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2023年を振り返る
苦しい時間は長く感じますが、反対に充実した時間はあっという間に過ぎ去っていきます。早いもので今年もあと2日。2023年を振り返ろうと思います。
1月
昨年9月10月あたりに募集していたアシスタントが来てくれるようになり、業務のキャパシティが増加し、またプロダクトデザインだけでなくブランディングのお仕事も増えてきたことから、仕事の幅が広がってきました。ポッドキャスト「デザインシテン」も100回目を迎え、継続の重要性をかみしめた1月。
2月
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普段は工業デザイナーですが、はじめて工芸のデザインを行いました。福井県越前市にあるタケフナイフビレッジの伝統工芸士(研ぎ師)の戸谷祐次さんと一緒に越前打刃物のニュースタンダードを目指すブランド「癶(HATSU)」のプロダクトデザインとブランディングを行いました。
工芸と工業も昨今は境目が曖昧になりつつあり、機械を使って人が作るマニュファクチャリングをベースとしながら、包丁の柄の在り方を再定義し、構成は和包丁でありながら、見た目と握り心地を少し変えた新しい柄のトライをしました。薄く軽く作る越前打刃物は、料理をする人の負担を減らし、また新しい「汀(みぎわ)」という名前の柄は洋包丁のように手にフィットする要素を持っている新しいデザインとなりました。
伝統工芸に工業的なアプローチをすることができたことは、自分のデザインの中でもさらに大きな可能性があるということを理解できたことでもあります。現在癶は新しいプロダクトを開発中です。近日中にお披露目となります。
3月
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中之島中央公会堂でプレゼンテーションをすることになりました。関西デザイン経営推進事業というプログラムにアートディレクター/デザイナーとしてある企業の支援をさせていただいており、その中間報告でした。
デザイナーと企業の関係性は以前から少しずつ変化してきたと思いますが、この数年は「デザイン経営」という旗印のもと、企業がデザイナーと組み、イノベーションやブランディングを促進させる動きが活発になってからは、デザイナーの仕事がとても増えたような印象があります。
デザイナーはデザインするだけではなく、経営のことを理解したり、また販売も行うこともデザイナーの役割の一つになってきたりと、マルチな職能が求められる時代になってきました。デザインの勉強=美術的なトレーニングという時代ではなくなっていっており(もちろんそれも必要ですが)、自分自身も最近読む本は経営の本やイノベーションの本、偉大な起業家のマインドを綴った本などを読むようになりました。変化することは進化することなんだなと思いました。
ポッドキャスト「デザインシテン」は相方の原田さんが大学院に行くことが決まり、半年間のお休みを設けることになりました。
4月
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実に4年ぶりにイタリアのミラノに行きました。目的はNEW NORMAL NEW STANDARDが初めてミラノサローネで展示を行うためでした。ミラノサローネに行くこと自体が6年ぶりでした。
円安原油高とウクライナ情勢の影響で航空券が高く、また同行者に学生などもいたため、できるだけ安い航空券を取ったところ移動時間が合計30時間となる大冒険でした。それでもやはりイタリアに着いたときには、昔憧れていたあの空気感が一気に体の中にまで流れてきて長旅の疲れもふっ飛びました。
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展示には現在はKOSEN FURNITUREから発売されている消毒液スタンド「SUBMARINE」シリーズを展示。町工場と一緒にこうした場に来るという夢もまた叶えるできごとでした。
5月
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先般のミラノサローネの報告会「Paccheri alla carbonara.」をPage Galleryで開催。5類移行後はじめてのトークイベントは会場が満席になり立ち見が出るほど盛況でした。
またミラノに続いてコロナ前は1番行っていた中国への出張を再開しました。目的はデザインを担当した製品の試作の確認でした。現在の日中関係はあまりいい状態ではなく、以前は必要のなかったビザが必要になりました。ビザ申請はかなり難易度が高く、クライアントのサポートがなければできなかったように思います。
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3年4ヵ月ぶりに行った中国は、マスクをしている人も多く、国によってとても制限が違うのだなと少し驚きました。試作確認をした製品ももうすぐ販売の予定です。
6月
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再生可能エネルギーの爆発的普及を目指すスタートアップ、パワーエックスが今治で開催された国際海事展バリシップ2023年にて発表した電器運搬船のコンセプトデザインワークを担当しました。
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摂津金属工業所と長らく開発してきたスチールファニチャーブランド「KOSEN FURNITURE」がインテリアライフスタイル東京にてお披露目になりました。町工場が持つ高い技術を、知財を確保しながら高い機能性と美しい外観を持って広めていくという取り組みでした。
町工場が商品をもって展示販売するという流れも前述のデザイン経営の流れから急速に広まってきているように思います。ぼくたちのスタジオにも同様のご相談ご依頼が増えてきました。
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人生で初めて建築に携わりました。兵庫県丹波市にある小学校の廃校利用の施設FOREST DOORの宿泊棟に併設したサウナのデザイン。2017年くらいからサウナにはまり、今では週1か2で行っているサウナ。まさか建築に携わることになるとは思いませんでした。
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間伐材を使ったサウナで、中に使う薪も山から間伐するというシステムなので、木が循環しているロゴマークが良いと考えました。また日本語で「よき」という言葉も使われることから、ヨキサウナという名前になりました。このロゴは商標申請済みです。
このころに行われた日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)の総会にて、ブロック長の任期を終え、次の方にバトンタッチしました。大変な2年間でしたが、大きな経験を積むことができました。
7月
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関西在住のデザイナーのグループ展「COMPOSITION」を東京と大阪で開催しました。当初は大阪のぼくたちのギャラリーだけで行う予定でしたが、縁が合って東京の荒川技研工業のショールーム兼ギャラリー「TIERS GALLERY」でも開催させていただけることになりました。テーマはFLOAT。モビールを自由に考える展示会でした。
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この活動がきっかけで2024年は色々大きく動きそうな予感がします。またCOMPOSITION 06はすでに動き出しており、9月に大阪と東京で開催予定です。次のテーマも非常に面白いものになりそうな感じがしていて、来年が待ち遠しい限りです。
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またKOSEN FURNITUREのポップアップイベントも開催していました。家具という商材はなかなかたくさん売れるものではないので、まだまだこれからのブランドではありますが、町工場と共に取り組んだ商品がこうして現物を見てもらう機会が作れたことも自分たちの進化を感じたできごとでした。
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この頃江口ゼミと称して、学生と一緒に郊外授業をするということをスタートしました。お相手は滋賀県立大学のデザインユニットDAEN(宇佐美菫、藤崎由渚)。この二人はCOMPOSITIONにも出展してもらっています。そんな二人と一緒に徳島県にある「うだつ上がる」という複合施設をやっている高橋利明さんのところに行きました。この頃すでに10月以降の構想がだいぶ進んでおり、その参考にもなればと思って行きましたが、非常に学びが多く、また高橋さんからDAENの二人にもいろいろ話をしてもらえてよかったと思います。
DAENについてのことはこちらの記事で紹介されています。
8月
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2018年以来ずっと活動してきたギャラリースペースPage Galleryを閉鎖しました。その目的は10月からお店をオープンすることにありました。今このnoteはお店番をしながら執筆しています。
独立10周年を記念して開催した「3650日のことばとかたち展」にはじまり、様々なイベントを開催してきました。ギャラリーとしての活動はそのまま継続となりますが、15年を迎えるにあたり新しいことにチャレンジしようという話になり、一旦閉鎖し改装をすることになりました。
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ゼミ旅行第二回。香川県に庵治石という石があるのですがその石を使ってプロダクトを作る話が進んでおり、AJI PROJECTのショールーム見学、また石の産地見学、また同行したDAENの先生でもある南政宏さんと一緒に高松をぐるっと見て回りました。
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また仕事の業績が非常に良かったのと、10月の新しい期に向けての懇親の意味もあって社員旅行に行きました。向かったのは滋賀県の琵琶湖の東側に。社員旅行自体はじめてでしたが、これを機に少し会社がまとまってきたように思います。仕事や環境から離れてフラットに話してみるのはお互いのことをしっかりと知ることができるいい時間だということがわかりました。
9月
堺筋本町にあるファブスペース兼コワーキングスペースの「The DECK」にてトークショーを開催するなどしました。COMPOSITIONの話をメインにしました。
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また昔から見ていたデザインメディア「AXIS」の取材を受け、記事が公開されました。
自分がやってきたこと、目指してきたことをカタチにしてもらいました。ありがたいことでした。今後も色んな活動を見てもらうことができたらいいなと思います。
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そのころ約2年にわたり行ってきたオーケー化成株式会社のヴィジュアルアイデンティティとブランディングの業務が発表となりました。新しいVIを纏った名刺や封筒、看板などは社員の方のモチベーションを上げ、また取引先へのイメージを大きく変えるものとなりました。
20名近くにわたる社員の方へのヒヤリングから分析を行い、VVMを策定しそれを体現するVIを作成しました。非常に大きなプロジェクトでした。
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この仕事以降、こうしたご依頼の打診がいくつか増えてきて、企業は改めて今デザイナーを求めていることを感じました。
10月
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独立したのが2018年の10/1。15年が経過し、多くの仕事に恵まれ、雇用を生み、挑戦を続けてきました。その中でPage Galleryとしてデザインと人をつなげることを目的として活動してきましたが、さらに進化させるために業態をギャラリー兼お店という業態に変化させ、WELD DESIGN STOREという名前になり活動を開始しました。
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10/1のレセプションパーティには80名を超える方にお越し頂き、イベントは大盛況でした。こうしたことを続けられることに感謝し、少しでも社会に貢献できるようにがんばりたいと思います。
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また法人化してから2年が経ち、個人事業時代も含めて過去最高売り上げ最高益となり、人数も2人から5人に増え、デザインスタジオ+セレクトショップという業態になり、大きな発展を感じた10月でした。15年前キッチンの片隅でスタートした時間軸の延長にこんなステージが残っていたとはその時は思いませんでした。
そしてオーケー化成株式会社と一緒に東京のデザインイベント「DESIGNART TOKYO」にて展示を行いました。「+STORIES」と称して再生プラスチックや植物由来のプラスチックから、プロダクトデザイナーがそれぞれのストーリーを作成し、展示をするという企画で秋山かおりさん、吉田真也さん、福定良佑さんにご参加いただき、大きな反響を得ました
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新たに色見本の新しい姿としての金型もデザインさせていただき、手でにぎりたくなるようなフォルムで見た目と触感両方をポジティブに感じ取り、商品転用を容易に想起できるデザインとなりました。
時を同じくしてオランダのアイントホーフェンで開催されていたDUTCH DESIGN WEEKに、NEW NORMAL NEW STANDARDが開催され、ぼくは現地に行くことができませんでしたが展示を行いました。弊社のアシスタントがオランダまで飛んでくれました。
11月
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お店を営業するということにまだまだなれないながらも営業日を少しずつ増やしてきました。
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心斎橋PARCOにあるSkiiMaというコワーキングスペースで、プロダクトデザイナーの福嶋賢二さんとトークショーを行い、来年行う新しい活動についてのお話をしました。
ポッドキャスト「デザインシテン」も活動再開しました。
12月
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デザインを担当した株式会社シケンが製造販売する歯ブラシ「ソラデー5」の開発秘話が、同社のオウンドメディアに掲載されました。
なかなか赤裸々に記事になり、同時に発出された「設計開発編」と合わせて読むと面白いと思います。文中には2020年に営業活動したことについても触れられています。
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佐藤計量器製作所が製造販売する、デジタル温湿度計のモデルチェンジに伴うデザイン「SK-110TRH」が発表されました。すでに販売がはじまっています。この仕事も2020年に営業活動をしていく中でつながったクライアントで、同社の製品と企業のVIを現在は担当しています。
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多くの人が職場やバイト先などで使ったことがある、グリーンとアイボリーのコンビネーションのカラーのはんこ。サンビー株式会社が長く製造販売しているクイックスタンパー(浸透印)の新しいデザインも発表されました
公共物やプロ用機器のデザインへの憧れと同じように、多くの人が当たり前に使うプロダクトをデザインすることへの憧れもあって、こうした仕事に携われて幸せでした。現在は1025型と1535型のみ新しいデザインとなっています。
まとめ
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この記事がすでに6300文字。そして執筆に2.5時間かかってしまっているのですが、1年間の活動としては過去最多のような気がします。実際に細かいことも入れるともっとたくさん書くことがありますが、あまりに長すぎるのでこのあたりにしようと思いますが、とても恵多き豊穣な1年だったと思います。
多くの新しい出会いと、関わってくれた全ての方に感謝して、明後日からはじまる2024年に向けてまた活動していきたいと思います。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
皆様にとって2024年もとても幸せな1年でありますように。
また来年お会いしましょう。
KAIRI EGUCHI STUDIO Inc.
KAIRI EGUCHI
ANZU FUJIHARA
YUMA ONO
SAAYA HARUE
CHELSEA HANA SUSILO
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