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庵治石とひやかけ

※これは旅の記録です

高級石材 庵治石(あじいし)

あるプロジェクトの準備で、現場見学のために香川県高松市に行ってきました。高級石材の庵治石で様々なプロダクトを展開するAJI PROJECTを行われている株式会社蒼島(あおいしま)に、インテリアデザイナーの土井智喜さん(soell)と、ゼミも兼ねてDAEN(宇佐美菫、藤崎由渚)と行ってきました。

岩が切り立っている山に立つと、そこはまるで異世界で山から切り出された石が美しいプロダクト群になっているという事実を読み込むのに躊躇するほど壮大で、荘厳な世界でした。遮られるものが無く太陽が容赦なく照りつける中、自然の恵みを頂戴し人の役に立てるということをデザインを通して考える必要を改めて感じました。

AJI PROJECTショールーム(株式会社蒼島)

石材に限らず、どこのどんな産地もほとんどが抱えている課題が、後継者不足。職人が辞めていくこと。それに起因するのは、人口減少と文化や生活様式の変化。深澤直人さんは度々デザインのことを「大きな船の方向を少し変えるようなものだ」と形容されますが、産地にも少しずつそうした「小さくも強い変化」が生まれはじめて、代表の二宮さんからAJI PROJECTのお話を聞くにつれとても尊いプロジェクトだなと思いました。古い様式や、文化にこだわらずに自由に創造的に新しい価値を生み出していくことが、きっと大切にしてきたものを繋いでいく糧になるのだろうと思いました。同じところにとどまり、これまでと同じことを続けることで維持できるような安寧な世界ではなくなってしまったので、信念をもって自分が正しいと思う道に突き進むことが未来を切り開くのだと思います。

これから土井さんと一緒にあるものを一度作りますが、それ以降も僕は継続して何かを考えてみたいなと思いました。

やしまーる

その道中にお伺いしたのがやしまーるという施設。高松を見渡せる丘の上に建ち、ぐるりと一周回ることができる回廊型の建築物です。この建築物の屋根も庵治石で作られているようで、非常に重い屋根をここまで開放的な建築で支えているのもすごいなと思いました。建築は分野外なのであまり詳しくないですが、文脈、コミュニティ、一つだけ作るという部分で量産をメインとする僕がやっているプロダクトデザインとはずいぶん違うなぁと感じました。通常プロダクトではやらないような工法をやったり、いい刺激になりました。

ひやかけ

夜はゼミ生DAENのふたりがプロダクトデザインを志すきっかけになった先生、南政宏さん(元滋賀県立大学、現在は香川大学の先生)のお宅にお邪魔し4人で屋上でBBQをしました。南さんと知り合ったのは2009年。僕がLG MOBILE DESIGN COMPETITIONでゴールド賞(2席を受賞し、同日同じく六本木で表彰式があったのが東京ミッドタウンデザインアワード。そのグランプリを獲ったのが南さんで、LGの受賞のメンバーが南さんとつながっていて、六本木の「松ちゃん」という寿司屋で合同打ち上げをしたときにお会いしたのが初めてだったと思います。知り合ってから14年。僕がイベントをするたびに滋賀から学生を引き連れて来てくれ、DAENと知り合ったのは昨年のGWに僕らがやっていたCOMPOSITIONに来てくれたからなのですが、それも南先生の助言があったからはるばる滋賀から知らない人がやっている展示を見るために大阪まで来たとのことでした。

南さんはずっとFacebookで「デザイン教育の現場から」というデザインの先生をしているところからの視点を綴ったコラムを書かれていますが、最近noteに引っ越されてきたました。よかったらぜひ。


城南書店街

それ以前も秋田道夫さんのトークショーなどにも同席したり、時には秋田さんと三人で鼎談させていただいたりもして、とても縁があるのですがゆっくり話をするのは結構久しぶりで、デザインの話やデザイン教育の話など、夜が明けなければいいのにと思えるほどすぐに時間は経ってしまいました。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

僕はデザインを話をするのが結構好きです。というか議論がしたいと常々思っています。フリーランス同士飲みに行くと、仕事の話やお金の話や営業の話になりがち(気持ちはわかりますが)なのですがどっちかというとそういう話は苦手で、デザインそのものについての議論や社会とデザインの関係性の話だったりとか、教育の話とかそういうことに時間を使いたいと思っていますが、南さんはそうした話ができる少ない仲間でもあります。

やしまーるから眺める高松市内

またゆっくりあの屋上で話が尽きるまで語らいたいなと思いました。

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