんなことしていてどうかと思うけど、どうしようもなくてChatGPTに人生相談してい…

景川
4か月前
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【降灰記file.14】ゴキブリは天にもをりと思へる夜 神よつめたき手を貸したまへ(葛…

 幻視の女王・葛原妙子の「幻視」について、おもに「幻」をめぐっていろいろ検証を加えられた…

景川
4か月前
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【降灰記file.13】百年の半分というそれだけで急に真顔になる五十代(佐藤りえ)

 五十歳が百歳の半分だと気付いたとき、どういう反応をするだろうか。長いな、と思う人もいる…

景川
5か月前
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【降灰記file.12】鉄骨のあわいにありてありあけの月はみ空の塩と思いぬ(佐藤弓生)

 古典にあかるくないから、百人一首の有名歌を参考にするけど、〈ほととぎす鳴きつる方を眺む…

景川
5か月前
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【降灰記file.11】送られて初めて知った廃屋の絵文字に笑い「いいよ」と返す(榊原紘…

 会話という複線的で立体的なやりとりに対して、メールやチャットは単線的で平べったいものに…

景川
5か月前
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【降灰記file.10】月へ行く船の鏡を取り外し さようなら双子の独裁者(向井俊)

 ほかの言語ではどうなのかわからないけど、「独裁者」であることと「双子」であることは微妙…

景川
5か月前
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【降灰記file.09】水紋はひとさしゆびに吸いこまれ薄明かりの絵画botの停止(平岡直子)

 短歌をする人には好きなモチーフがある(こともある)。たとえば、雪、光、火、そして水、などである。以前所属していた学生短歌会ではそれぞれの偏愛の傾向を指して「〇属性」と言ったこともあった。そうした好きなエレメントを起点に歌をつくることもあるだろう。  平岡直子「歯車」では歌がすべて「水」から始まっている。仕掛けとしては、初句が全部「たのしみは」から始まる橘曙覧「独楽吟」を思わせるけど、「歯車」では「水」というエレメントの意外な可動域の広さを見せている。たとえば、「水族館」「水

【降灰記file.08】普段着で人を殺すなバスジャックせし少年のひらひらのシャツ(栗木…

 アンソロジーから歌を引用して、評をすることについて。なるべく、歌集、連作から引いて評を…

景川
5か月前
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【降灰記file.07】にわとりが二百種類の声で鳴く 大人に期待なんかするなよ(土岐友…

 『ナムタル』は新型コロナウィルスが流行した2019年5月から詠んだ作品が収録されてあり、タ…

景川
5か月前
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【降灰記file.06】雨かんむりにヨーヨーのヨで雪が降る つき子のつきは高槻の槻(長…

 口頭で自分の名前を説明する方法は二パターンある。一つは部首などのパーツで言う方法。「神…

景川
5か月前
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【降灰記file.05】焼き肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き(…

 「サラダ記念日」の歌(注1)のサラダは、実体験では唐揚げだったというエピソードが、一部…

景川
5か月前
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【降灰記file.04】ぬばたまのひとよひとよにひとみごろアポロ計画、人を円かに(巣々…

 数学はできないです。  とあらかじめ言い訳したうえで、「ひとよひとよにひとみごろ」は2…

景川
5か月前
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【降灰記file.03】君を死なせて森羅万象ふるようなスノードームを買いに行きたい(服…

 君を死なせることよりも、森羅万象が降ることよりも、読んでいる途中まである程度想定してい…

景川
5か月前
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【降灰記file.02】追伸に/ウソと書かれたブルーナの絵はがき/臆病者のうさこ(北川草子)

 最近のドラマにあまり魅力を感じない。今のドラマが退屈になったといった類のぼやきではない。基本的な構成は変わっていないし、むしろ、画質などの技術面はどんどん向上している。私は単に古い画質や衣装、メイクに愛着があるだけなのだと思う。それがドラマの内容と合致しない違和感というか。  絵はがきに文章が書かれている。強く感情を動かす内容かもしれない。その末尾に「ウソ」とだけ書き加えられる。手紙の受け手が動揺する瞬間。惹きつけておいて離す送り手の人物像が浮かび上がる。あるいは、「臆病者