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ぐうっとお腹がなるよ。空腹注意の小説編

お世話になっております。
写真事務所プリズムライン専従者のmoeです。

なんか一日中お腹が空いている気がするんですが、これは一体・・・

夏本番に向かって確実に食欲が上がっています。
冷やし中華・ミョウガをたくさん載せたカツオのタタキ・ゴーヤチャンプルーなど、夏らしいメニューを作ってすでに心は夏モード。

でも焼けるような暑さの外に元気よく出ていくのはちょっと気が引けて、結局家の中で本を読むのが好きです。。。(根っからのインドア)

前回に引き続き、お腹がすく作品を紹介させていただきます。
(「ぐうっとお腹がなるよ。空腹注意の映画編」も良かったらぜひ。)

今回はページをめくるたびに、ぐうっとお腹がなるような美味しいご飯がたくさん登場する「本」の紹介です。


①吉田篤弘著『それからはスープのことばかり考えて暮らした』

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なんだかもうタイトルから漂う美味しそうな香り。。。。

教会の見えるアパートの部屋に仕事を辞めて引越しをしてきた主人公が、その街で「トロワ」という名のサンドイッチ屋さんに出会います。
サンドイッチに魅了された主人公ですが、ひょんなことからそのお店でサンドイッチに合うスープを作ることになります。

物語の中に登場する個性豊かな登場人物たちもとっても魅力的で、会話のやりとりなどに思わず微笑んでしまいます。

そのサンドイッチを、僕は自分にとって最高の場所ーつまり隣駅の映画館の闇の中で食べることに決めた。(中略) なるべく紙の音をたてないよう、手さぐりで中のものを取り出し、手にした順にそのまま食べてゆくことにした。暗いので、口にするまでは、ハムなのか、きゅうりなのか、じゃがいもなのかわからない。(中略) ところが、それがハムでも、きゅうりでも、じゃがいもでもない味で、思わず手の中のものをまじまじ見ると、ちょうどスクリーンが明るいシーンになって、手もとがぼんやり浮かび上がってきた。じゃがいものサラダ。が、口の中には、じゃがいものサラダより数段まろやかな甘みがある。目はいちおうスクリーンを見ていたが、意識の方はすべて舌にもっていかれ、そのまろやかさが何に似ているか、懸命に記憶を探って言い当てようとしてみた。でも、うまく言えない。とにかく、非常においしいもの。しいて言えばー本当にしいて言えばー本物の栗を練ってつくられたモンブラン・ケーキのクリーム。いや、あれほど甘くはなく、もっと歯応えがある。(中略) サンドイッチに夢中になってスクリーンが霞むなんて信じられない。                                                             (本文より)

この部分を読んで、「なんて美味しそうなサンドイッチ・・・」と想像しただけでとんでもなく幸福な気持ちになってしまいました。

舌触りの良いじゃがいものサラダを口の中で想像するだけでもう美味しい。
ポテトサラダじゃなくて「じゃがいものサラダ」っていうのも良い・・・

他にも美味しい匂いがしてきそうな食べ物がたっくさん登場しますよ。


②吉本ばなな著『キッチン』

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幼い時に両親を失くし、祖母に育てられた主人公が、祖母も他界してしまい、一人ぼっちになってしまったところから物語が始まります。
心が休まる場所はキッチン。祖母と関わりのあった雄一という青年とその母親のえり子さんと一緒に暮らすことになります。寂しさを抱えながらも、ひたむきに生きる主人公がすごく愛おしく感じます。

文章のところどころに散りばめられた、細かいけれどじっと目を凝らして見ると、自分の日常にも重なるような表現が大好きで何度も読み返してしまいます。

「(前略)つらいこともたくさん、たくさんあったわ。本当にひとり立ちしたい人は、なにかを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。そこからがはじまりなのよ。」(本文より)

私が好きなのは、えり子さんが言うこんな一言。
なんだか思わずページをめくる手を止めてしまいました。

そんな素敵な言葉もたくさん散りばめられながらも、美味しそうな食べ物もたくさん登場します。
夜中に作るラーメンや、明け方に蒸すホカホカの肉まん、玉子がゆときゅうりのサラダ。

普通はご飯を食べる時間じゃないから余計魅力的に映るものばかりで、簡単なものでも本当に美味しそうだな〜と思います。

特に、主人公が伊豆で夜遅くに食べるカツ丼は、もう本当に食べたい・・・!

やがてカツ丼がきた。(中略) 外観も異様においしそうだったが、食べてみると、これはすごい。すごいおいしさだった。「おじさん、これおいしいですね!」思わず大声で私が言うと、「そうだろ。」とおじさんは得意そうに笑った。(中略) このカツ丼はほとんどめぐりあい、と言ってもいいような腕前だと思った。カツの肉の質といい、だしの味といい、玉子と玉ねぎの煮え具合といい、固めに炊いたごはんの米といい、非の打ちどころがない。(中略) ああ、雄一がここにいたら、と思った瞬間に私は衝動で言ってしまった。「おじさん、これ持ち帰りできる?もうひとつ、作ってくれませんか。」(本文より)

このカツ丼がこの後、大事な役割を果たします。

おいしいものを食べて、「これあの人にも食べさせたいな〜」って思うことがあります。それってすごく温かいなって思います。

人のそういう温かさがつまった『キッチン』は、これからも何度も読み返したい本の一冊です。

実はまだお腹がすく小説はあるのですが、書き始めたらなんだかものすごく長くなりそうなので、今回は2冊にしておきます。笑

どちらの本も、おいしそうな食べ物と、その周りの温かくて癒される人々との物語が、自分の心にじわっと入り込んで「読んで良かったな〜」と思う作品です。

文字だけの情報で、味を想像するのはなんて楽しいことなんでしょう。。。

サンドイッチもカツ丼もぜひ食べてみたい。

それでは今回はこのあたりで。
次回も引き続きよろしくお願いいたします!

写真事務所プリズムライン

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