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「新聞」が要らない根本的理由 情報への「多重払い」問題

古い習慣


「テレビでニュースが見られるのに、なぜ新聞が必要なのか?」

誰でも一度は、そう考えたことがあるのではないだろうか。

その通りなのである。ネットが広まったから新聞が要らなくなったのではない。もう50年前から要らなかった。

むしろ、なぜ新聞がまだあるのか、の方が疑問なのだ。


昔は、歴史の長い新聞の方が、テレビのジャーナリズムより高級だというイメージがあったが、もうそんなイメージはとっくにないだろう。

新聞より給料の高いテレビの方に優秀な人材が集まっており、金があるからテレビの方が機動力がある。ウクライナ戦争で最初に現地に行けるのは新聞ではなくテレビである。速報性については言うまでもない。物理的な印刷機械に頼っている新聞は地震などの災害に弱い。

どこからどう見ても、テレビがあれば、新聞は要らない。


のちの時代から見れば無駄なことが、習慣として長く続くことはある。

私の子供の頃は、朝起きたら仏壇に供え物をしたり、神棚に拝んだりする習慣が家庭にはまだあった。

無駄と言っては怒られるかも知れない。今でもあるかも知れないが、ごく少なくなっただろう。また、拝むとしても、亡くなった近親者の遺影に対して、とかが多いのではなかろうか。

昔は、会ったこともない「神さま」や「ご先祖さま」に毎日拝んだのだ。そういう精神文化は、滅びつつあると思う。

新聞を取っている家庭はまだあるが、それも、そうした滅びつつあるある習慣にすぎない。

ニーチェは「朝の祈りの時間が新聞を読む時間に変わった」と言ったが、今は新聞を読むことが「朝の祈り」のようなものになっている。


ニュースへの多重払い


ただ、私が言いたいのは、

「今はネットでタダでニュースが見られるから、新聞は要らない」

というのと同じではない。

ネットでタダで見られる、というのは、誤解だと思う。通信費やデバイス代で、みんなけっこうな金を払っているはずである。

今でも習慣で新聞を読む高齢者は多い。しかし、それは必ずしも不合理ではない。

「テレビ+新聞」だけしか見ない老人と、「スマホ+ネット」だけの若者とでは、情報にかけるコストで見た場合、どちらが賢いかはわからない。

「テレビ+新聞」だけだと月5000円以内だが、「スマホ+ネット」だと、通信費+スマホ代で、月5000円以上かけているかも知れない。


ここで私が言いたいのは、以下のようなことだ。

現代では、新聞を取って、ネットも見る家庭も多いだろう。

そうすると、情報に対して「2重払い」していることになる。

それだけではない。忘れてはいけない、我々はNHK受信料を払っている。

そうなると、「3重払い」になる。

また、民放テレビは「タダ」というが、実は視聴者は、企業がテレビ局に払った広告費に見合う消費をするという「支払い」をしている。

その見えない「支払い」も入れれば、我々はニュースや情報に対して「4重払い」している場合がある。

これは無駄ではなかろうか。

その「4重払い」のうち、何を削るかといえば、やはり「新聞」になるだろう。


新聞は一紙でいい


それでも、どうしてもニュースは紙で読みたいという人はいるだろう。

そういう人のために、新聞はもう「唯一の全国紙」である読売新聞だけでいいのではないか。(他の「いわゆる全国紙」は夕刊を地域によって廃止している。いかにも経営が苦しそうで見ていられない)

今でも、新聞はどれも同じである。

報道や紙面内容で競争しているなどということは事実上ない。本当に競争していたら、潰れる新聞社があるはずだが、ないのは競争していない証拠だ。

新聞は偏向していると批判されるが、ある意味、それは新聞社の思う壺です。

今、経営難の新聞社ほど必死に「偏向」しているのは、存在理由がないことを気づかれまいとする最後の抵抗だ。

新聞社はどこも同じように権力とつながっており、新聞には偏向ほどの「個性」もない。あるのは、「臭み」の違いのようなものだけである。

これは、新聞社の人間は分かっていると思う。

なぜなら、ニュースは、誰が報じようと、みんな同じなのだから。ちょっとした「角度」で個性を出そうとしている新聞は、もう臭みで売る珍味のようなものになっている。

すでにそういうものであれば、一紙あれば十分だと思うのである。


現実的で合理的な「ニュース」のコスト


新聞は読売新聞だけになる、として、他はどのようにすればいいのだろうか。

私が2日前に出版市場について書いたように、「出版」「放送」「通信」「ネット」が融合して「単一コンテンツ市場」になる傾向がますます強まっている。


情報への「多重払い」の解消は、この時代の必然だと思う。

私は、こうすればいいのではないかと思う。

NHKがネットに課金する動きにみんな怒っている。それはわかるけれど、どうせ月2000円くらい払っている側とすれば、ネットにニュースを全部流してくれるなら、新聞代よりは安い、という感覚もある。NHKは、新聞程度のコンテンツはすぐに流せる。

だから、民放以外に、広告のないニュース媒体としてNHKに月1000円くらいは払っていいかな、と思う。

通信費+デバイス代+NHKニュース料金1000円

これくらいのコストで、現在と変わらないクオリティのニュースが供給されるのではなかろうか。

そういう方向にニュース業界は再編されてほしい。



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