江口海里 プロダクトデザイナー

プロダクトデザイナー/クリエイティブディレクター。工業製品、工芸品のデザインとそれに付…

江口海里 プロダクトデザイナー

プロダクトデザイナー/クリエイティブディレクター。工業製品、工芸品のデザインとそれに付帯するブランディングを行うデザインスタジオKAIRI EGUCHI STUDIO Inc.代表 デザインを軸に様々考え続ける。 http://kairi-eguchi.com/

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  • あとからシテン

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    #デザインシテン の裏話や深掘りなど

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最近の記事

2023年を振り返る

苦しい時間は長く感じますが、反対に充実した時間はあっという間に過ぎ去っていきます。早いもので今年もあと2日。2023年を振り返ろうと思います。 1月 昨年9月10月あたりに募集していたアシスタントが来てくれるようになり、業務のキャパシティが増加し、またプロダクトデザインだけでなくブランディングのお仕事も増えてきたことから、仕事の幅が広がってきました。ポッドキャスト「デザインシテン」も100回目を迎え、継続の重要性をかみしめた1月。 2月 普段は工業デザイナーですが、は

    • よくわからない。に散文で迫る

      いつごろからそうなのかわかりません。 僕は感情が高ぶると文字を書きたくなります。日々の激務に追われていても書きたいことがどんどん高まっていって感情があふれ出るときに長い長い文章を一気に書いてしまいます。ひどい時は朝6:00に起きてそこからあれこれしながら2時間ちょっとで7000文字くらい書きます。 もちろん冷静に建設的に書くときもありますが、だいたいは前者で書いて、そのあと気持ちがすっきりすることが多いです。物語を書くことはできないですしあくまで自分の思うことをただつらつ

      • 限りある純真な時間と過程で未来へ

        弊社で雇用が始まったのは10年前の2013年のことです。 度々話に出てくる「ミラノサローネサテリテにはじめて出展した時に通訳で着いてきてくれた台湾カナダ人の方でした。 当時は独立4年目で特に売り上げがいいこともなく、相変わらずその月暮らしというか資金をいかにスマートに運用し生き延びるかという状態でした。ただその時に以前からの憧れでもあったミラノサローネサテリテに行くことを決意し、色んなことを我慢して少しずつ貯金をしながら、最後には30万円くらい資金が足りなかったですが運よく

        • 庵治石とひやかけ

          ※これは旅の記録です あるプロジェクトの準備で、現場見学のために香川県高松市に行ってきました。高級石材の庵治石で様々なプロダクトを展開するAJI PROJECTを行われている株式会社蒼島(あおいしま)に、インテリアデザイナーの土井智喜さん(soell)と、ゼミも兼ねてDAEN(宇佐美菫、藤崎由渚)と行ってきました。 岩が切り立っている山に立つと、そこはまるで異世界で山から切り出された石が美しいプロダクト群になっているという事実を読み込むのに躊躇するほど壮大で、荘厳な世界で

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          Susumu Harada 他

        記事

          創造性の砂場

          先日僕たちが運営するデザインのグループ展COMPOSITIONが終わりました。 COMPOSITIONとは僕がディレクションを務める、関西若手デザイナーが自己研鑽することを目的としたデザインの展示会です。一部重複する部分はありますが、以前書いた記事もありますので宜しければ。 最近COMPOSITIONに関係する取材依頼が増えてきたので少し振り返ってみようと思う。どの辺から話すべきなのかはさておき、忘備録的に書いてみます。 そもそもなぜCOMPOSITIONをやっているの

          交線を美しくカットし、組みあげるスチールファニチャーブランド[KOSEN]

          KOSENというスチールファニチャーブランドが立ち上がります。摂津金属工業所と僕たちのここまでの軌跡を綴ってみました。 摂津金属工業所と僕。 摂津金属工業所はものづくりの街、記憶に新しいNHKの朝ドラ「舞いあがれ」でも有名になった大阪府東大阪市にある金属加工会社だ。 鉄パイプにプレスで穴を開ける加工を得意とし、店舗什器などを長年生産してきた。工場にはズシーン、バチバチバチ、と心地よいプレスや溶接の音が鳴り響き、いつもミーティングをする社員食堂は塗装現場の真上に位置するた

          交線を美しくカットし、組みあげるスチールファニチャーブランド[KOSEN]

          新しい刃物のブランド「癶(HATSU)」

          昨年8月から福井県に度々訪れ、あるプロジェクトに参加していました。 そのプロジェクトは「F-TRAD」という名前で、福井県の事業かつ福井で活動するデザインスタジオTSUGIがディレクションを行い、福井県内の伝統工芸を現在のライフスタイルに転換することを目的とし、伝統工芸の現場や職人と県外のデザイナーをマッチングし商品開発を行うという内容でした。 詳細はF-TRADのサイトをご覧ください。 今日はそのことについて少し書いていきたいと思います。 TSUGI新山さんとの出会い

          新しい刃物のブランド「癶(HATSU)」

          都市と傘

          5月になりました。もうすぐ梅雨が来ますね。僕は天然パーマなので、梅雨はあまり好きではない。雨そのものは嫌いではないけど。 傘の出番はだいたいよくない日。男性のビジネスマンにとって、傘ほど似たり寄ったりの世界は無い。大人の男性が赤や黄色の傘をさす人は珍しく、濃紺か黒。あとはいわゆるビニール傘の透明か白。 それでも成り立つくらい成人男性にとっての傘は、あまり興味をそそらない無味無臭の世界。その中で無難にビニール傘を選ぶも、問題は空から否応なしに降ってくる。 ビニール傘はコス

          COMPOSITIONという展示会のはなし。

          COMPOSITIONというイベントを僕の運営するデザインギャラリー「PAGE GALLERY」にて開催中です。 近しいクリエーターから色々質問されることも多いので、ここで少しまとめて回答しておきたいと思います。 COMPOSITIONとは何か。 COMPOSITIONとは、関西在住の若手プロダクトデザイナーの研鑽の場と今は定義しています。今はというのも、実は過去に2回すでにやっていたからなのですが、1回目は2016年にイタリアの照明ブランドFLOSとのスプリットイベン

          COMPOSITIONという展示会のはなし。

          道具に徹する。機能を丸裸にする。

          昨年のことですが、お風呂の床を掃除するためのブラシのデザインを担当しました。個人的に結構いいデザインプロセスだったと思い、また完成品も個人的に気に入っているため、そのことを少し書いてみようと思います。 対象となる商品は、スポンジ面を張り替えることができる掃除道具。環境への対応も考え、また衛生的にもこうした部分的な使い捨てが増えてきている中でのブラシの理想的な工業デザインを考えてみる。 まずしたこと。すでに多くの商品が存在する中で、まず既存の商品を全て自ら使ってみた。多くの

          道具に徹する。機能を丸裸にする。

          あれから10年経った。

          10年前に当時やっていたエキサイトブログに掲載していたミラノサローネ、サテリテに出展したときの忘備録「サローネサテリテというところ」の転載です。もう10年ということもあってあまり情報は新しくないですが、何かしらの参考になればいいなと思います。 これらは僕には今でも眩い思い出です。 コロナが落ち着いたら、やっぱりイタリアへ行きたいな。 2012/4/14 出発今回のサローネサテリテに出展するに当たり制作した作品は、全部で70kgを超える量になりました。通訳兼アシスタントのエ

          2021年について振り返る。

          2022年になりました。 皆様明けましておめでとうございます。 昨年末にこのnoteを書くべきでしたが、納品と大掃除で時間と体力が足りず年始に振り返りとなりました。申し訳ないです。4500文字と自分にしては少し短めですので宜しければぜひご覧ください。 2021年のスタート2021年の年始は、2020年の影響を受け、まだ苦戦している状況だったように思います。ただ2020年の状況よりも回復傾向にあり、緊張感と希望に満ちたスタートだったように思います。すでに見えているイベントも

          2021年について振り返る。

          インスピレーション種屋という結論

          皆さん「beの肩書き」という本をご存じですか?勉強家の兼松佳宏さん(元Greenz.jp編集長)が執筆した本ですが、この本の中で自分の肩書きというものを探すことができる、いわばワークショップのような本です。 今なぜこういう話を改めて書こうと思ったかというと、最近デジタル庁が民間登用の人材募集の中で「プロダクトデザイナー募集」と書かれていて、多くの場合のプロダクトデザインとは物をデザインする職業のことなのですが、最近はデジタルサービス等が増えてきたこともあり、そちらもなぜかプ

          インスピレーション種屋という結論

          デザインスタジオを法人化したはなし その後

          KAIRI EGUCHI DESIGNというデザイン事務所を2008年から13年やってきましたが、このたび14年目になる10/1に晴れてKAIRI EGUCHI STUDIO Inc.として法人化しました。自分が作ったスタジオが成人したようなものだと思い、また誰かの参考にもなるかも知れないというのと、一つの大きな区切りともとらえていますのでこの13年間のことをダイジェストに書いてみました。 想像しながら読んでほしいので、10000字強あるにも関わらずあえて写真は使っていませ

          デザインスタジオを法人化したはなし その後

          JIDAの関西ブロック長に就任した話。

          JIDAって知っていますか? 日本インダストリアルデザイナー協会(Japan Industrial Designers Association)の略です。2021年に協会名が変わり日本インダストリアルデザイン協会になり、新しい船出を迎えました。 JIDAってそもそもなんなの?「インダストリアルデザインに関する普及啓発及び調査研究等を行うことにより、インダストリアルデザインの向上を図り、もって生活文化の向上及び産業の健全な発展に寄与する」ことを目的としているデザイン団体であり

          JIDAの関西ブロック長に就任した話。

          2020年をふりかえる。

          2020年は本当にすごい1年でした。簡単にですが振り返ってみようと思います。明け透けに書いていますし、5500文字以上あるので時間がある時にぜひ読んでみてください。 コロナの前から。数年続いていた顧問契約が2社同時に春ごろに終わることになり、比重が大きかったため、春ごろにはとても危険な状態になっていました。あまりネガティブなことは書くべきではありませんが、ただこうしたことがあった上で起こした行動により、自分たちは成長できたと思っているので書くべきだと思いました。 そんな折