よくわからない。に散文で迫る

いつごろからそうなのかわかりません。

僕は感情が高ぶると文字を書きたくなります。日々の激務に追われていても書きたいことがどんどん高まっていって感情があふれ出るときに長い長い文章を一気に書いてしまいます。ひどい時は朝6:00に起きてそこからあれこれしながら2時間ちょっとで7000文字くらい書きます。

もちろん冷静に建設的に書くときもありますが、だいたいは前者で書いて、そのあと気持ちがすっきりすることが多いです。物語を書くことはできないですしあくまで自分の思うことをただつらつらと書くだけなのですが、モチベーションは感情です。

ということは、言葉にする前に圧倒的にそのことについて反芻しているということです。何か引っかかることや小さく感動するようなことがあったりすると、自分の体の中でエコーして反響、増幅されてそれが隅々まで到達したときに言葉になりnoteに書くことになり、小さなことだったらInstagramやXに綴ります。

デザイナーを分類する時によく理系か文系かの話になると思いますが、僕はおそらく文系のデザイナーだと思います。そしておそらく僕は他人の様々なことに対してとても敏感に感じ取ってしまうタイプの人間で、相手があまり気にしていないふとしたことも気になってしまい、それが内側で増幅されてしまい最後に文字になります。少し間が空くと相手の見え方が変わったりもします。自分でもとても難しい生き物だと思います。よくある心理的な何かでカテゴライズされてしまうのかも知れませんが、それも疎いので「よくわからない」ということが唯一正しいと思います。

また、今こうして定義のない「よくわからないこと」を書いていることにより、僕は整理が進んで頭が少しずつすっきりしていきます。不思議なものですが、脳のキャッシュクリアの一つなのかも知れません。

すこし話は変わりますが、昨今の一般的なデザインとは色や形のことを言うことがほとんどだと思います。今はそこから少しずつデザインの定義が拡がってきていますが、デザインとは何かを改めて問われたときに僕は「よくわからない」と答えます。その理由は、デザインには絶対的な軸が無く、常に変化し宇宙のように日々その領域が拡大されているように感じるからです。言葉は、発してしまえば当然そこに責任が生じるものだと思うのですが、「よくわからない」と伝えることで、その領域の広さや拡張の速度に対して、全体が掴めない＝わからないことという事実だけを残して、残りは相手に感じ取ってほしいなと思ったりもします。そしてデザインという世界は、おそらく誰にも正確にわからないからおもしろいのだと思います。人によってその解は違い、そして時にはそれで衝突もあれば深淵で友人に出会うような気持ちになったりもします。

先日あるデザイン系メディアの取材でも同じテーマの質問がありました。僕は「よくわからない」と言いつつも、「状況が好転する何か」と答えました。デザインとは「よくわからないけど、状況が好転する何か」なのだと思います。これが現在地で僕がそこに立てた旗のようなものです。一方アートの定義もよくわからないですが、デザインと対比で考えると「見えない課題を表出させる何か」なのかなと思います。

デザインは問題解決である。と言われます。アートは問題提起だとも言われます。そこをベースにしながら、問題解決だけではなく少し物事が前に進むこと。が大切な気がします。たとえばある日、フリーランスデザイナーにデザインの依頼があった時。必ずしなければならないことがあります。デザイナーに重要なスキルでもあるヒヤリングです。「話を聞く力」ですね。ヒヤリングをすると、その課題がどんな階層のどんな方向性の課題なのかがわかります。もしかしたら物を作らなくても解決できる、インナーブランディングやもっと手前のことだったりもします。僕たちのスタジオは話を聞くことに結構な時間を使います。そしてその上でリサーチ量も多いように思います。それらは全て「状況を好転させたい」というデザイン以前の願いの土台からくるものだと思います。ヒヤリングもデザインだと僕は考えます。

話しが逸れてしまいましたが、「よくわからない。」をテーマにして、こうして散文で心の中のことをつらつらと書き綴ると思考がどんどん奥深くなり、バラバラになったピースが少しずつまとまり始めることも多々あります。ただ全ての集めたピースを埋めても、そもそも存在していないピースもあったりして、完全に完成することはきっとないように思います。永遠に未完だから思考はきっと面白いのだと思います。

デザインに模範的な答えはきっとない。ただそこに思想や道徳や配慮が存在し、必ずしも色や形が必要なわけではない。未完成でも完璧じゃなくても、それがその瞬間以降の未来において、状況が好転する何かになっていれば、デザインは成功なんじゃないかと僕は思います。

頭と気持ちがすっきりしてきたので、また溜まってきたら続きを聞いてください。ここまでお読みくださりありがとうございました。